七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 127話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 127話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」127話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 127話

 社交界シーズンで帝都入りした私は、カナンや侍女に手伝ってもらい、少しだけ着飾っていた。

「どうかな?」
「素敵です! 妖精のようです! いえ、女神かもしれません!」
「……カナン、そこまで褒めなくていいから。普通に感想を言ってくれる?」
「大変お似合いです」

 最近、カナンは思いが高ぶると、私に過剰反応することが分かった。なのに冷静を促すと冷静な返しをくれる。最初からそうして欲しい。先日、あまりにも興奮したカナンは、私に「崇拝しています!」と爆弾を落としてきたのだ。信仰は勘弁してほしいので、聞かなかったことにしたが。

 今日は少し控えめだけど綺麗な薄紫色のドレスを着ていた。そして髪の毛は金髪のカツラを、カナンに綺麗に編み込んでもらっている。
 実はこの金髪のカツラ、またジュードが髪を切って作ってくれたのである。昔一度作ってもらったジュードの髪を使ったカツラは、今でも使っている。ただ長さが肩までほどしかなく、男装する時にしか使えないのだ。そこで、新しくカツラを作りたいとジュードに言ったところ、先日長かったジュードの髪を切ってカツラを作ってきてしまった。まさかまたそこまでするとは思っていなかったので慌てた。わざわざジュードの髪で作る必要はなかったのだ。あんなに綺麗な髪がもったいないと思うのだが、本人は何とも思っていないようで、だったらいいのか? と深くは考えないようにしている。

 ただ、イケメンは何してもイケメンなのだ。いまだ美女の枠を外れないジュードは、髪を切ったことで、美男子のレベルが上がってしまった。間違いなく、今年の社交界の話題はかっさらうに違いない。

「それ、本当に付けるのですか?」

 着飾った上で、最後に眼鏡をした私に不服そうにカナンが言う。

「付けるわよ。目立ちたくないの」

 これから行くのは、皇宮である。貴婦人たちが少なからず出没する現場なので、できるだけ話題にはなりたくない。だから目立つ神髪も隠したのだ。

 準備が整ったので、さっそく馬車に乗る。今日はカナンも侍女として付いてきている。
 皇宮といえば、いつもは皇太子宮を訪ねるのだが、今からは違う場所へ行くのだ。それは近衛騎士団の訓練場である。
 前回の冬に帰ってこなかった双子は、今は近衛騎士団の宿舎に住んでいる。時々ダルディエ邸へ帰ってきているとは聞いているが、まだ私は会えていない。近衛騎士は一年目はとにかく忙しいと聞いている。だから帰ってこないのは仕方がない。ただ近くにいるのに会えないのが寂しくて、だから会いに行くことにしたのだ。
 近衛騎士団の訓練場は、一般公開されている場所がある。噂では近衛騎士のかっこよさを見に来る貴婦人や令嬢も多いという。一般公開の場所とは別に、家族が会いに行ける窓口もある。今日はそちらへ行く予定なのだ。

 皇宮へ入り、近衛騎士団の訓練場の側まで送ってもらうと馬車を降りた。カナンと護衛を連れて、騎士団の窓口を訪ねる。

「ごきげんよう。アルト・ティカ・ル・ダルディエとバルト・ティル・ル・ダルディエに面会を申し込みに参りました。わたくしは妹です」
「……少々お待ちください」

 なんだか怪しんでいるな、この窓口の人。眼鏡が怪しいのだろうか。
 しばらくそこで待っていると、双子が現れた。

「……ミリィ?」

 双子まで、ちょっと怪しんでいないか。私は眼鏡を取ると、少しだけ頬を膨らました。

「もう! ミリィの顔、忘れたの?」
「「ミリィ!」」

 バルトが私を抱え上げた。

「何、眼鏡なんかして! 髪も違うし、誰かと思ったよ」
「そうだよ。せっかくの可愛い顔を、どうして隠すんだ?」
「変装したの。髪色とか目立つでしょ? ここって、一般公開のところは貴婦人がいっぱいいるって聞いたから。それにこの前騒ぎがあったらしくて」
「あー……」

 なぜか二人は会話を終わらせ、窓口の人に声をかけた。

「ちゃんと妹でした。このまま妹連れて中に入るので」
「分かりました」

 なんだろう? バルトは私を抱えたまま、双子が現れたドアへ向かった。もちろんカナンと護衛も付いてくる。

「家族用の窓口からはこの中も入れるんだ。あ、ミリィ、眼鏡はしようか」
「うん?」

 言われるがまま、眼鏡をする。

「あそこ見える? 人が並んでるでしょう。あそこが一般公開で立ち入れるところ。こっちの家族用のところは、窓口で顔を覚えてもらえれば家族でもすぐに入れるんだけど、最初は今日みたいに迎えに行かないと入れない」
「で、時々いるんだ。家族でもない人が入ってこようとすることが」
「だから妹だったと窓口の人に言ったのね」
「そう。でさあ、一般公開側で騒ぎがあった件ね、ちょっと俺らも関係しているというか」
「……何したの?」
「あ、ひどい。俺らが悪いと思ってる? 違うよ? 巻き込まれただけだからね」
「そうそう。ま、俺たちがかっこいいことが悪いことと言われれば、俺らが悪いってことになるかもしれないけれど」

 何があったかと言えば。
 一般公開側で見ていた令嬢が双子に惚れた。毎日通うほど双子を思っていた。しかしそう思っていた令嬢が複数人いて、何かのキッカケで喧嘩になったらしい。しかも双子はまったく面識のない令嬢たちで、口出ししようがない。双子は何も悪くないので責任問題にはなっていないが、いい迷惑には違いない。

「……思い込みが激しそうな女の人には、手出ししちゃだめだよ?」
「大丈夫だよ。俺らの彼女たちは、ちゃんとわきまえることができる女性だから」

 なら安心、と思ってしまう私も私だが。
 相変わらず、双子に対して本気で恋しそうな人には手出ししないと決めているのだろう。そして彼女がそれぞれ複数人いるようだ。

 それから少しだけ話をして、帰ることとなった。

「ミリィがこっちにいる間、また会いに来てもいい?」
「いいよ。だけど今日みたいに変装しておいで。俺たちも時々は帰るから」
「うん」

 その後、窓口の人には顔を覚えてもらったので、今後は顔パスが出来そうである。双子に見送られ、馬車に乗った。

 さて次は。時間はちょうどよさそうである。今日はテイラー学園は休みなので、カイルは皇太子宮にいる。朝からお茶の時間に尋ねると、エメルに言ってあった。
 たくさんの関門を馬車で抜け、久しぶりの皇太子宮へやってくる。去年は帝都へ来なかったので、ここへ来るのは一年以上ぶりなのだ。
 カナンと護衛を連れ、中へ入る。眼鏡を取って、階下の近衛騎士に声をかけた。

「ごきげんよう。お久しぶりですね。カイルお兄さまを訪ねてきました」
「これは。お久しぶりですね、ミリディアナ嬢。聞いておりますよ、どうぞお通りください。お連れ方はこちらへ」

 ここから先は侍女や護衛も通れないのだ。カナンと護衛に頷くと、私はカイルの部屋へ向かった。カイルの執務室の入り口前まで行くと、そこに立っていた騎士が私を止めた。

「ミリディアナ嬢ですね。申し訳ありません、殿下は今来客中でして。こちらの部屋でお待ちください」
「はい」

 執務室の隣の部屋に案内された私は、椅子に座ってキョロキョロとする。

(この部屋は初めて来たな)

 ずっと手に持っていた眼鏡をかけた。眼鏡は度は入っていない。やはり変装アイテムとしては効果があるようで、双子も最初は戸惑っていた。カツラと眼鏡のセットだと、私だと見破れるのは、ごく身近な人くらいだろう。

 しばらくして、ドアが開いた。

「ミリディアナ嬢、お待たせしました。こちらへどう……ぞ?」
「あ、大丈夫です。ミリディアナで間違いないです。眼鏡をしただけですよ」
「……失礼しました。どうぞ」

 執務室へ案内されると、カイルとエメルが待っていた。

「カイルお兄さま!」
「……ミリィ?」

 眼鏡をはずして笑った。

「変装してみたの! ミリィだって分からないでしょ?」
「驚いた。眼鏡すると、ミリィじゃないみたいだね。髪型も違うし」
「カツラも新調したの。男装用のは使えないから。でもこのカツラも素敵でしょ?」
「可愛いよ。似合ってる」

 笑ってカイルに抱き着いた。

「カイルお兄さまに会いたかったわ。夏以来ですものね」
「俺も会いたかったよ。年々ミリィは綺麗になっていくね。さっきも驚いた。眼鏡を外した人は、どこの美しい令嬢なのかと思ったよ」

 カイルから体を離した。

「今日の恰好と男装姿とどっちが好き?」
「どっちもそれぞれ可愛いからね。決められないな」
「じゃあ、また男装して会いに行くわね。明後日テイラー学園へ行こうと思ってるのよ」
「ルカとして?」
「ルカとして」

 カイルと笑いあう。それからエメルと三人でお茶とお菓子を楽しみながら、おしゃべりに花を咲かせるのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。