七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 125話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 125話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」125話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 125話

 社交界シーズンで両親とディアルドとジュードは帝都へ向かったが、私はシオンが残ると言うので一緒に残っていた。たまには都会に行きたい! というタイプではないし、帝都へ行かなくても、欲しいものはだいたいジュードにお願いして作てもらえる。社交界へ出る年頃ならまだしも、まだ子供の私は帝都へ行く必要性もないのだ。
 シオンがいるだけでなく、今はルーカスもいる。ルーカスは今度の夏休みまでいるらしいので、もう少し一緒に遊んだりできるのだ。
 ただ、しばらくして、どうして帝都に来ないのかとカイルから手紙が来た。今年もシーズン中は来るのだと思っていたらしい。確かにシーズン中に私が帝都へ行かないなら、カイルと会うのは夏休みだけとなってしまう。そこまで考えてなかったので、カイルには悪かったと思う。もちろん私だってカイルには会いたいのだから。

 とはいえ、日々が過ぎるのは早い。社交界シーズンが終わり、両親や上の兄二人が帰ってきた。そして夏休みとなり、双子が帰郷する。今年は双子がテイラー学園を卒業したのだ。卒業後の進路として、双子は二人共近衛騎士団へ入団することが決まっている。夏休みが開けたら、帝都へ行くのだ。

 そしてエメルとカイルもダルディエ領へ帰ってくる。屋敷の入り口でお出迎えのために、外に出て待っていた。私の横ではルーカスが立っている。

「ルーカスはカイルお兄さまに会うのは初めて?」
「帰ってくるのエメルさんだけじゃないの? カイルお兄さまって誰? まだ他にも兄がいた?」
「……もしかして、聞いてない?」
「何が?」
「……あのね」

 カイルが皇太子だと言っておこうかと思ったところ、丁度向こうから馬車が現れた。

「あ、帰ってきた! エメルー! カイルお兄さまー!」

 馬車を降りた二人に抱き着いた。

「おかえりなさい! 会いたかったわ!」
「ただいま、ミリィ。俺は一年も会えなくて寂しかったよ」
「そうですよね。私にずっと、冬にミリィに会えたお前はずるいって言ってたのですよ」
「エメル」
「ふふ、カイルお兄さまを寂しくさせてごめんね。夏休みはたくさん遊びましょう」

 それから入口から屋敷へ入ろうとしたところ、ルーカスがカイルを見て誰だろう、と言いたげに立っていた。

「あ、ルーカス」

 ルーカスのそばにいくと、ルーカスの耳に口を近づけ、こそっと耳打ちした。

「カイルお兄さまは皇太子なのよ」
「……は?」

 毎年カイルが夏休みはここで過ごすとはいえ、一応使用人などにはカイルは皇太子ということは公然の秘密となっている。例えば家令など知っている人は知っているが、全員が知っているわけではないのだ。だからカイルが皇太子だとは大きな声では言えないのである。

「カイルお兄さま、ラウ公爵家の長男ルーカスよ」
「うん、エメルに聞いているよ」
「お、お初にお目にか」
「ルーカス。そういったことは、ここではいらないから。ミリィ、屋敷に入ろう。お土産持ってきてるんだよ」
「う、うん」

 カイルが手を出したので、手を握って中に入る。
 あんれぇ? なんだかカイル怒ってるのかな?
 ちょっとだけピリッとしたものを感じるような感じないような。

 それからお土産を見せてくれるカイルとエメルに囲まれて、箱の中を見ていた。物よりもお菓子を貰った方が嬉しいと知っているので、大半はお菓子である。

「たくさんのお菓子ありがとう。あとでお茶しましょう」
「そうだね。……ところでミリィ」
「ん?」
「ルーカスとは仲が良いの?」
「そうね。仲いいわよ。年も一緒だし、いつも遊んでるわ」
「ふーん……。好きなの?」
「好きよ?」

 カイルが急に無言になった。なんだ? エメルを見ると、にこっと笑い返された。いや、それじゃあ分からないんだが。やはりあれか、社交界シーズンで帝都に行かなかったのに、その間にルーカスと遊んで仲良くしてしまったから、妹を取られた気分になるのだろうか。これはちゃんとカイルに妹の兄への愛は不変だと伝えねばなるまい。

「ミリィは、カイルお兄さまのことも好きですからね?」
「……」
「お友達ができたからって、ミリィのカイルお兄さまへの愛は変わらないわよ」
「……友達?」
「そうよ。友達は友達よ。カイルお兄さまとは違うわ」
「それは……どっちの方が、より好きなの?」

 ああ、なんだ。ルーカスの方がカイルより好きなのかと思ったのか。どちらがより好きだなんて、決まっているのに。私は筋金入りのブラコンなのだ。カイルに抱き着いた。

「もちろん、カイルお兄さまよ。大好きなんだから」
「……うん。俺も」

 やはり帝都へは行くべきだったと思った。妹である私は、カイルを寂しくさせてはいけない。
 それからはカイルは機嫌が悪くなることはなかった。いつもの夏休みを一緒に楽しむ。

 そして夏休みのある日。午前中はエメルとカイルは勉強のために部屋に籠っていたため、私は騎士団へやってきていた。一角と遊んだり三尾と戯れたりしてから、昼前に屋敷へ帰ろうとしていたところ、ルーカスに呼び止められた。

「なあ、カイルさまって、やっぱり怒ってるよな」
「やっぱりって? 怒ってないと思うけど」
「いやいや怒ってるって! あの無表情が怖い」
「ええ? そう? 確かにカイルお兄さまは無表情が普通の顔だけど。仕事のし過ぎかな? よく眉間にしわが寄ってるよね」
「そういう話じゃない」
「じゃあどういう話よ?」
「なんていうかこう……俺がミリィと話していると、より怖い雰囲気というか」
「ああ。カイルお兄さま、ミリィが好きだものね。ルーカスに取られると思っているみたい」
「取らないから! というか、そういうあれか! お前のところの兄さまたち、ミリィを好きすぎるでしょう! ミリィのことになると、ジュードさんとか時々怖いからね!?」
「うふふ。お兄さまたち、ミリィのこと愛してるもの。ミリィもお兄さまたち大好きだから相思相愛なの」
「笑い話じゃないから。これは恐怖の話だから」
「何が怖いの? ミリィとお兄さまたちの相互愛だもの。自己完結でしょう」
「お前知らないからそんなこと言うんだよ」
「何を知らないの?」
「うっそれは……」

 何かを葛藤するように頭を押さえたルーカスは、盛大なため息を吐いた。

「……いや、もういいわ。俺が気を付ければ済む話だ」
「ええ?」
「じゃあな、昼食待ってるぞ。気を付けて帰れよ」
「うん……」

 なんだったんだ。
 ルーカスは一年うちにいたので、私のブラコンや兄のシスコンにも慣れたはずだ。あまり気にすることでもないだろう。昼食のために屋敷へ戻るのだった。

 そして恒例の湖での水遊び。今年はルーカスがいるために、去年着たパンツタイプの水着は禁止されてしまった。仕方ないのでズボンが付いている水着で我慢しての水遊びである。

 なんだかんだ夏休みを楽しみ、最初にダルディエ領からいなくなったのはルーカスだった。今年はテイラー学園へ入学する年なのである。入学試験はいつ受けたんだと思いきや、今から受けると言うから驚きである。入学の直前までに受かればいいらしい。だから一度ラウ領へ戻り、それから帝都へ行くのだという。
 次に帝都へ戻ったのは双子だった。近衛騎士になるためである。もう近衛騎士になることは決まっているので、色々と準備のために早めに帰っていった。そしてその後エメルとカイルも帝都へ帰っていき、ダルディエ領は急に静かになった。

 そして私は十三歳になった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。