七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 96話 ディアルド視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 96話 ディアルド視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」96話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 96話 ディアルド視点

 昼食後、生徒会室へ寄り少し仕事を片付ける間、同じく生徒会役員のジュードが妹をずっと抱えていた。ジュードとミリィが並ぶとそっくりだと、他の役員とわいわいしていた。
 それからジュードが妹を連れていくというのを阻止し、またディアルドと午後の講義を一緒に受ける。

 そして最後の講義が終わり、課題提出のために先生のところへ行く間、妹は廊下で待ってもらっていた。課題を提出して廊下へ出ると、妹は三人の女生徒に囲まれていた。なにやらその雰囲気が良いものとはいえず、さっと妹を抱え上げた。

「何か用ですか」
「な、何でもありませんわ!」

 慌てて三人は去っていく。知った顔の女生徒だが、ディアルドは好きではなかった。

「何かされた?」
「ううん。大丈夫」

 じーと妹の顔を確認するが、怖がっている風ではない。とはいえ後で確認しなければ。
 その後、伝書バトにて家に迎えを寄越すよう連絡し、生徒会室へ向かう。

 まだ誰もいない生徒会室で、お茶とお菓子を用意する。チョコレートを口に入れる妹の横に座った。

「さっきの三人に何を言われたの?」
「えっとねー、ミリィをお茶会に呼んでやるから、ディアルドと来いって言ってたよ」

 ディアルドは眉を寄せた。急きょ参加することになったお茶会の件を誰かに聞いたのだろう。以前あの三人の中心にいた女生徒にお茶会に招待されたが断ったのだ。けれど、昼間の件で妹が参加したいと言えばディアルドが参加するらしいとでも、噂になっているのかもしれない。

「行かないって言ったら、怒っちゃった」
「あんなの、気にしないでいいからね」
「うん、大丈夫」

 本当に妹は気にしていなさそうなので、この話はここまでにしておく。とはいえもう二度と、あの三人の主催するお茶会に参加することはないことが確定したが。

「お昼のお姉さんのお茶会ね、栗餡があるって言ってたね!」

 栗好きな妹は、マロングラッセやマロンケーキが好物なのだ。栗餡を想像するだけで笑み崩れている。

「そうだね。だけど餡子はミリィは食べたことあった?」

 はるか遠い東の国、トウエイワイド帝国のお菓子は、ディアルドさえ数回ほどしか食べたことがないのである。

「あ」

 ミリィは少し困惑の表情で何かを口にしようとするが、また口を閉じる。

「どうした? 言いづらい?」
「うん……変な子って言わないでね?」
「言わないよ」
「……前世でね、餡子好きだったの」
「前世で?」
「今は食べたことないんだけれど、前世で好きだからたくさん食べたの。だから想像すると美味しい味を思い出すというか」
「なるほどね。じゃあ思い出と今回のを食べ比べしてみないとね」

 ぱっと笑った妹は、「思い出すとヨダレがでるの」とにこにこしている。可愛い。

「ミリィ」
「うん?」
「これからも前世の話は、俺たちには言っていいんだよ。誰も変な子とは思わないから。それよりも隠されると、ミリィが困っているのかと思って心配するからね」
「……うん!」

 誰も変な子なんて思わないのに、嫌われるかもしれないという恐怖があるのだろう。そんなことは絶対にないと、妹が気にしなくなるまで俺は言い続けようと決心する。

「それと気になったことをもう一つ」
「なあに?」
「ミリィは国外の言葉、全部理解できるのかな」
「あ、そうなの! それ言おうと思ってたの。ただ前世の記憶があることとは関係ないとは思うのだけど」
「どういう意味?」
「前世では、自国の言葉しか分からなかったよ。英語とか勉強したもん」

 英語? 外国語のことだろうか。

「前世の記憶があることと関係はあるんじゃないかな」
「どうして?」
「ウィタノスに殺された後に転生した場合は、いろんな国の言葉が理解できる可能性もある」
「……あ! そう言われると、そうかもしれない」

 これまで見た殺された夢を反芻でもしているのだろう、考え込んでいる。

「まあ言葉が分かるのは、便利なだけで不便になるわけではない。何も気にする必要はないと思う」
「そうかな?」

 それから国外の言葉が分かることについては、ディアルドがジュードとシオン、ミリィが帰ってから双子とエメル、父上に話すこととなった。

 それから迎えの馬車と護衛が着いたため、ミリィを屋敷へ帰した。

 週末。
 自身の用事を済ませ、ミリィと共に予定のお茶会へ向かう。

「ようこそいらっしゃいました、ディアルドさま、ルカルエムさま」
「遅れて申し訳ない」
「まだ始まったばかりですわ。お気になさらないで」

 温室の中に用意されたテーブルにずらりと学園の知った顔が座っている。
 初めは席が決まっているようだが、のちにいろんな人と会話を楽しめるよう立食式にするのだろう。

 テーブルから少し離れたところで、トウエイワイド帝国の菓子職人がすばらしい技を披露していた。招待してくれた令嬢が話していたように、花や鳥、りんごの形など、器用に餡子で作っていく。提供する分はもともと作っていたようで、今作って見せているのは目で楽しませるためだろう。

 目の前に置かれた和菓子を一口食べた妹は、「おいしーおいしー」と小声で言いながら、とろけた顔をしている。その表情が可愛くて、ついこちらも笑ってしまう。
 餡子の説明で、栗餡、芋餡、大豆餡、小豆餡などが紹介されていた。砂糖の甘さだけではなく、使われている素材の甘みが感じられて確かに美味しい。小さめの餡子を一通り食べ終わると、あとは好きなものを言えばお代わりができる。

「栗餡と芋餡……おかわりしていい?」

 食べすぎるとお腹を壊す妹が心配ではあるが、ここで駄目だと言えば、それはそれでしゅんとするだろうから駄目とは言えない。

「少しならね。たくさん食べすぎてはだめだよ」
「うん!」

 お菓子の一つ一つは大きくないので、少しくらいなら大丈夫だと判断する。
 それから途中で立食式へと変更し、みな思い思いに話し出した。ディアルドも話しかけられ、妹には座って席を動かないように言い含める。本人は栗餡に夢中なので、二つ返事だったが。

 途中でグレイが話しかけてきた。

「ディアルドは弟には甘々だなー。新しい発見」
「俺は誰にでも優しいと思うけれど」

 しれっと返す。

「表向きはなー。みんなその笑顔に騙されていると思う」
「グレイも人のことは言えないだろう」
「俺のは本当の笑顔だもん」
「その裏に何を隠しているのやら」

 グレイとは付き合いが長いからこそ、知っていることも知りたくなかったこともある。

「今回ルカを利用して、うまくディアルドを引っ張り出せた、みたいな噂になってるよ」
「みたいだね。この手は二度目はないよ」

 今後ミリィが欲しがるなら、餡子くらい用意してあげられる。
 今回はたまたまこうなっただけで、今後ディアルドが関わる事で妹を利用しようとする者がいるなら、それ相応の対応をする予定だ。今回だけが例外である。

「それにしても、にっこにこして食べて可愛いな。ディアルドでなくとも、あれは可愛がるわ」
「そうでしょう」

 ディアルドが食べすぎるなと言ったものだから、ちびちびと小さく切りながら食べている姿が、またいじらしくて愛らしいのだ。自由奔放な弟をたくさん持っていると、余計に素直な子が可愛く見えるというものである。

 その後お茶会はお開きとなり、なんと主催の令嬢がミリィに栗餡のお土産を用意してくれた。ディアルドに向けての何かの働きかけの意味もあるだろうが、喜ぶミリィを見れたので、正直今度この令嬢にお礼をする気にはなった。

 帰りの馬車の中で、妹が栗餡の箱を開けたいというので、開けていいよ、と許可すると、栗餡を一生懸命数えていた。

「二十個もある!」

 嬉しそうな妹には可哀そうだけれど、一応釘をさしておこう。

「全部ミリィが食べてはだめだよ」
「え!?」
「一度に全部食べるとお腹が痛くなるかもしれないでしょう」
「毎日ちょっとずつ」
「腐るから、三日以内には食べようね。そうするとミリィ一人では食べきれないでしょう」

 ショックを受けた顔で固まった。

「……パパとママとアルトとバルトとエメルにも、あげるぅ」
「そうだね」

 少し半泣き気味である。そんなに美味しかったのか。

 腐ったものを食べてしまう可能性のほうが怖い。一応、屋敷に帰ってから家のものにも伝えよう、そんなことを決心するのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。