七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 130話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 130話

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」130話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 130話

 社交界シーズンが明け、ダルディエ領へ戻ってきた。シオンも数日前に帰ってきたらしく、久しぶりに会えてうれしくなった。
 家庭教師の勉強、体力づくり、ダンスのレッスンなど毎日充実した日々を過ごす。

 そうこうしているうちに夏休みとなり、エメルとカイルが帰ってきた。今年は双子は夏休みに帰ってこないと聞いてショックを受けていると、どうやら長期休みは夏ではなく秋に他の騎士と交代して帰ってくると聞いて、機嫌は戻った。

 今年はルーカスもいないので、水着はズボンではなくパンツタイプにした。もう少し成長したらビキニタイプを着たいなという願望はあるが、ジュードやディアルドが許してくれないかもしれない。

 そしてあっという間に夏休みは終わり、エメルとカイルは帝都へ帰った。
 そして私は十四才になった。それから約一か月後、双子が帰ってきた。

 双子はダンスがかなり上手だ。私のダンスレッスンに付き合ってくれて、失敗しそうになっても上手く軌道修正してくれる。また、いつか役に立つからと、一緒に踊る相手の足を踏む練習もさせられた。踏まない練習ではない、踏む練習である。本当にこれが役に立つのだろうかと疑問ではある。しかし、もう二度とこの令嬢とは踊りたくない、と思わせることに成功するからと笑って双子は言った。そういう風に思わせたい相手とはどんな相手なのか。今の私にはよく分からないが、とりあえず練習した。

 それから双子には今後練習するように、と言われたことがもう一つある。それは感情を表に出さない練習である。以前、トランプでババ抜きした時もだったが、私の感情は顔に出やすいという。普段はそれでいいが、今後社交界に出た後は感情を隠すことも必要なのである。そういった時に対応できるよう、『無表情』の練習をすることになった。ずっと無表情でいることは難しいので、一日三十分くらいを目安に、使用人に対してだったり、兄たちに対してだったり、普通に会話中に無表情を練習するのである。これがなかなか難しい。兄たちと話すと笑ってしまうことが多いし、侍女やカナンと話していても笑ってしまうのだ。

「ミリィ笑ってみて」

 バルトの膝に面と向かって座り、にこっと笑う。

「うん、最高の笑顔だね。じゃあ怒ってみて」

 少しだけ右の頬を膨らました。

「あはは、可愛い! じゃあ拗ねてみて」

 少しだけ左の頬を膨らました。

「あは! 一緒じゃん。ただ可愛いだけだよ。じゃあ俺に抱き着いて」

 バルトに抱き着いた。

「もう何これ。うちの妹最高すぎる!」
「バルトー、次俺に交代ね」
「ねえ、無表情の練習じゃなかったの?」

 アルトが私をバルトから引っぺがした。

「だってミリィすぐ笑うんだもん」
「無表情って難しいよー。アルト無表情やってみてよ」

 その瞬間、無になるアルトに、つい笑ってしまう。

「うふふ、アルト、すごい無だったよー」
「あはは! もうミリィが笑うとつられるから」

 まったく練習にならない。ただのじゃれあいである。
 このあたりはおいおい練習することとなった。まだ社交界デビューまでは時間がある。

 それから数日後、私は騎士団へ馬に乗る練習に訪れていた。最近はついに馬に一人でも乗れるようになったのである。やけに私を気にする馬も、歩くのに集中してもらえるようになった。まだ走ったりはできないが、それでも十分進歩である。
 私が孵した一角は、もう大人と同じ大きさになった。元からいた一角よりも元気いっぱいである。私が行くと興奮することはなくなったけれど、すぐに近づいてくるところは変わらない。
 今日は元からいた一角の二頭に双子が乗っていた。手には鉄の棒を持っている。何をするのだろうと見ていると、一角に乗ったまま二人は戦いだした。

「わあ! すごい!」

 騎士たちが普通の馬に乗って模擬戦をするのは見たことがある。あの時もすごい迫力だと思っていたけれど、一角に乗ると、迫力がさらに上がるのである。

「一角は乗った相手の気持ちを読み取るからな。行きたい方向に走ってくれるし、今は一人ずつ乗って戦っているけれど、二人ずつ乗って戦えるんだよ」

 いつのまにかシオンが隣にいた。

「二人も乗れるの? 戦う時に?」
「そう。だから戦争で重宝するんだ」
「戦争で……」
「馬は一人で乗るだろう。二人乗せることはできるけれど、二人乗せて戦うのは向いていない。騎兵に歩兵が束になって戦えば、負けることもある。まあ色々状況によって戦い方はあるけれど、一角が二人乗せて戦えるから戦力は上がる。だからアカリエル公爵家が欲しがるんだ」
「……西側は戦争になりそうなの?」
「んー……まだ大丈夫だろう。ただいつまで持つかな。小競り合いは多いからな」
「シオンがこの前、西にいるって言ってたのは、アカリエル領のこと?」
「うーん、まあ」
「ちょっと戦ってきたのね?」

 シオンは一瞬しまったという顔をしたが、すぐに私の頭を撫でた。

「ミリィが気にすることじゃないよ」

 そう言うとシオンは去っていった。
 あのシオンの感じだと、その小競り合いに参加したのかもしれない。シオンを心配しても、また戦わないでと言ったとしても、シオンはやりたいことをやる人だ。止められるものではない。だから、シオンがどうか怪我をしないようにと願うしかないのだ。

 双子はまだ戦っていた。さすが双子で息ぴったりである。そういえば、アカリエル公爵家と我がダルディエ公爵家には一角はいるが、双子のいる近衛騎士団にはいないのだろうか。ラウ公爵家などには? 今度聞いてみたいところだ。

 私が一角を孵化してから、現在の北部騎士団にいる一角は全部で六匹。あれから先祖返りの卵を見つけることもない。さっきシオンが言っていたが、一角は戦争で重宝する。多ければ多いほうがいいのだろう。アカリエル公爵家にいるらしい動物遣いのように、私もブリーダーのような繁殖の手助けができるなら、一角を増やせるのかもしれない。けれど天恵の訓練はしないとの約束なので、その練習はできない。では一角を増やすなら先祖返りの化石を見つけるしかないが、そうそう簡単に見つかるものでもない。

(あれ?)

 そういえば、昔どこかで卵のような岩を見つけたことがあった気がした。

(どこだっけ?)

 思い出せそうで思い出せない。すごく小さいころだった気がするが、小さいころはほとんど出かけずに屋敷にいたはずで。

「あ!」

 思い出した。確か、ダルディエの敷地内にある本邸とは別の、いくつかある屋敷の一つ。そこの中庭に、卵型の岩があったような気がする。まさか、あれは先祖返りの卵だろうか。いやしかし、今まで化石を発見した時のように、声が聞こえる感じはなかった。やっぱり違うかもしれない。

 一応行ってみようか? 見るだけ見てみるか?

 とりあえず、見てみるだけ。そんな軽い気持ちで、騎士団から屋敷へ戻っていった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。