七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 114話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 114話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」114話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 114話

 ――ガン! ガン! ガン!

 牢では子供たちが出入口から離れ、怯えまくっていた。私も出入口から何が飛んでくるか分からないため、怖いわけではないが用心のために離れていた。

 シオンが出入口の頑丈な南京錠を蹴りまくっている。双子も遠巻きにして見ていないで止めてほしいのだが。あんな風に蹴るよりも、鍵を持ってきた方が早いのではと思っていると、南京錠が壊れた。執念である。

 ドアを開けると、他の子供に目もくれず一目散にシオンは私を抱き上げに来た。

「大丈夫か!」
「大丈夫よ。さっきもそう言ったのに」

 シオンがここにやってきて、南京錠を蹴る前に鉄格子ごしに話をしたのだ。

「ちゃんと触ってみないと分からないだろう」
「大丈夫。ほら、見て? 怪我もないでしょう?」
「……そうだな」

 シオンは息を吐いた。心配かけたのは、本当に申し訳ないと思う。だからシオンを抱きしめた。これで安心してくれるなら安いものである。

「助けに来てくれて、ありがとう」
「ああ」

 双子もこちらへやってきた。

「アルト、バルト、助けに来てくれてありがとう」
「ヒヤヒヤしたよ。無事でよかった」
「体調も悪くないね? 顔色はよさそうだけど」
「大丈夫」

 いちいち色気を出す双子である。私の左右の手を取って、それぞれ甲にキスをするのだ。

「一人子供が連れていかれちゃったんだけれど、どうなったのか知っている?」
「あー、なんかそんな話聞いたね。ネロがディアルドに言っていたから、どうにかしていると思う」

 どうにかって何だ。正しい情報が欲しいのだが。

 警備兵が入ってきた。子供たちが出されていく。長男やアナンも連れ出され、私たちも外へ出た。

「ミリィ!」

 ジュードが走ってきた。シオンから私を奪うと、ぎゅうぎゅうに抱き着いてくる。

「あああ、俺のミリィが無事でよかった!」
「ジュードも助けてくれてありがとう」
「もちろんだよ」

 いつの間にか傍にディアルドが立っていた。ほっとした顔で私の頭をひと撫ですると、また去っていく。警備兵の統率や子供たちの保護の指示やら、いろいろとあるのだろう。

「あ、ジュード、降ろして」

 ジュードが降ろしてくれたので、私は見つけたアナンとカナンのところへ向かった。

「カナン、大丈夫だった?」

 服には少し血が付いていて、私は眉を寄せた。

「カナン、この人が助けてくれたんだ」
「え、違うよ。助けてくれたのは、私のお兄さま」
「でもお前のお陰だろ?」

 私が攫われたお陰といいたいのだろうか。苦笑してしまう。

「カナン、血が付いているけど、怪我は?」
「あ……それは、もう」
「……治ったのね?」

 カナンはびくっとした。私の反応が怖いのだろう。親にさえ、気持ち悪いと言われてきたのだ。

「もう治ったとしても、痛かったでしょう? 体調悪くなったりしていない?」

 カナンは首をふる。
 とにかく、アナンもカナンも無事なら、なんとかなる。

「もし大丈夫なら、この後少し話させてくれる?」

 二人は顔を見合わせると、頷いた。

 それから十日後。
 ダルディエ邸の敷地内にある私の家では、アンとラナ、そして新たにここに住むことになったアナンとカナンと共にお茶会をしていた。男の恰好をしていたカナンは、今は女の子の恰好をしていた。

 結局、あれからアナンとカナンには、親に捨てられた状況を根掘り葉掘り聞いた。失礼だとは思ったが、今後どうするべきかちゃんと考えるには、情報が必要なのである。

 アナン、カナンはリカー子爵家の長男と長女だった。やはり服からにらんだ通り貴族であった。実はエナンという次男と二人は三つ子だったという。生まれてから数年後、三人には傷が治ることが分かった。それを父親は気持ち悪がった。

 それから母が亡くなったあと、父の愛人だった女が後妻となると、ただの政略結婚で婿養子だった父は、傷が治る三つ子を疎ましいと思った。そこでまずは一人次男のエナンを売った。アナンとカナンには売ったとは言わず、養子に出したと言った。父の様子がおかしいことに気づいたアナンは、今度はアナンとカナンを養子に出すということを父に聞き、アナンはカナンにとっさに女だとばれないほうがいいと言い、髪を切って少年の服を着て誤魔化したのだという。

 しかしアナンとカナンが一緒に養子に出された先は子供を売買する場所で、次男のエナンは実は売られていて、しかも傷が治るのを面白がった買い主に傷つけられ殺されるという痛ましい事実を知った。そして、その売られた先に私たちが攫われてやってきた。

 私たちが連れ去られたのは、子供を連れ去り売買している元締めである。そこにエナンを殺した元買い主がアナンとカナンが売買されていると聞き、やってきた。そしてカナンが先に連れ出されたのである。連れ出された先で、傷が治るのか確認するために傷つけられていたらしい。そこにディアルドが警備兵と共に突入したのだ。

 当然子供を売買していた元締めは捕まり、また子供を買った客も捕まった。それから過去に売買された子供たちも徹底的に調査すると聞いた。

 それにしても、実の子であるにも関わらず子供を売ったリカー子爵は許せない。それはアナンもカナンも同じ思いである。どうにかならないかとディアルドに言ったところ、どうにかしてくれた。

 まずリカー子爵は婿養子である。ということは、後妻との間の子よりも次期子爵としての正当性があるのはアナンだ。またリカー子爵は子供を売っただけでなく、子供を売買していた男ともつながりがあった。また他にも叩けば埃の出ることをしていたようで、父であるリカー子爵は捕まり、一生牢の中。後妻はアナンとカナンの母を殺した疑惑があったため、それをちらつかせると子供とともに逃げた。そしてリカー子爵が捕まったことで、リカー家の名に多少傷は残ったものの、アナンが子爵を引き継ぐこととなった。

 リカー子爵の資産は、色々と罪の清算等あるためほとんど残らないが、借金もなさそうである。そこだけは幸運だっただろう。アナンに残ったのはリカー子爵という地位、そしてカナン。でも二人は、二人が一緒にいれればそれでいいと言っている。だから、二人は私の家に住めるようパパや兄たちにお願いした。

 また人間を拾うのか、そんな顔を兄たちはしていたけれど、出世払いなんだよ、二人で働いて帰してもらうんだよと力説しておいた。そう言わなくても了承してくれた気はしたけれど。

 そう、アナンとカナンはタダ飯を食べるわけではない。それは二人にも説明している。しばらく私の家に住んでいい。けれど将来どうしたいのか考えてほしい。二人は名ばかりとはいえ貴族である。だから勉強して学校へ行って、新しく事業を始めることもできよう。もしくはアナンであれば騎士にだってなれる。まだ若いのだから、できることはたくさんあるのだ。それを自分の力で見つけて、頑張って、そして将来稼げるようになったら、ここで暮らした分のお金を返してくれたらいい。

 二人はそれに納得している。しっかり働いて、いつか必ず返すと。それにアナンはすでに何をやるのか見つけているみたいだ。もう少しちゃんと考えてから話すと言っていた。

 それから二人の傷が治る件だが、これは天恵らしい。しかも驚くことに、ネロが同じ天恵だった。ネロはなぜか年を取らないのだが、それも関係あるのかと聞くと、それはまた違った理由というから、こんがらがるのだが。とにかく傷が治る天恵は、今までにも何人かいたらしく、天恵という存在自体知らなかったアナンとカナンは、理由が分かって少し安心していた。

 一つ気になる点といえば、アナンの妹カナンの私を見る目が何か含んでいる気がするのである。どこか崇拝しているような、神格化しているような。うん、気のせいにしておこう。

 そんな感じで、私の家は賑やかになった。

 ああ、それと、カロディー家の長男であるが、泣きながらユフィーナに抱き着いていた。うん、長男よ、あんたほとんど寝てたやん。どこに泣くほどの要素があったよ。まさかキレキレだったシオンが怖かったとか言うまいな。長女と次女がせっかくいなくなったのに、カロディー家の将来がなぜか不安になった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。