七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 90話 ジュード視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 90話 ジュード視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」90話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 90話 ジュード視点

「なんでシオンはいないんだ」

 双子しかいない部屋を見渡し、ジュードは目を吊り上げた。
 ザクラシア王国の王都入りした今日ホテルをとった。良い部屋を取れたものの、護衛のことも考えて、父の部屋、俺とディアルドの部屋、シオンと双子の部屋、と三つに部屋割りをしたのだ。

 ネロが王宮から帰ってきて、父はディアルドのみを連れ、教会へ向かった。ザクラシア王国の言葉が話せるのは、父とディアルドのみである。だから留守番を告げられ、大勢でいっても仕方ないのだが、俺も行きたかったと思う気持ちをぐっと我慢する。影は情報収集に向かっていないし、俺は戦闘になった時のために準備をしていたところ、隣の双子とシオンの部屋から大きな音がしたのである。

 部屋を覗くと、双子が暇を持て余して部屋で体術の鍛錬をしていたらしい。壺が割れていた。そしてなぜかいるはずのシオンがいない。

「シオンは影についてったよ。俺らも行きたいって言ったのに、いつのまにかいなくなってた」
「ずるいよなー」

 頭が痛い。どうしてじっとしていてくれないんだ。
 そして夜中だと言うのに、双子も元気が有り余っている。

「こんな狭いところで鍛錬するな。もう夜なんだから寝たらいいだろう」
「馬ソリの中でさんざん寝たのに、もう寝れないよ」
「そろそろ体動かしてないと、身体もなまるしさ」

 アルトが手を叩いた。

「いいこと考えた!」
「なんだ」
「ジュードが色仕掛けで男をひっかけるっていうの、どお?」
「は?」
「顔はザクラシア産なんだからさ、グラルスティールでモテる以上に男をひっかけそう」
「ああ、いいね! その程度で引っかかる男なら、殺してもいいでしょ?」

 この双子を暇にしてはいけない。余計に痛くなる頭をおさえた。

「俺は普段から色仕掛けしているわけではないんだが」
「わかってるって! 勝手にほいほい引っかかってくるんでしょ」
「俺はひっかけるなら男より女の子がいいなぁ」

 言いたい放題である。

「いいか、とにかく、外に出るのは駄目だ。もう少しで父上たちも帰ってくるはずだから。それに、引っかかった男を殺すのも駄目だ」
「なんだよ、ジュードはいつも半殺しにしてるじゃん」
「そうだよ。二度と使い物にならないようにしてるんでしょ」

 どこをだ。ただし事実だが肯定するわけにはいかないので、話題を変えようとしたところ、シオンが帰宅した。

「どこに行っていた」
「ちょっと情報収集」

 それだけではないのは、シオンを見れば分かる。服のいたるところに血のりが付いていた。

「シオンばかりずるい。俺らだって体動かしたいのに」
「体を動かすというほど、動き回ってないけど」
「何人と遊んだの」
「まだ一桁」

 双子がまとわりつく横で、シオンは血の付いた服を脱いだ。

「風呂って入れる?」

 俺は怒鳴りつけたいのを我慢しながら、風呂を入れるためにホテルの使用人を呼んでやった。
 シオンと共いたはずの影を呼ぶ。

「誰も殺してないよな?」

 さすがにそれはまずい。色々と面倒が増える。

「大丈夫です。シオン様はイライラが溜まっているようでしたので、裏道でやんちゃしていた少年を数人と、女性を襲おうとしていた男と、泥棒しようとしていた男たちを数名あてがっておきました。殺してはいません。大けがくらいです」

 上出来でしょう! というように笑う影にため息つきそうになったが、確かにそれなら上々だろう。それであのシオンの気が少しでもすんだならば。

「それで情報は?」
「すみません、それは別部隊のほうが担っておりまして。俺はシオンさまを……」

 子守だな。

「わかった。ご苦労さま」

 ミリィが誘拐されて、心配しているのはみんな一緒である。それが表に出ているか出ないのかは兄妹の性格の違いだ。今のところ役に立っていないのは、ジュードも同じである。そのイライラをシオンや双子のように表に出さないくらいには、俺も大人になったのだと思う。

 ミリィの声が聞きたい。その点、シオンは連絡が出来ていて羨ましい。

 部屋の外がざわざわとしだした。たぶん父が帰宅したのだろう。
 どういう結果になったのか、話を聞くために俺は父の元へ向かうのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。