七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 88話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 88話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」88話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 88話

 私がザクラシア王国の王宮へやってきた日を入れて三日目、次期王になるための講義を受け、順調に夜になった。もう寝る準備も万端なのだが、まだネロが来ない。シオンに連絡したところ、もうこちらに向かっているということなのだが。

(やっぱり、王宮に侵入するのって難しいんだわ)

 それはそうだ。そんな簡単に侵入できたら、王族など暗殺し放題である。ただネロならば、それでも難なくやり遂げると勝手に思っていた。

 犬と遊んで待ってようと、外に出る。私の気配を察知した犬が五匹全員集合である。そういえば、犬にも恩恵ってあるんだろうか。毛皮で覆われているとはいえ、犬もこの季節は寒いと思う。明日先生に聞いてみよう、そう思っていると、犬たちが一斉に唸りだした。

「どうしたの?」

 犬五匹とも同じ方向を見て警戒している。私も犬が見ている方向を向く。

(もしかして、ネロかな!?)

 そうだ、きっとそうに違いない。だから犬が警戒しているんだと、ネロがいるかもしれない方向から視線をまた犬に戻してギョッとした。

 犬の口の端だと思っていた部分が裂け、口裂け女のような大口となりさらに歯が鋭利になっている。しかも毛は逆立ち、毛の周りに静電気のようなものがピリっとしていた。
 三尾や一角などの変わった動物を見慣れているため、もうこれくらいで驚きはしない。

「だめ! そんな口しちゃ!」

 犬たちは私を見て、また警戒する方へ顔を向ける。

「せっかくのかわいい顔なのに口が裂けちゃ怖いでしょう。ぴりぴりもだめ!」

 ぴりっとする体を撫でると、毛が逆立っているのが少しずつ収まってきている。犬の感心は警戒方面より私に移りつつあるようだ。

「いい子いい子してあげるから、口を元に戻してぴりぴりを止めるのよ」

 きゅんきゅんと声を出しながら、犬の口は元に戻り、逆立った毛も戻った。

「んー、いい子ね」

 しっぽをぶんぶんふる犬を撫でてあげながら、部屋の窓を開ける。そして犬と一緒に窓から離れていると、いつ入ったのか、窓の中からネロが手を振っていた。
 すぐに部屋に入って窓を閉めると、ネロに抱き着いた。

「ネロ!」
「お嬢! 元気そうだねぇ。ほっとしたよ。ケガはない?」
「大丈夫!」
「お嬢を一番に抱けるなんて役得だなぁ。この魔窟に忍び込んだかいがあるってものだね」

 ネロから離れてネロを見る。

「ごめんね、やっぱり忍び込むの大変だった? 怪我してない?」
「元気元気。途中獰猛な犬に何度か遭遇したんだけどね、この通り無事だよ。最後はお嬢がなんとかしてくれたし」
「やっぱり危険な犬がいるのね? クォロ公爵が言っていたの、逃げるなんて思うなって」
「……えっと。ところでお嬢はさっき犬と仲良さそうだったねぇ?」
「うん! かわいいでしょう! いつも撫でてってお腹出してくるのよ。でもその危険な犬と一緒に飼ってるってことなのかな? あの子たちが危ないわよね?」
「うーん……何からつっこめばいいやら。お嬢ならこの城から抜け出せそうな気がするよ」
「え? 今日はミリィこのままお留守番するよ。ネロだけ帰るのよ」
「分かってる分かってる。それよりお嬢、薬は?」
「そうでした」

 机に向かうと、引き出しを引っ張り、中から回収した薬を取り出した。一昨日の一回分、昨日の二回分、今日の二回分、の計五回分である。

 ネロは一つの包み紙を開け、薬を匂い、そして少量を手に取りペロっと舐めた。

「ネロ! 舐めたらだめよ! 毒かもしれないのよ!」
「お嬢、心配ありがと。でもだいたいわかった。確かに毒だね、これは」
「もうわかったの!?」
「少量飲むくらいなら、影響はない毒だけれどね。簡単に言うと、少量なら影響が少ない毒だけれど、毎日少しずつ飲めば、毒は体に蓄積される。それが続くと体が悲鳴を上げて、いつかは死ぬ。そういった毒だよ」
「ヴィラルは三年飲んでるって言っていたの」
「それは……とにかく、これをもって公爵のところへ帰るよ」
「……うん。ネロお願いね」

 明確なことを口にしないネロに、これ以上聞いても答えられないだろう。

「他に何か伝えたいこととかある? 困っていることとか」
「ううん……あ、そういえば、お腹が痛くなるの。痛くならないお薬はないかな?」
「ああ、ザクラシアの食事が合わないんだねぇ。腹痛の薬と胃薬渡しておくよ」
「ありがとう!」
「やっぱりお嬢の体が心配だなぁ。できるだけ早く迎えに来るからね、お嬢は性別がばれないように気を付けて」
「うん」

 また犬が警戒するといけないので、外へ出て犬と遠くで待機すると、ネロは手をふり去っていった。

 まさか薬が毒だとすぐに判明するとは思ってなかった。いろんな薬を持っているネロだが、毒にも詳しかったとは。毒はネロに預けたから、あとはパパがどうにかしてくれる。

 私はヴィラルと寝るべく、ヴィラルの部屋へ向かうのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。