七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 94話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 94話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」94話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 94話

 ザクラシア王国から帰国し、ディアルド、ジュード、シオンは帝都へ帰っていった。
 ところが、それを追うように、両親、私、双子も帝都へ向かうこととなる。というのも、私が誘拐されたことでママが少し不安定になり、また間もなく社交界シーズンが始まることもあって、気分転換の意味合いも込めて早めに帝都入りすることとなったのである。

 私の恰好はというと、ママに心配かけたことを反省し、しばらくは男装はやめて女の子の恰好で過ごしていた。髪の長さが肩あたりで短いため、髪の毛は私の髪質のカツラを着用している。

 上の兄三人は帝都に戻ると同時に寮へ戻り、その時にエメルは私が誘拐されたことを知ったらしい。それまで誘拐自体を知らなかったエメルはショックを受けていたという。
 自分だけ知らないなんて、それはショックだと思うし、久しぶりにエメルとも会ったということで、少しでもそのショックを和らげるつもりで帝都ではエメルと一緒に添い寝することが多かった。

 ショックといえば、私も帝都でショックを受けることがあった。
 カイルが引越しし、住む屋敷が変更となったらしい。しばらく住むところに変更がないからと、エメルと一緒に屋敷においでと招待された。エメルと馬車に乗りカイルの屋敷を目指すうち、途中で皇宮の敷地に入った。

 皇宮自体には行ったことはないのだが、遠くから皇宮の敷地は見えるし、パパやママも度々行っている。
 だから敷地内に入る事に特に思うことはないのだが、なぜカイルの住む屋敷が皇宮の敷地内にあるのだろうという疑問はあった。

 エメルの説明によると、『皇宮』というと敷地内全てを指すのだという。その皇宮の敷地内にいくつも宮殿があり、皇帝の住む宮殿、皇妃の住む宮殿、皇太子の住む宮殿、政治の中心であり文官等の集まる宮殿、さまざまな会議を行う宮殿、晩餐会や舞踏会などを行う宮殿など、小さなものも含めれば二十ほど宮殿があるのだという。宮殿とは別に武官の練習場や侍女など使用人の住まう寮など皇宮内の建物は多い。だから皇宮は普段から人の行き来が多いのだという。

 ただ区間別に分けられており、特にその中でも皇族の住まう宮殿は厳重に管理され、誰でも行き来ができるわけではない。私の乗った馬車は、その厳重に管理されている区域へ進んでいった。途中で何度か門番のチェックを受けるのである。

 そして、とある宮殿の前に馬車が止まると、エメルに手を引かれて中へ入った。宮殿の中では騎士や使用人とすれ違うが、誰もエメルを止める者はいない。それからとある部屋の中にエメルが入ると、そこには久しぶりに会うカイルがいるのだった。

「カイルお兄さま!」
「ミリィ!」

 私はカイルへ突進し抱きついた。

「いらっしゃい」
「お招きありがとうございます」

 お菓子とお茶を三人で楽しんでいるところで、カイルが口を開いた。

「ようやく側近が決まってね。住まいもしばらくはここで動かないと思うから、ミリィを招待できたんだ」
「側近?」
「エメルがそうだよ。あと数名いるけれど、いずれ紹介するね」
「うん? ……側近って、なんの側近?」
「俺のだよ。まだミリィには言ってなかったね。俺は皇太子なんだ」
「……」

(皇太子ってなんだっけ。皇帝と皇妃の息子だっけ。うん。……ん?)

 手から掴んでいたクッキーがぼとっと落ちた。

「カイルお兄さまが皇太子?」
「そうだよ」
「皇太子って、ミリィの知っている皇太子であってる?」
「たぶん、合ってると思う」

 ちらっとエメルを見ると、言えなくてごめんね、といいたげな表情をしている。

 ちょお待て。うそでしょ。ヴィラルがザクラシア王と知った時より衝撃が大きい。
 これまで私がカイルに何かしでかしていないか、急に不安になる。まさか今までのこと全て、不敬だとか言われて監獄に入れられたりしないよね?
 だらだらと汗がふきだした。

「ミリィ?」
「申し訳ありません」
「え?」
「もうしません」
「何を!?」
「ミリィが勝手に抱き着いたから、怒られるのでしょう?」
「怒らないよ!?」
「でも……カイルお兄さまって言ったから、馴れ馴れしいって騎士に連れていかれない?」
「いかれないよ!」

 じゃあ他に何してしまったかな。あれかな? パンツを無理やりはくよう勧めたこと? お菓子をあーんしたこと?

 パニックになり頭がぐるぐるしだしたところで、カイルが慌てて席を立って私の側へ寄ってきた。

「ミリィ、何か変なこと考えてない? 俺はミリィを処罰しようとか全く思ってないよ! 今まで皇太子だと言えなかったことを、ミリィにも知ってほしかっただけなんだ。ミリィと俺は、今まで通りでいいんだよ」
「今まで通り?」
「そう、今まで通り。俺はミリィのお兄さまだよ」
「……抱き着いても怒らない?」
「抱き着いてくれないと、俺が寂しいじゃないか」
「……よかったぁ」

 ほっとしてカイルの首に手を回した。

「もう妹はお役御免って言われるのかと思った」
「言わないよ。もっと会いたくてここに招待したのに」

 カイルは今まで別の宮殿に住んでいたという。そこでは、カイルの側近候補となる貴族の子息が集められ、今までその資格があるのか、一緒に勉強や試験、いろんな取組を行い、十名いた側近候補は、この度四名で確定したのだという。それから拠点をこの皇太子宮へ遷した。

「今までミリィと会おうにも、ホテルとか離宮とかを使っていたけれど不便だからね。もう当分引越しもないし、ここなら俺の思い通りにできる。だからミリィに会いに来て欲しいんだ。俺はミリィの屋敷に行くのは、なかなか難しいから」

 確かに皇太子という身分のカイルが、おおやけに度々ダルディエ邸へ来るのは難しいだろう。また皇太子の身分であれば、まだ十才とはいえ皇族の仕事で忙しいとも思う。

「うん、わかった! 会いに来るね!」

 まさかカイルが皇太子だとは驚いたけれど、今まで通りでいいと皇太子本人が言うのだ。カイルは私の兄のままであることに、ほっとする。

 のちに、カイルが皇太子だということは、私以外の兄たち全員知っていたことにショックだった。知らなかったのは私だけである。エメルが私の誘拐を知らなくてショックだったことの気持ちが分かるのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。