七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 136話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 136話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」136話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 136話

「皇帝陛下、皇妃陛下、お久しぶりでございます」
「ミリディアナ、よくきましたね。さ、堅苦しいことはこれで終わりよ。今日は何を持ってきてくれたのかしら」

 皇妃宮を訪ねた私とジュードとママは、お茶会という名の気楽なおしゃべりを楽しむ。いつからか、皇帝がここにいることにも驚かなくなっていた。なぜかいつもいるのだ。社交界シーズンで、皇帝夫妻はすごく忙しいはずだが。

「前にティアママにお話したトランプのこと覚えていらっしゃる? 今日はトランプで遊べるゲームをお教えしますわ」

 ジュードを一緒に連れてきたのは、一緒にゲームをしているのを見てもらうためである。

「ええ、覚えていますよ。楽しみだわ。前に教えてもらったオセロは今でもこの人とするのよ。なかなかいい勝負なの」
「そうそう。私と六対四で、私の方が勝利数が多い」
「あら? 六のほうがわたくしだと思うのだけれど」

 ふふふふふ。
 うん、一瞬ぴりっとした空気。相変わらずな夫妻である。これでいちゃついているらしいので、わかりずらいが。私は慣れたので、もうビビったりしません。

「トランプは本当は手数が分かってしまうので三人以上で勝負するほうがいいのですが、二人でもできます。今日はババ抜きと七並べをお教えしますね」

 七並べは、ダルディエ家の兄妹でいまブームなのである。
 ジュードと二人でやってみせて、それから皇帝夫妻とママと五人で勝負し、なかなか盛り上がった。勝負後はおしゃべりを楽しみ、それからダルディエ邸へ帰宅した。

 この日の夜はジュードもママも今日の夜会の準備で忙しい。私は好きな本を呼んでいようと本を開くが、あまり頭に入ってこない。結局本を閉じ、ナナの大きな体に体を預けた。

 最近気がそぞろである。理由は分かっていた。
 社交界シーズンが終わり、夏休みが明ければ、私はテイラー学園へ通うことになる。分かっていたことなのだが。

(ウィタノスがいるかもしれない)

 テイラー学園にウィタノスがいる、それは今までで一番確率が高いと思っている。その可能性も考えて、兄たちが間に合うようにアナンを護衛に育成したのだ。私だって一撃必殺技を覚えたりした。やれることはやっている。それなのに。

 やはり不安なのだ。だからウィタノスには会いたくない。
 はあとため息をつく。ナナが心配そうににゃあと鳴いた。

 そして社交界シーズンは終わり、ダルディエ領へ戻った。
 いつもどおりの日々を過ごすのだが、不安だけが大きくなっていく。

 ――ダンッ!

「集中しろ。ボーとしていると危ないぞ」

 はっとすると、シオンがいつのまにか横に立っていた。
 現在ボーガンの練習中である。以前教えてくれるという約束で最近始めたのだ。私のように力が無くても簡単に打てる。そして意外と私に合っているのか、狙ったところに当たる。そうすると楽しいと思えるものである。

「ごめんなさい。集中するね」
「……何か心配ごとか?」

 シオンは私の顔の横に手を当てた。

「ううん、何でもないの」
「ウィタノスのことか」

 う。何でもないと言っているのに。シオンはするどい。

「ちょっと心配だなと思っただけ。もう大丈夫」
「俺も行こうか」
「ん? どこに?」
「テイラー学園」
「ええ!? シオンが行ったらおかしいでしょう」
「関係ない。学園は黙らせる」

 いやいやいや。私が兄同伴とか恥ずかしいわ。

「ありがとう。その気持ちだけで十分。シオンはミリィが帰ってきた時に甘やかしてくれると嬉しいな」
「わかった。でも気が変わったなら言うんだぞ」

 シオンは私の頭を撫でると、去っていく。
 心配かけて申し訳ない。よし、と気合をいれて、ボーガンを打つ練習に励んだ。

 そして夏休みの時期。すでに学生ではないものの、エメルとカイルがやってきた。仕事を持ってきているらしいが、以前のように午前は勉強ならぬ仕事、午後は休みと決めているらしい。私ともめいいっぱい遊んだ。

 そして、今年は夏休みの終わりが来る前に帝都へ移動する。私がテイラー学園へ入学するからであり、色々と準備が必要だからである。パパやママ、そしてシオンも一緒に来てくれていた。

 テイラー学園は制服がある。そんなにいらないはずなのに、十着も家に届いて驚いた。女子の制服はワンピースタイプで、胸の下に区切りがあって、そこから膝下までの長いスカートが特徴である。制服自体は可愛いのだけれど、兄たちが学生の頃に見た女子たちは個性を出すためにアレンジしていたのを思い出す。男子の制服は上品なブレザーだけれど、こちらもタイを自由に変更できるのだが、兄たちが学生の頃に見た男子たちはスカーフタイプ、紐タイプ、蝶ネクタイ、ネクタイなど、やはり様々だった。シオンのように何もしていない人もいたけれど。

「可愛いわ、ミリディアナちゃん」

 入学前に一度制服を着用してみた。髪はさすがにカツラはせず神髪である。カナンがハーフアップにした部分の髪を編み込んで薔薇を作っていた。カナンは凝り性である。

 くるくるっと回ってパパとママにお披露目である。褒めてもらえるのはうれしい。けれど。
 ああ、いよいよ学園に通うのか。気持ちはうつうつと落ちていく。

 私は十六才になった。
 そしてテイラー学園へ入学する日がやってきた。

 制服を着て、髪をセットして、入学式に遅れないよう準備万端である。同じく制服を着たアナンとカナンが後ろに立っていた。

 馬車が準備できたというので、屋敷を出ようと出入口へ向かう。

「うっ」

 手で口を押えた。気持ち悪い。むかむかして涙まで出てくる。

「お嬢様! これに吐いてください!」

 カナンがどこかから持ってきた壺に吐いてしまう。吐いたのに気持ち悪い。

 結局、その日は私は入学式へ行かなかった。
 私が行かないと決まると、アナンとカナンも行かないと言い出した。
 ああ、私のせいで、全てが駄目になっていく。心に重いものがずしりと乗っていくのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。