七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 112話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 112話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」112話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 112話

 社交界シーズンを終え、ダルディエ領へ戻ってきた。街へ行くというディアルドと共に馬車に乗っていると、ダルディエ邸の敷地を出た後に知った顔を見つけたため、馬車を止めてもらう。

「アン! 街へ行くのでしょう。一緒に行きましょう」
「お嬢様! でも……」
「いいよ。アンも乗りなさい」
「あ、ありがとうございます」

 アンはディアルドに頭を下げると、馬車へ乗り込む。
 仕立て屋の職人である師匠の元へ、いつもアンは一人で歩いて往復している。ダルディエの屋敷は山の中にあるため、歩きなら街まで四十分ほどはかかるはずである。うちの使用人が街に用事があることはままあるので、使用人用に馬車を一日三往復ほど走らせているが、アンはほとんど使用しておらず、歩くほうが好きなようであった。

「この前のデザイン画、面白かったわ。今日のアンの恰好も素敵!」
「ありがとうございます! お嬢様から色々よくしていただいて。これもいただいた服を使わせていただいたんです」

 私の服の数は半端ない。ママが毎日二度は着替えても大丈夫ようにと、買いそろえているからだ。ただ成長期なため、すぐに小さくなって着れなくなってしまう。着れないものが家に大量にあっても仕方がないので、基本はリメイクしてから孤児院などに寄付するのだが、アンの服を仕立てるための練習になるといいと思い、着ない服の一部をアンに渡しているのである。アンは自分用やラナ用に仕立て直したりして、まったく違う服に変えて着ていた。私の服をそのまま使いすぎると豪華になりすぎるし、高そうな服を着ていると目を付けられるのも困る。それを上手い具合に調整してリメイクしているのだ。それがなかなか上手くて、アンは才能があると思う。

 アンは途中で馬車を降りると、手を振って去っていった。
 それからもう少し馬車を走らせ、ディアルドと一緒に馬車を降りる。ディアルドがいくつか用事があるため、私はそれについて行くだけである。最後にジュードの商会へ顔を出す予定であるが、ディアルドが知り合いと話をしていたため、私は離れて護衛と一緒に本屋へ行った。すっかり顔なじみの本屋の亭主は、新作を教えてくれたため、それを購入した。本自体は屋敷へ送ってもらえるよう依頼する。

 そして本屋を出ると、知った顔を見つけた。

「ウェイリーさま!」
「おー! お嬢さん!」

 私が以前ストーカーしていた男である。相変わらずいい男だ。街で会えば、最近はこうやって抱き上げてくれるようになった。近くで顔を拝めるなんて、眼福眼福。護衛も危険がないと判断しているのか、何もしない。

「今日も素敵ですね! 髪を切られたのね」
「相変わらずよく見てるな。ちょっと切っただけだぜ」
「ウェイリーさまのことなら見逃しませんわ! 任せてください」

 うふふと二人で笑っていると、目の前にジュードが仁王立ちしていた。

「ウェイリー! うちのミリィを離せ!」
「あぁ?」
「まさかうちのミリィにまで手を出す気ではあるまいな! いくらミリィが可愛いからって……」
「待て待て、ジュード」

 ブチギレジュードを止めたのは、慌ててやってきたディアルドである。

「勘違いするな。ウェイリーとミリィは友達なんだ」
「はぁ?」
「いいから。ほらミリィ、こっちへおいで。ウェイリー、今日はここで解散ということでお願いします」
「わぁったよ。じゃあな、お嬢さん」

 ウェイリーは私の頭を撫でると去っていった。

「どういうことです!?」

 しまったなーという顔をするディアルド。私も気持ちは一緒です。ここはレックス商会の本店の近くである。場所が悪かった。とりあえず場所を変えようとレックス商会のジュードの部屋へ移動した。

 私がウェイリーをストーカーしていた件は、ディアルドは兄たちに話をしていない。だから女好きのウェイリーの毒牙に妹が危ない! という思考にジュードがなったのであろうことは想像できる。

 これはウェイリーに迷惑かけないためにも言っておいたほうがいいかもしれないと、ジュードに簡単に説明することにした。つまりウェイリーは私の初恋であり、今は友だちなのであると。ストーカーしていた件は黙っておく。

 それを聞いたジュードは、目を押さえて下向いていた。泣いてないよね? 「俺のミリィが初恋……初恋、初恋って何だっけ」とぶつぶつ言っている。壊れたかな。

 その後、結局ジュードは仕事が手につかなくなったので、三人で家に戻ってきた。今日は瀕死のジュードのために、私は側を離れないでくっついて動くのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。