七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 92話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 92話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」92話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 92話

 目が覚めた私の左右には、双子が同じく目覚めて伸びをしていた。
 昨日はあれから近衛兵やママの弟シャイロがやってきて、私たちはパパたちが寝泊まりしているホテルに戻ってきたのだ。ホテルに戻ってきたのは空が明るくなり始める頃だった。兄たちが私と添い寝する役を話し合い、双子がその役となったのだ。

 私があくびをし終わると、なぜか指を人差し指だけ伸ばした状態の双子がにやりと笑っているのに気づく。あ、この指は。
 脇腹やら、腰やら、首やらをツンツンされ、笑ってしまう。やめろ、くすぐりは弱いんだ。
 双子と三人できゃあきゃあと笑っていると、開けた扉からディアルドが顔を出した。

「楽しそうだね。起きたなら顔を洗っておいで。食事にしよう」

 起きてみると、すでに昼過ぎであった。双子はともかく、王宮でも寝ていたのに、どれだけ私寝てるんだろう。

 朝食と昼食を一緒にいただく。やはり塩味が強い。これはザクラシア王国全体が濃い味なのだろうか。できるだけパンでお腹いっぱいにしようと、焼き立てパンをほおばる。

 私と双子が食事している間、ディアルドが口を開いた。
 私が寝ている間に、色々と動きがあったようだ。

 今朝早くにシャイロが近衛兵を動かし、王宮入りした。その時にパパや兄たちも共に入城している。王族のシャイロの訪問に、違和感のある時間帯だったとはいえ、誰も止めるものはいなかった。大勢の近衛兵を連れたシャイロに驚きはされていても、ほとんど邪魔する者がいないまま寝ていたクォロ公爵を捕縛。

 そもそもクォロ公爵は自分の屋敷があるのだから、そちらで寝ればいいのにも関わらず、王宮に寝泊まりし、あまつさえ後宮を私物化していたらしい。

 私の部屋だと聞いていた部屋はもぬけの空で、部屋の外で私が廊下へ出ないか見張っていた騎士は、可哀そうに兄たちに殺されそうになったらしい。ネロにヴィラルの部屋ではないかと提案され、行ってみると私がいて、ほっとしたという。こればかりは、シオンにでも言っておけばよかったと反省した。

 私たちがホテルに戻ってからもシャイロは動いていた。
 クォロ公爵は国王の殺人未遂で王位継承権をはく奪、これから罪は徹底的に調べ上げ、適した処罰を下すという。毒を飲み続けていたヴィラルは、身体が弱っているものの、シャイロは何とか元気にしてみせると言っているらしい。これにはパパが一言付け加えた。シャイロは絶対に王になどなりたくないために、何が何でもヴィラルを生き続けられる方法を試すだろうと言う。

 私が起きたら、一度王宮を訪問することになっているらしく、夕方前にパパと兄たちと一緒に王宮へ入った。

「ヴィラル!」

 応接室のような場所で、ヴィラルが座っていた。自室以外にいるヴィラルを見るのは初めてである。

「座っていても大丈夫なの?」
「うん、少しくらいなら」

 顔色があまりいいとは言えない。それでもここに座っているのは、私と会うのがこれで最後になるからだという。

「本当に、僕とは結婚してもらえないのかな」

 昨日からこれだ。女と分かるや否や、急に私を好きになることもあるまいし、何なんだ、と思っていたのだが、これはザクラシア王国では普通らしい。

 どういうことなのかというと、まずザクラシア王国の女性、とくに王侯貴族の女性は生まれた時からずっと家にいるのが普通なのだという。家族以外の男性と会うことはほとんどなく、結婚する直前に初めて男の人と会うのだって、良くある話らしい。

 そんな国で男と女が一緒に寝るということは、結婚して責任とらなければならない、というのが、この国の常識らしいのだ。だから、あの発言なのである。

「一緒に寝たくらいで責任とるなんて、思わなくていいのよ」

 後ろでパパや兄の圧があるのは無視する。

「私と結婚する人は、パパやママやお兄さまたちの近くに住んでいる人がいいの。みんなと会えないと寂しいもの。だからごめんね、ヴィラル」
「うん……」

 そんなにしゅんとしないでほしい。ヴィラルにはこれから元気になってもらって、私よりもふさわしい人と結婚してもらいたい。

 それからパパとシャイロの間で、今回の誘拐について色々と話をしていたが、よく分からない難しい話だった。けれど、要は私はここに誘拐などされていない、だから国際問題にもならない。そういった裏の取り決めと、ザクラシア王国にとって、こちらに借りがある、ということで今後色々と便宜を測ったりなど色々あるらしい。私としては誘拐されたなどと噂になるのは困る。貴族は噂があっという間に広がるし、変な想像をされるのも腹立たしい。だから何もなかったで片が付くのは助かるのだ。

 シオンや双子なんかは、クォロ公爵だけは許さないと言っていたが、クォロ公爵についてはシャイロに任せるというパパの決定に不承不承ながら了承していた。

 そして話し合いは終わり、帰ろうとしたところでシャイロに呼び止められた。
 やけに言いにくそうにしていて、なんだろうと見ていると、変なことを言った。

「あなたのご兄弟が、そろそろ酒を飲もうとおっしゃっておられました」

 兄弟? 兄たちを振り向けば、ザクラシア王国の言葉が分かるディアルドなんかは、何言ってんだコイツ、というような目でシャイロを見ている。

「申し訳ありません。そう言えとおっしゃられまして。いいんです、意味が分からなくても。私も伝えたという事実さえあればいいので」

 本当に意味が分からない。シャイロは以前ダルディエ領に来た時も思ったが、変な奴だ。うん。

 この変なシャイロが、今後ヴィラルの後見人となるというので不安であるが、クォロ公爵に対しきちんとした対応をしているのを見ると、変な人だけど有能なのかもしれないとも思う。

 ヴィラルにサヨナラの抱擁をし、私たちは王宮を離れた。今日はまたホテルに泊まり、明日帰国することとなる。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。