七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 135話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 135話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」135話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 135話

 帝都からダルディエ領へ戻ってきた。家庭教師、体力づくり、ダンスレッスン、騎士団通いなど、毎日の予定をこなす。

 恐竜が生まれて半年以上が立ち、少し大きくなっていた。私がいない間も騎士団で三尾が親代わりしてくれているようで、三尾ととにかく仲が良い。私が会いに行くと、恐竜の口が大きく開き、舐め回されるのが大変である。シオンや他の騎士が恐竜に乗っても、恐竜は嫌がることなく走る。力が強いので、将来的には一角のように大人が二人は乗れそうだとシオンが言っていた。ただ私は恐竜に乗ることは禁止されている。私は絶対に振り落とされると自信を持ってシオンが言うのだ。まあその通りだろうから、むくれたりはしないが。

 夏休みになると、エメルとカイルがダルディエ領へ帰ってきた。今年は二人共卒業だったのである。テイラー学園では卒業式代わりにダンスパーティーがあるという。エメルによると、カイルのダンスの相手をしたい令嬢たちが影で戦っていたらしいが、結局相手はカイルの父方のいとこが努めたらしい。その戦いを影の影から見てみたかった。ところでエメルの相手は誰だったのかと聞くと、笑って「ミリィの知らない人ですよ」と誤魔化された。知らない人でもいいから知りたいというのに。エメルは秘密主義である。

 夏休みが明けるとエメルとカイルは帰っていった。今までも公務をこなしていたが、今後はさらにに皇太子としての仕事が増えるであろう。

 そして私は十五才になった。
 今年も双子は夏休みではなく秋休みに長期の休みとなった。休みの間はずっといてくれるのかと思いきや、何やら彼女をダルディエの街に帝都から連れて泊まらせているらしく、二人してどこかに旅行に行ってしまった。二人に遊んでもらうつもりだったので、寂しくて少しだけ不貞腐れた。

 ジュードは貴族向けにブラジャーを販売開始した。コルセットが支流のため、すぐには流行するとは思っていない。けれど、ママやティアママに使ってもらっているし、口コミで貴族夫人に広がっているらしい。おすすめはコルセット無しで使ってほしいのだが、コルセットとセットで使うこともできる。ブラジャーが流行してくれることを期待する。

 コルセットは腰を細く見せるためには重要である。貴族から平民にいたるまで女性は着用している。けれど私には無理だった。ただでさえ食が細いのに、コルセットをすると胃が圧迫されて気持ち悪くなって食べたものを吐いてしまったことがある。だからコルセットは普段からしていない。パンツとブラジャーはしているし、今のところコルセットをしないで問題は発生していない。

 そして冬があっという間に過ぎ、春。社交界シーズンにて帝都入りした。
 今年の帝都入りは少し緊張していた。というのも、テイラー学園に入学するための試験を受けなければならないからである。家庭教師にて勉強はしていたし、一緒に試験を受けるアナンとカナンがいる。私よりも、私のために絶対に合格しなければならないアナンとカナンのほうが緊張しているに違いない。私を守るために必ず入学しなければならないと、ディアルドから念押しされているようであった。

 テイラー学園の入学試験は、入学する前の半年の間であれば、いつ受けてもいい。だから集団で受けるということはなく、私たちの三人で試験を受けた。終わってみれば、そんなに難しかったという印象はなかった。アナンとカナンも本人の感触的に受かっているだろうと言っていたが、無事三人とも合格だった。

 ちなみに、テイラー学園の入学試験は、一年目から五年目までなら、中途入学もできる。学年が上がるごとに入学試験が難しくなるため、やはり早めに受けて入学するほうが楽ではあるが。

 晴れて夏休み明けにはテイラー学園へ入学することが決まり、合格したあとは楽しく帝都生活を過ごしている。テイラー学園へ通う三年間は、夏と冬の長期休みしかダルディエ領へは帰らない生活となる。

 今日は双子に会いに行こうと皇宮の近衛騎士団へ向かっていた。ドレスに金髪のカツラ、そして眼鏡の変装付きである。侍女のカナンと正式に護衛となったアナンを連れている。

 相変わらず近衛兵団の訓練場の一般公開には、令嬢や貴婦人がたくさん見に来ている。私のように騎士団で過ごしてきたような人の方が少ないため、剣を振る騎士はとにかくかっこよく映るに違いない。私はいつものように家族用の窓口から入る。窓口は顔パスで通り過ぎ、双子を呼んでもらった。訓練場からバルトと騎士が近づいてくる。

「いらっしゃい、ミリィ」

 会いに行くと、毎回私を抱き上げる双子である。私ももう大きいので重いと思うのだが。

「今日アルトはいないの?」
「別の仕事に出てるんだ」
「ふーん、妹さん? あまり似てないね」

 バルトと一緒に来た騎士が笑いかける。

「ごきげんよう。似てませんか?」
「ミリィが眼鏡しているからでしょ」
「あ、そうか。……どうですか?」

 騎士は目を大きく開けた。

「似てなくはないけど。可愛いな、バルトが可愛がるわけだわ」
「でしょ。あげないからね」
「俺、年上専門だもん」

 バルトよりガタイのいい騎士は、男前だが笑うと少し幼く見える。ただ私の趣味ではない。
 彼はちょうど休憩の時間らしく、バルトと一緒に話をし、私たちは訓練場を出た。もちろん眼鏡は装着しなおしている。帰りは馬車に乗らず、カナンとアナンを連れ、今、春の花が満開だという宮殿まで歩いていた。風も気持ちいいし、散歩日和である。

「お嬢」

 アナンが私を呼んだ。いつの間にかネロの真似して、私をこう呼ぶようになった。

「何?」
「誰か付いてきています」
「……え? うそ、誰?」

 後ろを振り返らないように注意しながら言った。

「訓練場の一般公開の方にいた令嬢が三人」
「えーもう厄介だなあ」

 双子に気がある令嬢だろうか。花を見たかったのだが、進路変更。アナンの指示でできるだけ令嬢三人から距離を取る。

「まだ付いてきている?」
「来てますね」
「もう。しつこいんだから」

 もうすでに皇宮のどこを歩いているのか分からない。歩いて眼鏡がずれるので、結局取った。関門などは通ってないので、皇太子宮の区域にはいないと思うが、令嬢三人を回避したとしてもどうやって帰ればいいのだろう。しかしまずは令嬢三人である。途中でアナンの指示で物陰に隠れて、しばらく経ち、厄介は去ったと判断。物陰から出てみるものの。

「ここどこ」
「どこでしょう?」
「どこですかね?」

 私以上にアナンもカナンも皇宮に詳しくなく、三人共すっかり迷子だった。足も痛いし、馬車を拾って帰りたい。まずは出口を探そうと人に話しかけようとして、見知った顔を見つけた。

「ソロソ!」

 誰かと話していたソロソがこちらを向いた。驚きの表情に突進して抱き着いた。

「よかった! ソロソがいて!」
「どうしたんですか? いきなり積極的ですね!? 俺怒られるんで、離れて欲しいんですけど」
「あ、ごめんなさい」
「いえ、謝らなくていいのですけれど。知っていると思いますが、うちにあなたのことになると悪魔のようになる人が二人」
「……誰?」
「うそですよね!?」
「二人って……お兄さまたち?」
「他に誰がいると?」

 悪魔は言い過ぎでは? エメルもカイルもちょっとシスコンなだけです。

「それで、なぜこんなところに?」
「それが迷子になっちゃって」
「ええ? 馬車はどうしたのです?」
「皇宮の入り口にあるの。お花の宮殿に行きたかったのだけど」
「お花? ……ああ、今花盛りの。場所が全然違いますね。うーん、もう少し待っていただければ俺が案内してもいいんですが」
「もう今日はお花はいいの。疲れちゃった。帰りたい」
「では入口に行きたいということでいいですか? それなら彼が案内してくれますよ」

 ソロソは近くに立っていた男を示した。ソロソしか見えていなかった。

「彼は入口を通った先に用事がありますから。一緒に連れて行って差し上げてください」
「承知しました」

 ソロソから紹介されたのは、優しそうな眼鏡をした男性だった。

「よろしくお願い致します」
「お任せください」

 丁寧に頭を下げると下げ返された。

「いいですか、ミリィ。まっすぐ帰ってくださいね。悪魔になりますからね」
「ミリィにはならないけど」
「俺になるんですよ!」

 そんなに怖いのか。

 案内してくれた彼は、部署は分からないが文官だという。

「お手数をおかけして、申し訳ありません」
「いいのですよ、通り道ですから。皇宮は複雑なところもありますからね、迷子になるのも無理もありません。お気になさらず」

 優しいなあ。空気がほんわかしている。
 それから、当たり障りのない会話を続けていると、いつの間にか皇宮の入口まで来ていた。

「ありがとうございました」
「どういたしまして。お気をつけてお帰り下さい」

 うーん、最後まで丁寧である。手を振って別れる。
 私の後ろにいたカナンとアナンに振り向いた。

「すごく優しい人だったね」
「そうですね」
「ミリィの好みじゃないはずだけど、かっこよく見えてきた」
「……」
「……」

 足は痛いけれど、最後に嬉しいことがあった。最後良ければすべてよしである。上機嫌で帰路についた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。