七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 85話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 85話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」85話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 85話

 シオンと連絡が取れた日の夕食、昼よりは薄味だけれど、まだ濃い味付けの夕食をいただいているところに、クォロ公爵がやってきた。

「明日から早速この国のことについて学んでもらう。時間がないからな、逃げるようなことはするなよ」
「俺、帰りたい」
「何をいまさら。ルカルエム、お前はこの国の頂点に立ってもらうと言ったはずだぞ」
「えー」
「お前、ダルディエ公爵家の末っ子らしいではないか。それではどうせ家は継げないだろう。だったらここで私の息子となり贅沢な暮らしをするほうが、何倍もいいだろう」
「……」

 何も言わない私を見て肯定と受け取ったのか、頷いてクォロ公爵は部屋を出て行った。

(神髪神瞳である私を息子とし、王とすることで、自分が実権を握ろうとしているのかな)

 夕食を少し食べ、あとは下げてもらう。お腹が痛くなり、トイレを行ったり来たりし、やっと落ち着いてきた。家の食事が懐かしい。

 夕食後、使用人が持ってきた寝間着を、自分で着るからと言って使用人を追い出す。そしてまだ寝るには早いが、寝間着を着ると、ベッドに寝転がった。

(シオン?)
(……どうした)

 シオンの返事がすぐにあったことに、ほっとする。

(あとどれくらいで迎えに来る?)
(王都までは一日半くらいらしい)
(馬ソリ?)
(ミリィも乗ったのか。そうだよ)

 一日半で来れるのは早い。使う経路が違うのだろうか。私の時は三日三晩走り続けたのだ。

(そうだ、そっちでミリィを誘拐した相手の顔、見ているか?)
(うん。クォロ公爵という人。シオン知ってる?)
(いや……あとで父上に確認する)
(ミリィを今のザクラシア王の次の王にしたいみたい)
(……は?)
(だから、ミリィは女の子って秘密にしているの)
(……最優先に隠し通せ)
(うん、がんばるね。だから早く迎えに来て)
(ああ)

 そこでシオンとの連絡は切った。シオンと話すと、心細さの度合いが減る。

(さて)

 問題は、どうやって寝るかである。
 試しに目を瞑ってみるが……

(寝れない!)

 いつも三呼吸ほどで寝れるほど寝つきがいいのに、こういう時には発揮されないなんて。
 がばっと起き上がると、窓辺に向かった。

「わんわんわわーん」

 窓の外はすっかり暗闇である。それでも、窓の前にじっと待っていると、犬が五匹やってきた。

(犬と寝ようかなあ)

 三尾とは昼寝ができるのだ。この犬とも寝れるのではないか。

(あ! ヴィラルに頼んでみる?)

 その方が現実的かもしれない。
 窓を開けて外に出る。雪がちらつく中、暗闇で心許ないので手を振り犬についてきてもらう。少し灯りが窓から漏れている部屋がヴィラルの部屋だろう。
 そっとその窓を覗くとヴィラルがベッドに座っているが、他に使用人もいる。一瞬ヴィラルと目が合うが、私は窓を離れて座った。

(今は駄目だ)

 犬を撫でて少し待つ。すると窓をヴィラルが開けてくれた。

「ルカ?」
「ヴィラル」

 犬をそこに置いて、そっと部屋に入る。窓と鍵を閉めたヴィラルは、心配そうな顔を向けた。

「何かあった?」
「ううん。何もないよ」
「でもこんな暗い時間に、外に出ると危ないよ」
「大丈夫。犬についてきてもらったから」
「犬に?」

 困惑な顔をするヴィラルをベッドへつれていく。

「あのね、ヴィラルにお願いがあって」

 勝手に一緒にベッドに入る。ここは図々しく行こう。

「一緒に寝ようよ」
「え?」
「いつも兄上と寝てたから、寂しいんだ」
「僕と一緒に寝るの?」
「うん。朝早く部屋には帰るから」
「……いいよ」
「やった!」

 いそいそとベッドに深く潜り込み、ヴィラルにくっつく。

「えへへ。やっぱり人と寝ると温かいよね」
「……僕、誰かと一緒に寝るの初めて」
「本当? じゃあ、手を繋いで眠ろう」
「うん」

 そして、ヴィラルの息遣いが近くで聞こえるのを確認すると、すぐに眠気が襲ってくる。

「おやすみ、ヴィラル……」
「おやすみ」

 ヴィラルの返事が聞こえる前に、私は深い眠りに落ちた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。