七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 102話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 102話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」102話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 102話

 ダルディエ領に帰り、久しぶりにパパやママと会って嬉しくて、相変わらず仲のいい両親の邪魔をしまくって甘えたのだが、二人とも嫌な顔せず甘えさせてもらった。二人が椅子に並んで座っていても、私が行くとパパがいつも横にずれて間に入れてくれるのである。分かってますね!

 私たちに遅れること数日、エメルも帰郷した。ダルディエ家は全員勢ぞろいで賑やかになった。

 そして領に戻っても休まずカロディー家へ仕事に向かうディアルドについていった。三女のユフィーナの状況が知りたかったからである。

 二年経っても長女と次女は相変わらずであるが、三女の勉強やマナーレッスンなどは順調だった。カロディー領には女性の学校があるので、現在はそこに通っているらしい。そして今の目標は、十六歳になったらテイラー学園に入る事である。三女はシオンと年齢が一緒なので、もしかしたら二人はいつか同じ部屋で講義を受けている可能性もある。

「ユフィーナさま、今もマナーレッスンはされていますか?」
「ええ。今はマナーも分かってきましたし、前ほどの時間を割いてはいませんが、今でも時々先生に来ていただいています」
「やはり失敗すると扇子で叩かれたりは?」
「ええ、初めの頃はありました。最近はありませんが」

 やっぱり叩かれるんだとがっかりする。ある程度マナーを覚えるまでは、我慢するしかないのだろう。

 三女の今後の目標は、三女がテイラー学園に入る前までに長女と次女から屋敷の管理の権利を奪い、カロディー家から二人を追い出すことである。テイラー学園に三女が行ってしまえば、ここの家に住むのは長男だけになってしまう。その時に長女や次女の影響がない環境を作りたいらしい。もう前の自信なさげな三女はいなかった。この三女なら有言実行してくれるであろう。

 楽しい時間というものはあっという間で、冬休みは明け、私や兄たちは全員帝都へ戻った。次に両親に会うのは、両親が社交界シーズンになり帝都へやってくる頃になるだろう。

 休みに入る前の日々が戻り、家庭教師の勉強、マナーレッスンなど忙しい日々を送っていた。やはりマナーレッスンが苦痛であるが、扇子で打たれるたびに、なかなかマナーを覚えられない自分が恥ずかしくなるのだった。前世で普通の家庭であった私は、マナーを気にする生活をしたことがない。貴族のマナーなんて、ここで初めて習うこととはいえど、他の貴族は覚えているのだから、私にできないはずはないのである。マナーの先生は同じところばかり打つので、内出血になってしまっていた。そこに痛みが走るたびに、まだマナーを覚えきれない自分に悔しくなるのだった。

 ただそうはいっても、いつもマナーばかりではおかしくなりそうなので、テイラー学園へ遊びに行ったり、皇宮へ遊びに行ったりして気分転換をするのだった。

 そんな中で、家庭教師のおじいちゃん先生は私にとって癒しである。いろんな疑問を分かりやすく教えてくれるし、間違った答えを出しても絶対に怒らない。適度に休憩を入れてくれるし、その時に面白い話もしてくれるのだ。家庭教師の先生は週に三日だが、この先生なら毎日でもいいくらいである。

 マナーの先生は週に二日なのだが、前に叩かれたところを再び叩くので青タンや内出血が消えないし、強い口調の言葉攻めもある。

「こんなこともできないなんて、公爵家として恥ずかしい限りですわ」
「お辞儀の角度が違いますわ! 何度言っても分からないなんて、公爵や公爵夫人が甘やかしすぎですわね」
「お兄さまは立派なのに、同じ兄妹でも差がありますわね」

 などなど。ちょっと泣きそうである。嘘である、ちょっとどころか何度もこっそり泣きました。

 いつも公爵家や両親や兄を引き合いに出してくるのだ。別の人間なのだから、間違ったなら私自身を怒ってくれればいいのに、どうして両親や兄がそこに出てくるのか。

 ただ貴族社会としては、間違っていないのだろう。地位があるからこそ、失敗すれば両親のせいになるだろうし、だからこそマナーレッスンを受けるのだ。
 公爵家として恥ずかしいことをするのは嫌だ。両親や兄に私のせいで嫌な思いをさせるのも辛い。だから歯を食いしばって辛くても頑張るのである。

 だから強い口調の言葉攻めは、将来起こるかもしれない貴族同士の裏を探り合う会話にでも役に立つという気持ちで耐えている。

 そんな感じで精神的に弱っていた時、追い打ちのようにやってきたのは悪夢である。相変わらず十日に一度ほどは見るのだが、基本的に見る悪夢は毎回同じである。いくつかの殺される場面を、同じ構図で見るのだ。けれど、この日は少し違った。結婚式で殺される場面、本来なら胸を撃たれるのだが、その前に腕を撃たれたのである。腕を撃たれたくらいでは簡単には死ねず、痛い痛いと腕を押さえてのたうち回る。あまりにも痛くて、エメルに起こされた時は腕を押さえて泣いていた。私があまりにも痛がるから、エメルは私の服の袖を上げた。

「これ、どうしたのです?」

 そこにはマナーの先生に叩かれた内出血の痕があった。毎回同じところを打たれるため、ひどい青タンが広がっていた。

「あれ? 撃たれてない」

 なぜか銃口の痕があるような気がしていたので、びっくりする。結局、銃で腕を撃たれたのか、先生に叩かれたのか、まだ夢うつつで混乱していたのだろう。精神的に弱っていたことが夢に影響したのかもしれない。

 私が泣き止んで落ち着くまでエメルは抱きしめて待ち、それから私に質問するのだった。

「それで、これは誰にやられたのです?」

 あ、顔が怖い。うちの兄たちは、シオン以外は笑いながら怒るタイプが多いようだ。

 自分で転んだと言おうかとも思ったが、内出血や青タンの具合が一部治っているところもあり、それは繰り返し何かが起きたことを意味するものである。エメルに誤魔化すのは難しそうだった。

 仕方なくマナーの先生に叩かれたことを話した。正直、叩かれたことは私が不出来であるという証明なので、恥ずかしくて言いたくなかった。けれど一つ話すと先生が怖いことがよみがえってしまい、結局泣きながら全部話してしまった。内出血としては腕が一番酷くて、次は太ももであるが、太ももはスカートやペチコートがクッションの役目をしていたのか、そこまで酷くはない。

 結局エメルに話してしまったので、きっとエメルは先生に抗議してくれるだろう。それを先生が逆恨みして、失敗した時の躾が巧妙になると嫌だなあと思っていたら、マナーの先生は解雇されていた。

 私がエメルに告げ口した次の日、学園が終わった後、兄たちが全員帰ってきたのである。休みでない日に戻ってくるのは珍しいと思っていたら、兄たちに内出血を披露する羽目になったのである。不出来な私の公開処刑かな、と思っていたら、エメルから話を聞き、どれだけ先生にひどいことをされたのか確認にきたらしい。

 確かに内出血はひどい。しかしカロディー家の三女も言っていたが、マナーレッスンでの躾は一般的なはずである。扇子で叩かれたり、お尻を叩かれたり色々ある。前世であれば体罰だと言いたいが、現世ではそうでもない。

 しかし私の腕を見た後の兄たちは怖かった。私が怒られているわけではないのに、怖かった。その後急きょ兄会議を開いていたが、どういう結論に達したのか分からないが、私にはマナーの先生を解雇することだけ教えてくれた。ただ兄たちの表情を見ると、先生は解雇だけですんでいないと思うのだった。先生の名前は一度聞いたが、貴族名に詳しくないため、あまり覚えていない。ただ貴族といえど位はあまり高くないだろうことは分かる。もしかしたら、もう二度と社交界へは戻ってこれないくらいのことを兄たちがしている可能性もあるが、私には知る由もない。

 それからしばらくして、後任のマナーの先生がやってきた。今度は若い先生で、テイラー学園を卒業したばかりの人だった。すごく温和な人で、優しく教えながらも、間違えればきちんと指摘してくれる。そして叩いたりなどは一切ない。体罰がないため失敗することに恐怖感がなくなったからか、逆にマナーを覚えるのが早くなった。間違えることも少なくなり、今のところ順調である。

 その後、しばらくして内出血が消えかけてきた頃、ディアルドが言った。

「うちではああいう手出しは認めていないからね。ミリィの体を傷つけたことは正直万死に値すると思っている。けれどまあ、向こうにも言い分はあるだろうから、二度と顔を見ずに済む処分までにしておいた。ただミリィにお願いがあるんだ。今回はエメルが気づけたから良かったものの、俺たちがミリィを傷付ける者に気づけないこともある。だから今後は少しでもミリィに何かする者がいたら、真っ先に俺たちに言うんだよ」
「う、うん」

 色々とツッコミどころ満載だが、有無を言わさない笑顔が怖いので頷いておく。

「それとね、ミリィが何か失敗しても俺たちが困る事はなにもないからね。何かあってもすぐに俺たちが対処してあげるから、心配事があるなら、俺たちに言うんだよ」

 それは私が失敗すると両親が恥ずかしい思いをするとか、マナーの先生が言っていたことを言っているのだろうか。つまるところ、私が表舞台で何かやらかそうが、事件を起こそうが、裏で揉み消しますと言っているのか。兄の思考がちょっと怖い。

 本気でマナーの先生を怒っているということなのだろう。
 たぶん、ディアルドの言いたいことは、大抵の私の失敗は許してくれる、そう言いたいのだろうと思うことにする。

 ディアルドがこうなのだ、ジュードやシオンなんかも頭にきているだろう。
 ただ単純に兄たちがシスコンで喜べばいいだけかもしれないが、私はそこまで単純になりきれない。できるだけ兄たちを私のことで怒らせないよう、何事も起きなければいいなと思うのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。