七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 132話 ディアルド視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 132話 ディアルド視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」132話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 132話 ディアルド視点

「ディアルドとデートしたいの」

 このように妹に可愛らしく言われて、断れる兄などいるのだろうか。

 社交界シーズンのため帝都へやってきて数日。帝都でしかできないことも多いので、こちらに到着してからというもの、スケジュールが詰まっていた。俺の執務室では、執事がここ数日の予定を読み上げている。しまった、妹とデートが出来るような空いている日がない。

「ディアルドと少し街中を歩けるだけでもいいの。お仕事の間はどこかお店で時間を潰して待ってるから。ミリィとの時間も作って?」

 もちろん作る。必ず。

 移動できる予定は移動して、やっと三日後、妹とのデートに出かけられた。とは言っても、動かせない予定もあるので、その間はどこかのお店で妹を待たせてしまうことにはなるが。「それでもいいの、ディアルドと一緒にいたいだけ」と言う妹が健気で可愛い。

 最近めっきり大人のような姿になりだした妹は、薄い黄色と黄緑の春らしくて可愛いドレスを着て、金髪のカツラを装着していた。帝都での外出時は目立つ神髪を隠しカツラをよく着用しているが、俺の髪色とお揃いだと嬉しそうに言うところが愛らしい。

 昔はよく手を繋いで歩いていたが、こうやってデートに出かける時は、妹は俺の腕に手を絡ませる。そういうところも大人になってきていると思う部分だ。

 しばらく街の店を回っていたのだが、俺の仕事の時間のために俺は一時妹から離れた。その時は、妹が退屈しないようにドレスを作る婦人服の店で待つようにお願いした。仕事を終わらせて戻ってくると、今帝都で流行っているという大きめの帽子をねだられた。それだけでいいのかと首を傾げ、他にもドレスを買ってあげようとしたが、家にたくさんあるからと断られた。では帽子をたくさん買ってあげようとすると、そんなにいらないという。妹は昔から無欲だと思う。

 それから昼食をするために、貴族御用達のレストランを訪れた。個室ではないが静かで上品な店で、食事が美味しいので気にいっているのだ。注文しようとしたところ、妹に一度止められた。まだメニューを見る時間が欲しかったのかと思ったが、妹は店を見渡すと、自分で給仕を呼んだ。なんだ、自分でメニューを伝える練習をしたかったのかと、そういうところはまだ子供だと思う。

 それからゆっくり昼食を楽しみ、妹には悪いが、もう一つの仕事へ向かった。そちらは妹を連れていける店だったため連れて行った。妹は表のお店でお茶を飲みながら人が行きかうのを見て楽しむと言うので、待たせて俺は店の奥の個室で話し合いに向かった。仕事から戻ってくると、妹は見知らぬ男二人に話しかけられていた。どこかの貴族の令息のようだったが、妹は困った顔していたので、すぐに助けてその場を離れた。暇なら一緒にお茶でもと誘われていたという。ああいう若い奴の中には、軽いやつもいるのだ。そういった輩から、妹を守らなければならない。

 それからは仕事はもうないので、待たせたお詫びに宝石でも買ってあげようかと店に向かった。店の奥に半分個室となっているところに案内され、ゆっくりと宝石を見た。大きい石の付いたネックレスはどうかというが、妹は首が重いからいらないという。妹は宝石を見るのは好きだが、付けることにあまり興味がないのは昔からだ。けれどこれからはいくら持っていても困る事はない。いくつか妹に似合いそうなものを選んでいると、部屋の向こうから令嬢が三人、勝手に個室に入ってきた。半分個室なだけあって、扉がないので部屋の外から見えるのだ。どこかの夜会で会った令嬢たちは、こちらがデート中なのはお構いなしにペラペラと話をしだした。

「そちら、妹さんかしら?」
「そうです」
「まあ可愛い。いいわね、優しいお兄さまにたくさんネックレスを買ってもらえて」

 妹に話しかけて値踏みされているのは俺である。俺と婚約すれば、こういったものをおねだりできるのだと、頭で計算しているのだろう。

「ご令嬢は買ってもらえる相手がいないのですか? 男性は誰もお連れになっていないようですね。可哀そうだわ」
「な!? わ、わたくしだって、買って下さる相手くらいいます! 今日はたまたまお友達の女性三人で見に来ただけで!」

 貴族の令嬢といえば、宝石店では普通は男の親兄弟を連れてくるか婚約者を連れてくるかするものである。

「あら、ちゃんといらっしゃるんですね。良かった! もしご令嬢が相手がいらっしゃらないなら、ディアルドの相手の候補に入れて差し上げようと思ったのですけれど、そんな必要はないようですね」
「え!?」
「では、もう用事はないようですから部屋から出て下さる? 見て分かるように、ディアルドとデート中ですの。どこのご令嬢か知りませんが、勝手に個室に乱入してくるなんて、品位を疑いたくなることはお控えいただいた方がいいと思いますわ」

 三人の令嬢は顔を赤くして去っていった。

「ふん! ミリィとディアルドのデートを邪魔するなんて! もう一生顔を見たくないわ!」

 妹がぷんぷんしていて可愛い。
 妹を引き寄せて頬にキスをする。

「悪かったね。好きなだけ買ってあげるから、機嫌を直してくれないか?」
「……ディアルドに怒ったんじゃないのよ。でもこれからたくさん構ってくれたら許してあげる」

 好きなだけ買ってあげると言ったのに、結局小さい宝石が付いている細いブレスレットを数点買っただけだった。妹は無欲である。

 その日は夜までデートして楽しい時間を過ごした。

 そして数日後、仕事の合間に、妹は先日行ったレストランに昼食で行きたいと言い出した。味が気に入ったのだろうか。昼食だけなら時間が作れるので、また妹とレストランへ行った。注文は妹がしたいというのでさせたのだが、何かがおかしい。

 前回と同じ給仕にわざわざ注文を頼み、やたらとその給仕を呼びたがる。嫌な予感がする。

「ミリィ? 給仕は他にもいるからね」
「うん。でもあの人がいいの」
「……」

 本当に嫌な予感しかない。
 また違う日にレストランに行きたいという妹を連れて行ったが、また呼ぶのはあの給仕である。

「ミリィがあの給仕を呼ぶのはなぜかな」
「かっこいいでしょう? 少し怖そうな顔しているけど、他の給仕と話して笑っているのが見えて。すごく笑顔が素敵なの!」
「……」

 これはやばい。早く対処しなければ。その日の内にその給仕は、同じお店の違う店舗へ異動するよう裏から手を回した。それからまたレストランへ妹と行った。しかし給仕がいないと分かり、がっかりしていた妹を見ると心が痛いが、それはそれ、これはこれである。

 その給仕の件についてジュードに話をしたところ、ジュードが変なこと言った。

「兄上も?」
「俺もとは?」

 ジュードの話はこうだった。
 ジュードはレックス商会の会頭である。帝都にも店舗があり、妹を連れていくこともある。店舗へ行くと、妹はいつもジュードを待っている間、上階にあるジュードの執務室から街の人の流れを見るのが趣味である。ところが、ある日から店舗のすぐ近くのカフェでジュードを待つようになった。そこのカフェが気に入ったのかと思い、ジュードは最初は気にしていなかった。

 そのカフェはバーも営んでいる。バー自体は夜の経営を主にはしているが、昼間も軽い酒を出している。昼間のバーは客層からも悪い雰囲気はない。昼間はカフェが主ということもあり、比較的若い女性が多く利用するのだ。そこのお茶菓子は美味しいと有名で、妹もお茶菓子を目当てにしていると思っていた。

 ところが、ジュードが妹を迎えに行くと、カフェに座ってはいるものの妹の視線はバーの中。慌てて妹にどこを見ているのか聞くと、「バーテンダーがかっこいいの」と嬉しそうに言ったそうだ。妹はバーテンダー目当てにカフェに通っていたのである。

 これはやばいと思ったジュードは、すぐさまその男を調査し、男が女グセが悪いことを突き止めた。二人の女性と付き合っていたバーテンダーは、なぜか急に二股がバレて付き合っていた二人の女性に報復されそうになり、バーを辞めて違う街へ逃げていったという。もちろん、その二股を相手の女性にばらしたのは、ジュードが雇った人間である。俺の妹に好かれたのが運の尽きだ。それに悪い男なので遠慮はしない。

 パーテンダーが急に辞めて妹はがっかりしていたというが、兄たちとしては安心である。そしらぬ顔でがっかりする妹を慰めるのだ。

 妹が成長するにつれ、こういった問題がまだまだ起こるのだろう。以前ダルディエ領で妹は大人の男を好きになったことがあるが、もしかしたら妹は惚れっぽいのだろうか。しかも毎回年上で、貴族でもない、危険な香りのする男ばかりである。心配だ。

 見た目は大人になりかけているのに、無邪気過ぎてまだまだ子供な妹が不安だ。兄たちで手分けして、なんとか妹の暴走を食い止めなければならない。決して妹が傷つかないように。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。