七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 99話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 99話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」99話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 99話

 卵から生まれた猫を騎士団で世話をして十日、やっと目が開いた猫の瞳は綺麗な空色をしていた。名前はナナと名付けた。命名センスのない私にしては、まあまあの名前だと思っている。

 ナナは完全に私をママだと思っていて、私が屋敷から騎士団へやってくると、愛らしく鳴いてすごく可愛いのだ。もう完全にメロメロ状態の私である。

 猫好き仲間のママにナナの話をしたところ、屋敷にやってくるのをとても楽しみにしてくれている。

 ナナを保護してから、ずっとパパの様子が変だなと思っていたが、その理由については、今目の前にいるネロから説明を聞こうとしていた。
 今いる場所は、騎士団でのパパの部屋で、ソファーには私、パパ、双子、そして私の足元にナナ。ネロは向かい側に一人で座っている。

「今日はお嬢の天恵の話をするよ」
「天恵って、シオンの耳のアレ?」
「シオン坊ちゃんの場合はそうだね。でもお嬢のは通称、動物遣いというんだ」
「動物遣い……」
「今まではお嬢には天恵はなさそうだという判断だったんだけれどね、先日ナナの卵を見つけたこと、それにナナを孵化したこと。これは動物遣いしかできないことなんだ。だからお嬢は動物遣いの天恵持ちだと確定したんだ」

 ちらっとパパを見ると、頷きが返ってきた。

「今までお嬢は天恵の話をほとんど聞いたことないよね。だから簡単に説明をしておこうか」

 天恵とは、人によってその能力は様々だが、動物遣い、耳、透視、怪力、テレパシー、念力などといった力のことをいう。前世のイメージでは魔法ではなく、超能力に近いだろう。天恵の力を持って生まれるのは、最近ではすごく少ない。ほとんどの人は天恵を持たずに生まれてくる。そのために天恵の存在を知らない人も多く、だから不思議な能力として認識されている天恵は、人に忌み嫌われる傾向にあるという。

 しかし、大昔には逆にほとんどの人が何かしらの天恵を持っていた。だから天恵は別名、先祖返りという名が付いている。

 そしてナナの存在自体が先祖返りだという。また三尾や一角も先祖返りである。一般的な動物と少し違う形態で生まれる彼らは、これまた大昔の話だが、昔はたくさんいたらしい。ただどういうわけか絶滅してしまった。ところが完全に消滅してしまったのではなく、ナナのように化石化した卵から生まれるというのだ。

 先祖返りの動物が生まれる化石は、少し前までは自然に孵る以外で卵から孵化することはないと思われていた。

「北部騎士団にいる三尾や一角は、元は自然に孵化したものを拾ってきた子たちなんだ」

 ところが、百年ほど前にアカリエル公爵家の血筋に、動物遣いの能力を持つ者が生まれた。その動物遣いはもう亡くなっているが、当時、私がやったように先祖返りの卵を見つけたり、孵化させたりができたらしい。

「まさかお嬢が動物遣いとは思ってなかったけれど、今考えれば、そういった兆候はあったのかもしれない。例えば普通の猫や馬はお嬢をじっと見ることが多いよね。あれはお嬢のことが気になってしょうがないんだ。動物遣いは、先祖返りの動物関係なく動物に好かれるから。子供好きな三尾はともかく、気難しい性格の一角なんかもお嬢には最初から優しかったよね。あと極めつけはアレだよ」

 何を思い出したのか、ネロはぷるぷるっと震えた。

「ザクラシア王国の王宮の番犬! あれなんかお嬢に腹見せてたもんね! 俺には殺気丸出しだったのに」

 番犬? 獰猛な犬がいると言っていた話だろうか。

「そんな危険な犬、ミリィ見てないよ? 人懐っこい犬はいたけれど」
「うん、それが番犬なんだよ。俺には狂暴だったんだから」
「えええ?」

 そんな風には見えなかったけれど。

「ね、お嬢は動物に好かれるから気づかないんだ。というより、俺もあそこでなんか変だとは思ったんだから、お嬢が動物遣いかもって気づけばよかったんだけれど」

 とにかく、私は動物遣いという天恵を持っていることは分かった。確かに動物にじっと見られることが多かった。ただそれは赤ちゃんや子供が珍しいからだと思っていたが。

 話を先祖返りの動物の話に戻す。
 先祖返りの動物は、全て卵から孵る。ただ見た目は岩や石であり、どこにその化石が転がっているかもわからず、偶然に見つける以外見つける方法はない。また驚くことに、先祖返りの動物は、全て雌雄がない。

「え? でも三尾には三尾パパと三尾ママがいるよね? 三尾三兄弟の親でしょ?」
「そうなんだ。これが動物遣いのなせる業でね」

 どうやっているのかは分からないが、動物遣いが接することで、つがいができるらしい。いつのまにか雌雄のなかった動物が雄と雌に性別が別れ、つがいとなると子供が生まれるらしいのだ。

 現在アカリエル公爵の関係者で、動物遣いがいるらしい。その人がブリーダーのような能力があるのだという。以前、その人を北部騎士団へ招いたところ、二匹いた三尾がつがいとなって三兄弟が生まれたのだ。

「ほえー。動物遣いっていろんなことができるのね」
「そうだね。ただ能力も人それぞれなんだ。例えば」

 現在ブリーダーの能力がある動物遣いは、化石を発見する能力はない。たとえ目の前に先祖返りの化石があっても見つけることができない。ただ化石を孵化させる能力はある。しかし、もう亡くなった動物遣いには、化石を発見する能力と孵化する能力はあったけれど、ブリーダーの能力はなかった。そのように、同じ動物遣いでも出来ることと出来ないことがあるというのだ。

「でも能力は伸ばせるのでしょう? シオンが訓練しているものね」

 シオンの天恵は、元は耳の能力だった。幼い時からできていたのは、人に触れていると心の中で思っていることが聞こえたり、髪などの他人の一部を持っていれば、その人の心の中で思っていることが聞こえた。最初からできたのは、相手の心の声が聞こえるだけで、自分の声を伝えるすべはなかった。

 ところが、アカリエル公爵家で訓練することで、人に触れていたり他人の一部を持っていれば、自分の声も伝えることができるようになった。つまり会話ができるようになった。また傍で寝ている人の夢に干渉もできるようになり、また最近では、他人の一部を持っていれば、遠く離れた人の会話も聞いたりできる。要は盗聴である。他にも訓練しているそうで、私が知らない能力も持っているだろう。

 そのように、天恵持ちは訓練さえすれば、元の天恵を超えた能力を得やすいのだ。つまり天恵持ちではない人は、どれだけ訓練しても天恵は持てないが、元々天恵持ちであれば、訓練次第で能力を伸ばし放題ということである。

「そうだね。公爵が心配しているのも、そこなんだ」

 パパを見ると、隣に座っていた私を抱えて膝に乗せた。

「ミリディアナには、訓練はしてほしくないんだよ」
「どうして?」
「訓練は精神的にも体力的にも、すごく弊害があるんだ。あの元気が有り余っているシオンでさえ、訓練は苦しいと言っている。ミリディアナは体が強いわけではないだろう。これ以上、ミリディアナの健康が害されることはしてほしくない」
「……うん」
「ミリディアナが心配なんだ。いつも元気でいてくれないと、私もフローリアも悲しい。分かってくれるか?」
「うん」
「訓練はしないでほしいけれど、自然に使ってしまう動物遣いの能力は使ってもいいからね」
「本当?」
「自然に使ってしまう能力を、使わないようにするには訓練するしかないしね。それでは本末転倒であるし。ミリディアナは動物が好きだろう。いつもどおり動物と戯れるくらいは問題ないよ」
「それって、いつもみたいにナナや三尾や一角と遊んでもいいってことだよね?」
「そうだよ」

 だったら、私からは何も文句はない。訓練さえしなければいいのだから。
 私の返事に、ほっとした顔をしたパパは、ナナを保護した時から心配だったのだろう。私が天恵持ちなら、シオンのように訓練すると言い出すのではないか、訓練で怪我でもするのではないか、訓練することでさらに病気がちになるのではないか、など。

 いつも心配ばかりかけているのは分かっている。だから、パパの許容する範囲で、動物遣いの能力を使えばいいのだ。私だって、みんなに心配かけるのは不本意ですもの。

 そして天恵の話は終わり、双子とネロは部屋を出て行った。私はナナと遊んで過ごすのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。