七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 107話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 107話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」107話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 107話

 季節は早いもので冬休みとなり、帝都から兄たちが戻ってきていた。ジュードと一緒に街へ買い物へ出かけたついでに、現在街のダルディエ公爵家の持つレックス商会へやってきている。昔から細々とやっていたレックス商会は、パパの代までは公爵が会頭ではあるものの、経営自体は人に任せていた。しかしジュードが経営に興味があり、小さいころから関わっているので、ジュードの卒業と同時にジュードが会頭となり引き継ぐ予定となっている。

 私が欲しいものやママが欲しいものを開発し、それを後に商品化して販売したりしているのだが、今のところ上手くいっており、ジュードが商会に関わりだしてから商会自体も大きくなっている。

 現在ではダルディエ領と帝都、そしてラウ領にも店舗があり、今後も広げていく予定だ。私としてはパンツが順調に貴族だけでなく平民にも浸透していっており、大満足である。実は今年の夏、試験的にラウ領で貴族向けに水着も販売したのだ。ラウ領では海に入るものもいるので興味は持ってもらえたらしく、すすめた貴族は買ってくれているらしい。まあ貴族とは新しいもの好きであるし想定通りなのだが。水着はパンツと違って娯楽品の類であるため、一気に広げることは考えていないので問題ない。

 次の私の目標はブラジャーである。八歳の私としてはまだ使うものではないが、数年後必要になってから作るのでは遅いのだ。来年あたりからジュードに提案しようと思っている。

 ジュードが少し仕事があるというので、レックス商会の二階からお菓子を食べつつ街を眺めながらジュードを待っていた。

(あれ? 双子がいる)

 街を歩く双子は、今年十三歳なのだが、複数の女の子を連れて歩いていた。きゃっきゃと双子も女の子たちも楽しそうにしている。女顔のジュードはズボンをはいていても街でナンパされるのだが、それを見て双子はいつも笑うのだ。モテるなら断然女の子がいいと。

(昔から双子は女の子好きだもんね)

 イタズラ好きで、兄の説教なんて笑い飛ばすし、いつも人をおちょくっていたりするのだが、女性には優しいのが双子である。うちの使用人の女の子にも人気があるし、イタズラされて怒ればいいのに、それを双子だからと笑って許す女の子の気持ちが分からないでもない。私もからかわれて遊ばれるのは赤ちゃんの頃からだが、やりすぎな目に合うことはない。双子はイタズラにもちゃんと線引きをしていて、これ以上やったら駄目だという境界線をわきまえているからかもしれない。要は、双子のやることを本気で嫌だと思ったことはないのだ。

(加減がうまいんだよね)

 複数の女の子たちと一緒にいても、たぶん双子がうまく関係を築いているのだろう。二階から見る限り、嫌な顔をしている女の子はいない。

 シオンとは真逆である。シオンといえば、今頃騎士団にいるだろう。双子と違って女の子には今のところまったく興味はなさそうである。

(女の子というより、人に興味がないのか)

 天恵があるから、昔から人と距離を取りがちのシオンは、必要最低限でしか人と接しないのだ。それでも天恵の訓練のお陰で色々と制御が効くようになったので、昔よりはマシにはなったとは思う。ぶっきらぼうであるし、思考のぶっとび具合は兄弟一だとは思うが、私のことは庇護しなければならないという認識が強いのか、いつも優しいし気にかけているのは伝わる。私が上の兄に駄目だと言われるようなことがあっても、シオンができることならこっそり影で支援してくれるのがシオンなのだ。

 まあ、それが男関係だと嫌のようなので、言わないが。ウェイリーを私がストーカーしていた件は、今のところディアルドは他の兄たちには言っていないようである。もうストーカーはしないとディアルドには約束してしまったので、していない。街で偶然会ったら、話したりくらいはするけれど。ウェイリーはやはり男前なので、会えばテンションが上がるのである。

「お待たせミリィ。行きたいって言っていたチーズの店に行こうか」
「うん」

 ジュードの声かけで私たちはレックス商会を出るのだった。

 それから数日後。
 シオンと双子と共に北部騎士団へやってきていた。

 騎士団へ行く時の私の恰好は、もうおなじみの少年服である。エメルが着ていたものを着ているのだが、ジュードが新しい少年服を作ろうと言うけれど断った。少年服にそこまでこだわりはないし、動きやすければいいのだ。伸びた髪の毛は侍女に一つに結んでもらうため、自分でも普段のジュードに似ているなと思う。

 以前ジュードに作ってもらったジュードの髪のカツラだが、これも使ったり使わなかったりである。ただ少し頭が大きくなったのか微妙にサイズが合わなくなってきたので、時々微調整をお願いしてはいる。ダルディエ領では私の虹色に輝く神髪も見慣れてきたほうではあるが、やはり目立つ。だから帝都に行った時は、ジュードの金髪カツラをよく使っているのであった。

 それから私の騎士からの呼び名だが、最初は女の子の恰好と男の子の恰好で呼び方を変えるようにお願いしたのだが、なかなか統一しない。お嬢さま、ミリディアナさま、ルカさまだったりごっちゃになっているようなので、どんな格好の時でも騎士からはルカと呼ぶようにお願いした。少年の恰好の時にミリディアナやお嬢様と呼ばれるより、女の子の恰好の時にルカさまと呼ばれるほうが違和感がないから、という判断である。

 今日騎士団へやってきたのは、三尾の巡回に連れて行ってもらうためである。ザクラシア王国との国境があるダルディエ領では、定期的に三尾に乗って国境を巡回している。三尾とはよく戯れていたが、まだ一度も背中には乗せてもらっていない。というのも、私が三尾に一人で乗っても落ちてしまうからである。馬にも一人では乗れないのだ。そのうち馬に一人で乗る練習をしたいところだ。

 普段三尾には手綱は付いていない。三尾は人の言葉を理解するので、背中に乗って指示をすれば、行きたい方向へ向かってくれるのである。だから乗っている人は振り落とされさえしなければいいのだ。ただそれにも足の力や体幹が必要らしく、私には難しい。だから今日は私が乗る三尾にだけは紐が付いていた。私が落ちないように支えるためだけの紐である。またシオンが一緒に乗ってくれるので、私が落ちることはまずないだろう。

 風邪ひかないように温かくし、フードで頭を、布で口を、ゴーグルで目を覆い、出発である。

「わぁぁぁ」

 三尾は山の凸凹などものともせず、すいすい走っていく。雪がちらつく中、風を切って静かに走るのだ。シオンがいる安心感があり、まったく怖くなく、むしろ楽しい。かなりのスピードが出ているはずだが、振り落とされることはない。途中で何度か断崖絶壁を確認したりしつつ、一度随所にある北部騎士団の拠点で休憩をとった。双子が背負っていた軽食で腹を満たす。

「ミリィ怖くない?」
「大丈夫! 楽しいよ。それより、ミリィが乗って三尾は重くないかな?」

 シオンと二人分の体重が乗るのである。

「大丈夫だよ。俺たちより重い大人が乗ることもあるから」

 確かに騎士の中には、かなりの筋肉質な人や背の高い人もいる。

 三尾たちにも水分を与え、それからまた出発するのだが、あっという間に国境の端までやってきてしまった。拠点では一度、そこで交代で見張りをする騎士と業務報告をする必要があるらしい。

「何か不備は?」

 兄たちが騎士と業務報告をする中、私はその拠点の屋上からザクラシア王国側を見てみた。雪がちらつく上に離れているため、ザクラシア王国の断崖絶壁など全く見えない。

「ミリィ、帰るよ」
「はーい」

 業務報告が終わると、私たちはとんぼ返りである。行きとは違う道なき道を走り、また一度途中で休憩を挟み、北部騎士団本部を目指す。

「うん?」
「どうした」
「何か聞こえた。ちょっと止まって」

 シオンが声をかけずとも、三尾は私の声で止まる。それを見た双子を乗せる二匹も止まった。

「あっち」

 私が指さす方へ、三尾が走り出す。
 どこかで聞いた、私を呼ぶ声。「こっち」そう言っている。これは。

「ナナの時に聞いた感じと一緒だ」
「……動物遣いの力か」

 聞こえたあたりで三尾から降りる。雪が積もった地面と、背の高い木があるだけだ。
 私は声がする雪の下を指す。そこは地面がぼこっと盛り上がっていた。

「ここだと思うのだけど」

 双子とシオンは顔を見合わせ、雪を掘り出した。すぐに岩が顔を出す。岩の上の雪を払うと、やはりゴツゴツとはしているが、卵型のような丸みをおびていた。ナナを見つけた時の化石よりは大きい。

「これも猫ちゃんかな?」

 わくわくが止まらなくて、岩を触ると、ゴツゴツとした表面がポロポロととれた。そして中から滑らかな卵が現れた途端、卵にヒビが入りだす。それから卵の殻が落ちて現れたものとは。

「え、馬?」
「これは……一角だな」
「一角? 角ないよ」
「あるよ。まだ小さいけど。頭触ってみて」
「……あ、本当だ!」

 猫ではなかった。ぼこっとした小さい角を生やした一角の赤ちゃんが、よぼよぼと可愛い動きをしていた。

「可愛いね!」
「……本当にミリィは動物遣いなんだな」
「シオンは見るの初めてか。俺らはナナの時に見た」
「ミリィ、力使って疲れてないか?」
「大丈夫よ」

 そもそも力を使っているという感覚さえない。

「どうする? これ」
「連れて帰るにしても、三尾には乗せられないでしょ」

 シオンと双子が悩んでいるところ申し訳ないとは思うのだが、手を挙げた。

「あのね、どうやらもう一頭いるかもしれないの」
「……え?」

 私は雪が盛り上がっている場所を指さした。兄たちは無言になった。

 結局、もう一つの声も聞こえていた私の意見で、再び化石を掘り起こした。中から生まれたのは、また一角であった。

 二頭の一角は私をママ認定しているようで、私はそこから離れられなくなってしまったため、いったん双子が人を呼びに騎士団へ向かった。私はというと、温かい三尾にくっついていろとシオンが言うので、三尾にくっついたまま一角と戯れていた。双子が戻ってくる頃には二頭の一角は歩けるようになっていた。ただ生まれたばかりで騎士団まで歩いてもらうのは難しい。馬車などが入れない山奥であるので、双子が連れてきたのは騎士と成人の一角だった。一角の背には木で作られた箱が二つ括り付けられている。赤ちゃん一角をそれぞれ箱に入れて、成人一角が運ぶのだ。箱からちょこんと顔を出す一角が可愛い。

 そうして、騎士団にいる一角ファミリーに、赤ん坊一角が二頭増えたのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。