七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 143話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 143話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」143話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 143話

 明日はテイラー学園は休みであるが、いよいよ私の社交界デビューである。だからいつもより早めに風呂に入り、侍女に髪を整えてもらうと、今日の添い寝担当のエメルの元へ行くために部屋を出た。

「あ、ディアルド! ユフィーナさま!」

 エメルの部屋へ行く途中で、これから出かけようとしているディアルドと婚約者のユフィーナに会う。

「ミリディアナさま!」
「あ、わたくし、こんな格好でごめんなさい」

 ユフィーナの前だというのに、寝間着の白いワンピースだった。

「お気になさらず。わたくしこそ、遅くまで滞在してしまい申し訳ありません」
「いいのですよ、ユフィーナさまはディアルドの婚約者ですもの。これからお出かけですか?」
「いや、ユフィーナを家まで送ってくるよ。ミリィは明日の準備はできたのかな?」
「ミリィは終わったよ。侍女たちの方が大変。明日の準備の最終チェックしてたもの。それより、ディアルド、今度連れて行ってほしいレストランがあるの! 良かったらユフィーナさまと三人で一緒に行きませんか?」
「まあ、嬉しい! もちろん行きましょう」
「そうだね」

 ディアルドとユフィーナの雰囲気がほわっとして好きだな、と思っていると、ディアルドの後ろの廊下から歩いてくる、今日ここにいないはずの顔を見つける。

「カイルお兄さま!」
「ミリィ」

 足早にカイルのところまで行き抱きついた。学園と社交界デビューの準備のため、皇太子宮に行く時間がなく、最近カイルに会えていなかったのである。

「会えてうれしい! 今日来る日だったの?」
「急きょ時間ができてね。ミリィの顔も見たかったから」

 笑いあっていると、後ろからディアルドが歩いてきた。
 ふとユフィーナを見ると、困惑と驚愕が混ざった顔をしていた。そういえば、ユフィーナはうちにカイルがお忍びでやってくることを知らなかったのかもしれない。

「ディアルド、そちらは」
「カイルさま、私の婚約者のユフィーナです」
「皇太子殿下、お初にお目もじ仕ります。ユフィーナ・ル・カロディーと申します。お会いできて光栄です」
「ああ、君がカロディー伯爵令嬢か。ディアルドに聞いている。急に私が現れて驚かせただろう。失礼した。ディアルド、あとはよろしく頼む」
「はい」
「ミリィ、おいで」
「うん。ではユフィーナさま、またお会いしましょう」
「は、はい」

 うーん、ユフィーナ戸惑っているなあ。ディアルドがうまく説明してくれるだろう。
 カイルと二人でエメルの部屋に入室した。

「カイルさま? ああ、ミリィに会いに来たのですね」
「そうだ。俺も風呂にいいか?」
「使用人に用意させます」

 風呂が用意される間、カイルは私を急に横抱きにすると、そのままソファーに座った。

「今日は泊まっていけるのね」
「ミリィの寝顔が見たくて。最近俺も夜まで忙しかったものだから」
「エメルに聞いているわ。ちゃんと寝てる? 疲れた顔をしてる」
「ミリィの顔を見たから疲れは飛んだよ」

 カイルは頬にキスをする。

「とうとうミリィのデビューも明日だね。緊張はしていない?」
「今は緊張してないけれど、明日はしそうな気がするの。でもお兄さまみんないてくれるって言うし、大丈夫だと思う」

 秋にある宮廷舞踏会がある時期はダルディエ領にいることが多いので、兄たちもほとんど出席したことがないそうだ。ただ今回は私が参加するので、兄たちも両親もみんな帝都に揃っていた。

「俺が明日はミリィと一緒にいられる時間が取れない可能性が高いんだ。本当は俺も傍にいたいんだけれど」
「いいのよ、カイルお兄さまにはお仕事があるでしょう。でも謁見の場にはいるのよね? 顔は見れるわよね」
「そうだね。そこでミリィの顔を見れるのが楽しみだ」

 風呂の準備ができたというので、カイルは風呂へ行く。それからエメルが手招きするので、私はエメルの膝の上に座った。

「エメルも明日は一緒にいれないのよね」
「ごめんね」
「いいの。ミリィのドレス姿は見てくれるのでしょう?」
「もちろんですよ。私はカイルさまの側にいるので、カイルさまと一緒に見ますね。明日の同伴はアルト兄上でしたよね。その後のダンスの順番はどうなっていますか?」
「アルトの後、シオン、ジュード、バルトだと聞いているわ。でも踊った後、次のお兄さまのそばで交代できるのか心配なの」
「そこは兄上たちに任せれば大丈夫ですよ」
「シオンがね、二回だけど練習に付き合ってくれたの。シオンの踊ったところ見たことなかったから実はちょっと心配だったのだけど、シオンすごく上手だった」
「シオン兄上は、見ただけで他人の剣筋をマネできる人ですからね。同じ見方で誰かのダンスを見て覚えたのかもしれません」
「ええ!? そうなの? シオンすごい」

 それからもエメルと話していると、カイルが風呂から上がってきた。

「ミリィ」
「うん?」
「髪の毛ふいてほしいな」
「いいよ」

 ソファーに座ったカイルの後ろにまわると、タオルで髪をふく。いつも綺麗に整えられている黒髪が洗ったことで崩れると、カイルは少し幼い雰囲気になる。ある程度タオルで水気をすいとると、カイルが手招きして膝に座れと仕草で示す。言われるがまま膝に横に座ると私を抱きしめて頭に頬をのせてきた。

「ああ、落ち着くな。毎日ミリィを抱きしめて寝たいよ」
「いいわよ? いつもミリィに会いに来てくれるなら」

 カイルは私の頭にのせていた頬を離すと、今度は顔を覗き込んできた。

「……ミリィ、いいよなんて、兄さまたち以外に言ってはいけないよ?」
「言うわけないわ」
「……本当かな」

 なぜ疑う。そんなほいほい他人にこんなこと言うわけないだろう。

「ミリィ、学園の生活はどう?」
「今のところ順調よ」
「変な奴はいない? 例えばミリィに近づこうとする男とか、ミリィを口説こうとする男とか」

 変な奴とは男限定なのか。女も変な奴に加えていいなら、一番面倒なのが南公の娘なのだが。とはいえ、男ではないので、いったん外すとして。

「近づこうとする男性はいるわね。やっぱりダルディエ公爵家の名前が魅力なのでしょう」

 口説こうとしているように見える男性もいるが、そんな風に見えるだけで、やはり目的はダルディエ公爵家の方だと思う。

「よし、その男の名前を教えてくれ。すぐに処分する」
「なぜ!? 仕方ないでしょう、みんなダルディエ家に近づきたいのよ。それにそういった人たちは無視してるもの、大丈夫」
「無視してもしつこい男とかいるんじゃないのか?」
「そういった人はルーカスが間に入ってくれたりするわ。それにアナンもいるし、意外とカナンがあしらうの上手いの。だから大丈夫よ」
「ルーカス……ラウ家の息子か……」

 カイルは一瞬目を細めた。何でだろう。

「分かった、それはいったん置いておいて。ミリィは今好きな人はいないのかな?」
「うーん、それがねぇ。最近街に行く時間もなくて、そういう人を物しょ……見つけれていないの」
「今、物色って言おうとした!?」
「気のせいよ」

 いかん、つい本音が。好みの人を見つける遊びは楽しいのである。

「では、学園にはいないのかな? 好きな人は」
「うーん、いないかな。みんな若くて」

 それにダルディエ公爵家が目当てなのか勘ぐってしまい、恋愛対象としては見れていないのだ。

「若いって……みんな同じくらいの年じゃないか。ミリィは年上が好きなの?」
「うん。大人の人が好き。パパくらい年上でもいいな!」
「は!? なんで!?」
「何でって……包容力とか? それに人生経験豊富そうでしょう。ミリィがわがまま言っても叶えてくれそうだもの」
「ミリィのわがままなら、俺だっていくらでも叶えてあげるよ!」
「ありがとう?」
「わがまま言ってみて」
「ええ? 急に言われても」

 普段からカイルだけでなく兄たちには、わがままばかり言って甘えている気がする。

「いいから、言ってみて。叶えたいんだ」
「うーん……あ! じゃあ、ミリィをいっぱい抱きしめて、いっぱいキスして!」

 両手を広げて見せると、カイルは手で目を覆った。

「……」
「カイルお兄さま?」

 カイルの反応が無くなり、エメルを見る。するとエメルはにこっと笑うだけだった。またそれか、私には分からないんだぞ。

「……ミリィが可愛くて辛い」
「ええ!? どうして」

 目から手をずらしたカイルの頬が少し赤い気がした。

「たくさん抱きしめるよ。いっぱいキスする」
「うん! してして!」

 カイルは私を抱きしめた後、おでこにキスする。

「カイルさま、ほどほどにしておいてくださいね。ミリィこの前変なこと言ってましたし」
「変なこと?」
「ミリィは兄たちから毎日キスされているでしょう。ミリィ曰く、ミリィの顔は兄たち同士の間接キスだそうです」
「……」
「え? カイルお兄さま嫌? エメルと間接的にキスしているのと……」
「ミリィ」
「ミリィは男の人同士でキスしても、応援す……」
「ミリィ」

 カイルの口角が上がるだけの笑顔が怖い。そんなに嫌だったのか、間接キス。怒られたくないので、誤魔化すように笑って告げた。

「わかった、今日はもうカイルお兄さまからのキスは諦めるね。その代わりミリィがキスしてあげる」
「え」

 カイルの頬にキスをすると、一瞬でカイルの顔が赤くなり、すぐに抱きしめられた。顔が見えないんですけれど。照れているようだ。いつも思うが、カイルはキスするよりされるほうが恥ずかしいようである。

 カイルの顔が見えないので、仕方なく横を見るとエメルがまた微笑む。

「エメルにも、あとでキスしてあげるね」
「ええ、絶対にしてくださいね」

 少しだけカイルの抱きしめる腕に力が入った気がした。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。