七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 124話 パパ視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 124話 パパ視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」124話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 124話 パパ視点

 今日、外に出ていたシオンが帰ってきた。さっそく報告を受けたが、あまりいい報告とは言えなかった。特にきな臭いのは西だが、あそこはアカリエル公爵たるルークが対応している。今までのように対応するだろうから、問題ないとは思うが。

(西よりも、南の方が、しばらく監視が必要か)

 無意識に眉を寄せる。あまり関わりたくないところではあるが、そうもいってはいられない。

「心配事ですか、ジル」

 はっとして横を見た。フローリアが心配そうにこちらを見ている。しまった、せっかくの二人の時間なのに、つい考え込んでしまった。

「すまない、何でもないよ」

 安心させるように腰に置いた手に力を入れた。フローリアは心配性である。心配しすぎて倒れたりするから、あまり負担をかけるのはよくない。ジル自身、フローリアにはいつも心穏やかにしてくれるのが一番だと思っているし、このいつまでも美しい妻が暗い顔をするのは見たくないのだ。

 ドアが開く音と共に、娘と猫のナナがやってきた。

「ママ、パパ、見て。シオンがお土産くれたの! 南で買ってきたんですって」

 嬉しそうにお土産を見せる娘は、本当に大きくなったと思う。最近でも熱はでるが、前ほどではない。娘が努力して体力をつけたことが功を成したのか、昔より強い体になってきている。小さいころは、いつ倒れるかいつも心配だった。もしかしたら、大人になれないかもしれないと、胸が痛くなった。けれど嬉しいことに、ここまで成長してくれた。

「綺麗な石ですね。加工してネックレスにしたらどうかしら」
「ネックレスかあ。このままでも綺麗だもの、書類を置く時の重しにしてもいいと思わない? ママ」
「それもいいわね。ところでミリディアナちゃん、そのドレス、先日作ったものでしょう。とても可愛いわ!」
「えへへ、そうなの。ママが絶対これがいいって言ってたドレス」
「とても素敵よ! 少しくるっと回ってみてくださらない?」

 フローリアの言うように回って見せて笑う娘は、妻に似て美しく成長していた。元々フローリアに似ていたが、最近大人の表情を見せるようになった娘は、ますますフローリアにそっくりである。

「パパ、ちょっと横にずれて?」

 娘の一言に、私が横へずれてフローリアとの間が空くと、娘はその間に座った。こういうところはまだまだ子供のようなのだが、そんなところが可愛いのである。いつかはこういうことをすることもなくなるだろうが、娘が甘えてくるうちは、この権利は私のものだから絶対に自分から手放すつもりはない。

 愛しい妻と娘が楽しそうに話す姿は、何にも勝る得難い幸福の時間である。

「ああ、ここにいましたか」

 部屋にディアルドとジュードが入ってきた。

「どうした?」
「シオンが今年は帝都には行かないと言っているので。聞かれました?」

 もうすぐ社交界シーズンなため、帝都へ向かう準備をしているところなのだ。

「ああ。さっき許可した」
「でしたら、シオンの準備はいらなかったですね。正装を用意していたのですが」

 シオンが用意しないのは分かっているので、ディアルドが気を利かせてくれたのだろう。

「シオン帝都行かないの? またどこか行く気なの?」
「いや。シオンはしばらくここにいる予定だ」
「じゃあミリィも帝都行かなくてもいい? シオンとお留守番する」
「え!? ミリィ行かないの? 向こうで俺が好きなもの買ってあげるよ」

 ジュードは娘を甘やかしたい病なのである。

「今欲しいもの無いもの。そうだ、美味しそうなお菓子があったら買ってきてね」
「えー。ミリィとデートしたかったんだけどな」

 娘は今のところ、ドレスや宝石など、女性が好みそうなものは欲しがったりしない。フローリアのようにおねだりしてくれれば、いくらでも買ってあげるのだが。

「ジュードはもっと女の人とデートしたほうがいいと思うな。いつもミリィとデートするか、仕事しているかでしょう」
「ミリィが俺が知る中で一番可愛いから仕方ないんだ」
「そんなこと言っていたら、あっという間におじいちゃんになっちゃうよ? ミリィがいつか結婚したら、ジュード一人になっちゃう。そしたらミリィが心配するわ」

 ギョッとしたのは、私と息子たち。妻だけはきらきらした瞳を娘に向けていた。

「まあ! ミリディアナちゃん! もしかして、好きな方がいるのかしら!」
「え? ……ううん、いないよ」
「今の間は何!?」

 私の思ったことをジュードが代弁した。

「ママにだけ教えて下さらない? もしかしてルーカスかしら!」
「ママ、ここで話したら、全員聞いているでしょう。それにルーカスは兄弟みたいなものだもの、好きにはならないわ」
「そうなの? ルーカスはいい子だもの、ミリディアナちゃんが好きならママ賛成するわ」
「俺はしない! 全然賛成しない!」

 ジュードがまた私の代弁をする。

「本当にルーカスは違うの。家族みたいな好きなだけなの」
「まあ残念。じゃあミリディアナちゃんが好きな人ができたら、ママに必ず教えてくださいね」
「俺にも教えて! そいつは全力でつ」

 潰す、と言いたかったのだろうか。ディアルドがジュードの口を笑って塞いでいる。

「うん、教えるね! ……あ、でも、もしだけど。好きな人がミリィを好きになってくれなかったら、結婚できなくなっちゃうよね?」
「あら、そんなことありませんわ。ミリディアナちゃんが好きなら、ジルがなんとかしてくれますわ。ね、ジル?」

 ね、と言われても。それは相手が何と言おうが、娘のために無理やり結婚させてやれ、ということだろうか。娘を誰にもやりたくない身としては、結婚させたくない。とはいえ、この美しい娘を振るという男がいるなら、それはそれで腹が立つ。ただ妻の手前、本音は言えない。

「……そうだな」
「何を言うんですか、父上! ミリィのことを好きでもない男にやるつもりですか! そんな男は沈めて、俺がミリィを一生面倒見ますので、ご安心を!」

 言えないが、内心は全力でジュードを頼もしく思う。いつかは父である私の方が先に死ぬのだから、ジュードが娘を見てくれると言うなら安心である。

「結婚しなくてもジュードが面倒を見てくれるの? ミリィがおばあちゃんになっても?」
「あたりまえじゃないか。ミリィはいくつになっても、俺の大事な妹なんだよ。大丈夫、ミリィが欲しいものは一生何でも買ってあげられるくらい稼ぐからね。俺と一緒に年を取るのも楽しいと思わない?」
「そうね、いいかも!」

 よしよし。とりあえずは男の話題はそれた。しかし今、娘に好きな人がいるのかどうかは、調査が必要だと内心思うのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。