七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 103話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 103話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」103話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 103話

 社交界シーズン目前、パパとママが早めに帝都入りした。春にある学園の短い春休みを利用して、グラルスティール帝国の東にあるラウ領を訪問することが決まったからである。ラウ領はラウ公爵家が治める地で、ラウ公爵はパパの親友だった。

 パパの親友は三人いる。テイラー学園で仲良くなって以来、今でもずっと仲が良いようだ。その三人は、アカリエル公爵、ラウ公爵、そして皇帝陛下である。

 カイルが皇太子と聞いてから、後日よくよく考えたらルイパパは皇帝なのだと気づいた。ルイパパは祭り以来会うことはないが、今更ながらルイパパなんて呼んでもいいのかと思う。しかしカイルが公な場でなければ、そう呼ぶほうが喜ぶだろうというので、もしプライベートで会うようなことがあれば、ルイパパ呼びをチャレンジしてみようと思う。怖いけれど。

 グラルスティール帝国には、四大公爵と呼ばれる人たちがいる。別名北公の我がダルディエ公爵、西公アカリエル公爵、東公ラウ公爵、南公バチスタ公爵である。南公だけはパパたちとは年代が違うので学園で一緒になることがなかった。だからパパと南公の関係は良くもなく悪くもなく、というところらしい。

 ラウ公爵領はグラルスティール帝国の中で帝都に次ぐ大きな街がある。また帝都から馬車で一日半ほどと距離も近い。だから学園の短い春休みを利用して行けるのである。

 ――くしゅん

「風邪ではあるまいな? 熱はないようだが」

 パパが私のおでこに手を当てる。今日はくしゃみがよく出る。まだ雪の降る日もあるダルディエ領とは違い、帝都やラウ領はすっかり春めいていた。

「顔色は悪くありませんし、もう少し様子をみましょう、ジル」

 ママも私の頬に手を置き、顔色を確認している。

 現在ラウ領へ向かう馬車の中。三台に分けて家族が乗っている。一台目は両親と私と猫のナナ、二台目はディアルドとジュード、三台目は双子である。エメルはカイルと忙しいため来れず、シオンは行きたくないと来なかった。シオンはアカリエル公爵家で訓練をしたいらしい。

 実は私も少し憂鬱なのだ。なぜかというと、ラウ公爵家には私と同じ年の男の子がいるというのだ。私とは同じ性別ではないし、ウィタノスではないと思う。パパや兄たちもウィタノスではないという認識のようだが、私はどうしても警戒してしまうのである。

 ラウ公爵邸が見えてくると、やはり四大公爵家なだけあり大きい上に豪華である。屋敷の外にはずらりと使用人が並び、公爵夫妻、そして三人の令嬢と一人の令息が立っていた。

 パパとママが馬車を降りる中、私はというとナナを抱き、じーと令息を窓から確認する。どうだろう。ウィタノスではないよね?

「ミリィ? 降りないの?」
「……うん」

 ジュードが声をかけてきた。私が何を心配しているのか分かっているのだろう。両手を差し出してきた。

「大丈夫。俺が守ってあげるから。おいで」

 私を抱き上げてジュードは歩みを進める。ナナは自分で付いてきていた。

「すみません、妹は緊張しているようです。私は次男のジュード、そして妹のミリディアナです」

 それぞれ挨拶を交わす中、令息を近くで確認する。

「どう?」
「違うみたい」

 ジュードのコソコソ質問に、私もコソっと答えた。どうやらウィタノスではなさそうなので、ほっとした。

 全員で屋敷の部屋に移動し、夕食まで軽くお茶をしながら会話を楽しむ。

 ラウ公爵家の子供たちは全員で四人。長女オリビアは十五歳、次女アリアは十三歳、三女リリーは九歳、そして長男ルーカスは私と同じ七歳である。公爵と名の付く家はどこも美形ぞろいだな、といいたくなるくらい美女と美男の姉弟だった。

 オリビアはディアルドが気になるのか、嬉しそうにディアルドと話をしている。アリアは双子と年齢が一緒であるし、そこにリリーも加わり会話が弾んでいた。ルーカスはジュードと剣の話を楽しそうにしていた。私はというと、くしゃみが定期的に出るし長時間馬車に乗っていたことも影響しているのか、疲れてしまっていた。

 結局その日は、私は大事をとって晩餐会には参加せず、ナナと部屋でゴロゴロして過ごすのだった。

 そして次の日。心配していた熱も出なかったため、ラウ家自慢の庭をラウ家とダルディエ家が総出で散歩をすることになった。目的地は庭先にある離れの屋敷で自然に囲まれて昼食をすることらしい。

「ミリィおいで」
「自分で歩けるよ」
「うん、でも今日は無理をしないほうがいいから」

 体調が悪くなることを気にしてディアルドは言うが、私も少しは歩きたい。けれど確かに体調は万全ではないようなので、仕方なくディアルドに抱っこされる。ディアルドと二人で並んで歩きたかったのか、オリビアが残念そうにしている。

 途中で小川に橋がかかっているところを渡る。

「ディアルド! 川覗いてみて! 魚いる?」

 ディアルドの腕の中から川を覗くと、小さな魚が泳いでいるのを確認できた。ここは夏に川遊びができそうである。水着を売り込んでみるかと思案する。
 そういえば、明日は海側にあるアカリエル家の持つ屋敷へ行くと言っていた。もしかしたら、そこでは海に入ることもできるかもしれない。

 自慢の庭ということもあり、春の花が綺麗に咲いていた。確かに散歩するにも目が楽しくていい。

 それから昼食をし屋敷へ戻ってくると、兄たちとルーカスは馬乗りに出かけるというので、一緒に連れて行ってと言ったが、体調を見て却下されてしまった。ふくれっ面をしていると、ママは苦笑して私を慰めるのだった。

 次の日、二時間ほど馬車に乗り、海側にある屋敷へやってきた。屋敷のある敷地内には、プライベートビーチまである。まだ水着には早い時期ではあるが、気分は上がった。ジュードと水着販売の戦略を話すことも忘れない。それからまだ海水は冷たいが、足だけ海水に付けて遊ぶという双子とルーカスに、私も連れていけとお願いした。ディアルドやジュードはいい顔しないが、双子は軽く了解してくれた。ただし、私は足だけでも海水に付けてはダメと言われてしまったので、双子が交互に抱き上げてくれた。双子やルーカスが暴れまくるので、抱かれているだけの私も楽しかった。

 それからその日は海辺の屋敷で一泊した。ジュードとベッドに入りながら、海の波の音が心地良く、次の日も穏やかに目が覚めた。

 朝食を終えた後、みんながおしゃべりに夢中になっている中、私はナナとバルコニーから海を眺めていた。カモメが飛んでいて、前世と風景が似ていると思っていると、隣にルーカスが座った。何気にここ数日、ルーカスとはほとんど会話をしていないので困惑する。

「お前のとこ、兄がたくさんいていいな」
「ありがとう。ルーカスもお姉さまたくさんいていいね」
「よくないよ。女なんて、たくさんいても煩いし泣くし面倒だし。剣術や体術の話もできないしつまらない」
「そ、そう? ミリィも女だけど……」
「うん、お前もつまらなさそう」

 こいつ。殴りたい。

「お前全然歩きもしないじゃん。兄に抱かれてばっかり」
「だ、だって……」
「うちの姉より弱そう。ああ、あんな弱そうに見えて気は強いんだ、うちの姉たち」

 最後は声を落としてルーカスはつぶやく。

「ミリィは……すぐに熱が出るから」
「歩きもしないからだろ。そんなんじゃ体力も落ちるって」

 た、確かに。いや、この旅行は特に歩いていないけれど、普段はもう少し歩いている。はず。

「俺ももっと小さいころは風邪ひきやすかったりしたけどさ、騎士団で訓練しだしたら体力付いて、あんまり風邪ひかなくなったよ」
「騎士団?」
「うん。東部騎士団。お前のところにもあるだろ、北部騎士団が。この前、新しい剣作ってもらったんだ! かっこいいんだよ!」

 ルーカスの目はキラキラしている。

「剣術や体術って楽しい?」
「楽しいよ! お前もすれば? うちの姉は絶対嫌だって言うけどな。女も体力つけたほうがいいよ」
「……体力付けたら、病気に罹らないようになる?」
「俺はそう思うけど? あ、屋敷に帰るみたいだ、行こう」

 パタパタと走っていくルーカスを目で追う。同じ年の幼い子に教えられてしまった。

 確かに、体調悪くなるから心配されて、できるだけ運動しないよう抱っこされて、動かないから体力がつかなくて、体力がないから体が弱くなって、と悪循環になっている気がする。私の身体が弱いことは間違いない。けれど、体力付ければ、今よりは体が強くなるのではないだろうか。

 両親や兄たちを説得するのは難しいが、少しずつでもいい、体力を付けるために体を動かすことを生活に取り入れていこうと決心する。

「ナナ、行くよ」

 決心したことで少し気分が上がりながら、両親の元へ向かうのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。