七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 108話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 108話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」108話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 108話

 社交界シーズンとなった春、両親だけでなくディアルドもパーティー等に出るために帝都へ行くので、私も共に帝都へ移動した。

 それからママがティアママと会うというので、ジュードと一緒に私も向かった。実は一つティアママに面白い遊びを紹介しようと思っていたのである。いずれはジュードの商会で販売する予定であるため、ジュードも付いてきた。その遊びを私とやっているところを見せる意味合いもあった。

 ティアママとは皇妃宮で会うこととなった。いつもは帝都の郊外にある離宮で会っていたため、皇妃宮で会うのは初めてである。

 少し緊張の面持ちで皇妃宮を訪ねたのだが、ティアママはいつも通りだった。

「こ、皇妃陛下、お招きいただきありがとうございます」
「ようこそミリディアナ。すっかり一人前のレディーですね。けれどいつものように呼んでくれないと寂しいわ」
「……ティアママ?」
「そうですよ」

 ほっと息を吐く。その方が私も助かる。その時部屋のドアが前触れもなく開き、皇帝がやってきたのである。皇帝を呆れた表情で見たティアママは、扇子を口元へやった。

「また前触れもなく来られるなんて。来客中ですのよ」
「やあ! いいではないか。私たちの仲だろう。フローリア、よくきたね。ジュードとミリディアナも」

 驚いて口を開けていると、ママとジュードが立って挨拶をするので、私もそれにならった。危ない、ぼーっとしている場合ではない。

「堅苦しいことは、なしでいこう。そういった面倒なものは、さっき部屋に置いてきたんだ」

 呆れるティアママの頬に皇帝はキスをする。うん、普通の夫婦の一幕である。これが皇帝夫妻でなければ。ママやジュードを見れば、二人は特に慌ててもおらず、いつも通りの顔である。どうすればいいのか分からない私がおかしいのだろうか。

「ん? それはなんだ、ミリディアナ」

 そう言うと皇帝はあろうことか、私を抱え上げて膝に乗せてしまった。いやいや、いくら以前会ったとはいえ、数年前に一度であるし、それから久しぶりに会った子供を膝にあげるってどうよ。緊張しかしない。

 ジュードを見ると、私を助けるかどうしようか迷った顔をしていた。そうでしょうね。

「えっと……ティアママに見せようと思って持ってきたの」
「ティアママ? ……ふーん。ミリディアナ、私のことは、何と呼ぶのだったかな?」

 ひえー! ルイパパと呼べと!?
 張り付いた笑顔が引きつく。

「ル、ルイパパ」
「よくできました」

 パパ助けて!
 背中を汗がつたっていく。

「いやだ、ルイ。うちのミリディアナに、いつのまにそんなふうに呼ばせるようになったの?」
「うちの……。君だって、ティアママなんて、いつのまに?」

 ふふふふふ、と笑う皇帝夫婦が怖い。
 嫌だ、これって夫婦喧嘩じゃないよね!? 私のせいじゃないよね!?

「あ、あのね! ティアママとルイパパに面白いゲーム持ってきたの! 見てて!」

 この空気を何とかしなければ!
 腕に大事に抱えていたそれをテーブルに置いた。ジュードがテーブルを挟んで向こう側に座り、口を開いた。

「実はオセロというゲームを作りました。いずれ我がレックス商会で販売を予定しているのですが、一番にお二方に楽しんでいただこうと思いまして」

 そうなのである。勝手にオセロを我が家が開発したゲームとして販売しようとしているのです。ボードゲームとしてはチェスがあるのだが、なにせ私は最弱で、一度も兄たちに勝てたことがない。そこでもっと簡単なゲームなら勝てるかもと思い、前世でやっていたオセロを思い出したのだ。試作品でジュードにオセロを作ってもらい、兄たちと遊んでみたのだが、これがなかなか盛り上がるのである。最初は私も勝てていたので良かったが、いつのまにか兄たちに勝てなくなってしまったが。どうしてだ。

 オセロのゲームルールを軽く紹介し、あとはジュードと二人でやって見せた。すると皇帝夫妻は興味を持ってくれた。今度は皇帝夫妻が対戦してみる。すると少しの差でティアママが勝った。

「あらあら」

 勝ち誇って見せたティアママに、ルイパパは黒い笑顔を見せた。

「次も勝てるとでも?」

 それから二人は何度かオセロで対戦をして楽しんでいる。私はというと、皇帝夫妻のゲームが始まる前にジュードの膝に移動した。今日はジュードから離れたくない気分なので、皇帝夫妻のゲーム中、ずっとジュードの腕を私の肩から回し固定させておいた。もうここから一歩も動くまいという意思表示である。

 その後、ルイパパは公務があると言って慌ただしく部屋を出て行った。それからいつものティアママとお茶の時間だったが、何やらものすごく疲れた日だった。

 その後、家に帰ってからママに聞いたところ、皇帝夫妻の怖い笑顔の応酬は喧嘩ではないらしい。よくよく聞いたら、どうやらあれはただイチャついていただけだった。いつものことらしい。あれでものすごく仲が良いというから、何と高度な愛の応酬があるものである。ただ、初めて見たものからすると、普通に怖いからやめてほしいものである。

 皇帝が遊びにやってきたのは想定外だったものの、皇帝夫妻がオセロに興味を持ってくれたのは上々である。社交界で何かを流行らすには、もってこいの人材なのだ。ジュードとオセロの販売計画を立てているが、うまい具合に予定通りいきそうで満足だった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。