七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 140話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 140話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」140話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 140話

 私は十七才になった。テイラー学園へ通う数日前。

「今日はアルトとバルトと三人で寝れるなんて嬉しいな。久しぶりよね」

 ダルディエ邸の双子の部屋で、バルトの膝に乗って話をしていた。バルトは片手にワインを持って美味しそうに飲んでいる。
 双子と三人の添い寝は本当に久しぶりだった。どちらか片方との添い寝は時々していたが、アルトとバルトは忙しくて、最近は揃っているところを見られないのだ。

「ミリィが頑張ってテイラー学園に通うというから、心配で見に来たんだよ。知らせたいこともあるしね」
「知らせたいこと?」

 その時、風呂から上がったアルトが髪を拭きながら上がってきた。バスローブ姿は相変わらずの色気で、使用人が顔を赤くしている。

「飲むでしょ」
「ありがと」

 バルトがアルトにワインを注いであげていた。本当に仲のいい双子である。喧嘩しているところなど見たことがない。バルトの隣に座ったアルトは、背中から私の脇下に手を入れて私を引っ張った。

「わあ!」

 バルトとアルト、二人の膝の上に仰向けに寝る形になってしまった。
 アルトは私の顔の横を撫でながらワインを飲んでいる。もうこのままでいいかと口を開いた。

「ねえねえ、二人の彼女たちにブラジャー勧めてくれた?」
「勧めた勧めた。胸が崩れることを防げるって喜んでたよ」
「そうでしょ!? やっぱりねぇブラジャーいいよねぇ。コルセットはつらいもん」
「いや、コルセットも外せないとは言っているけどね。一緒に使ってるよ」
「ええー、やっぱりそうなんだ。コルセットのどこがいいんだろう」
「腰のラインじゃない? みんな十分綺麗なんだけどね。あと肉がどうとか」
「ああ、お腹の肉? 確かにそれはコルセットで抑えられるのかも」
「俺は彼女のお腹のお肉も好きだけどね。柔らかくて触り心地がさ。ミリィはもうちょっとお肉増やしたほうがいいかな。軽すぎるから」
「去年食事を吐いちゃった時期があるでしょう? その時に痩せちゃって、なかなか増えないの」
「なるほどね。無理はしなくていいけれど、肉系の食事を増やした方がいいかな。ミリィは運動もしているでしょう」
「運動というか……、この前侍女がいる時に柔軟体操していたら、侍女に恐怖の悲鳴をあげられたの」
「恐怖の悲鳴?」

 本当いうと、柔軟体操ではないのだけれどね。たぶん前世でいうならヨガの一種だろう。

「ミリィは体が柔らかいでしょう。首に両足を引っかけていたら、それが人間業ではないものに映ったみたい」
「あはは! ミリィ、そんなことしているの」
「カナンは顔色全然変えないのになぁ。他の侍女がいるときは、あれはやらないほうがいいかも。二人には今度やって見せてあげるね!」

 バルトとアルトがくすくす笑っている。

「うちのミリィはいつまでも可愛いな。誰かにあげたくない」
「分かる。学園に通い出すのが心配だな。ミリィ、そういう報告は兄さまたちだけにしておくんだよ」
「うん」
「いい子だね。それで、さっき知らせたいことがあると言ったでしょう。その話なんだけど。テイラー学園に剣技の講義があるのは覚えているよね。騎士を育成する上で近衛騎士から指南役を出していてね、俺たちも時々学園に行くことが決まったんだ」
「本当!? 学園でも会えるの?」
「そうだよ。指南役は交代だから頻繁にではないけどね」
「それでも嬉しい!」

 指南役という役割があるのなら、堂々と学園で身内に会っても変ではないし恥ずかしくもない。いまだ不安の残る通学だけれど、双子に会えると聞いただけで前向きになれる。

「それとね、懸念点があってね。どうにもテイラー学園で変なことが起きているみたいなんだ」
「……変なこと?」
「天恵じゃないのかと思うのだけど。笑顔が奪われている人がいるんだってさ」
「笑顔を奪う天恵?」
「まだ調査中だからね、他言無用なんだ。みんながみんな奪われるわけじゃない。どういう理由かも分かっていない。ただミリィは笑顔が可愛いでしょう? 奪われるのは困るんだ。だから注意して欲しくて」

 ええ、何それ怖い。笑顔が奪われて笑えなくなるってことだろうか。

「注意ってどうすればいいの?」
「ちょうどミリィは無表情の練習をしていたでしょう。あれが使えそうだよ。今のところ分かっているのは、よく笑う子が狙われているみたいなんだ。だから笑っているところを見られて、この笑顔が欲しいと思われて、取られる。たぶん、そんな感じじゃないかと思うんだ」
「笑ったらだめなのね? ずっと無表情でいればいいの?」
「そうだよ。練習したおかげで、無表情には慣れたでしょう」
「わかった! 頑張る!」
「そうそう、笑顔を奪われた子の名前、一人聞き出したんだ。何だったかな? バルト」
「確か次の六年生で、ウェルント伯爵の息子だったと思う」
「そうだった。とにかくその子みたいにならないためにも、無表情だよ。いいね?」
「うん。アナンとカナンにも教えていい?」
「いいよ。三人で無表情。頑張って」

 何やらミッションのようだが、誰がその笑顔を奪う天恵なのか分からないというので、気を付けるしかない。気合を入れなおす。

 そして、ついにテイラー学園へ行く日がやってきた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。