七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 84話 シャイロ視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 84話 シャイロ視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」84話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 84話 シャイロ視点

 教会の高位聖職者のみが入ることを許される一室。
 シャイロは胸に手を当て、深々と頭を下げ待っていた。あの方を。

「やあやあシャイロ、二日ぶりかな」
「いいえ、四か月ぶりです、ゼイナフさま」
「あれ? そんなに経っていた? 本当、人間の時間の感覚って、早すぎて嫌になっちゃうな」

 何もない空間に現れた神ゼイナフは、そっと地に足をついた。

「おや?」
「……どうなさいました?」

 私ではないところへ顔を向け、わずかに笑う。

「いいや。それで? 報告を聞こうか」

 神ゼイナフとのやり取りは、ただの定期的な業務報告と同義である。十年以上このやりとりは続いていて、慣れたものだ。神ゼイナフは神といいながら、すごく人間的である。私には途方もない年月を過ごしているはずだが、時々お茶目で時々恐ろしい。

「ふむ、いつも通りってところだね。他に何か問題はある?」
「今のところはございません。……ああ、そういえば、先日アエロの呼び出しに応じなかったと伺いましたが」
「ええ? そんなことあったかな。私も忙しいからね、そうほいほい人間のお願いを聞いてばかりいられないよ。シャイロのように、私が空いている時に来るのを、察知して待っていてくれないと」

 そうなのだ。この神ゼイナフは気ままで、こちらに降りてこようと思い立ったが吉日というばかりに、こちらに知らせず急にやってくるのである。おかげで、私はいつでも察知できるようになったが。

「それならば、私の提案しましたとおり、アエロの職位の順位を下げてもよろしいのではないですか? いつまでも同列一位がいるのでは、混乱を招きますし」
「今はこのままでいいでしょう。そのうち君は王宮に戻るもの」
「それ、いつもおっしゃいますが、そう言われはじめて、かれこれ七年近くたっておりますよ」
「でも、そろそろと思うんだよなあ」
「それも毎回おっしゃいますよね」

 神ゼイナフはじーと私を見ている。いったい何が見えているのだろうか。

「ところで、温度はどお?」
「……残念ながら、少しずつ落としております」
「やっぱり器じゃないのかねぇ、あの少年王は」

 思い浮かぶのは、兄の残した唯一の息子。最後に見たのは、一年ほど前だったか。せっかく抜け出した王家とは関わりあいたくなくて、病に侵されているあの少年を、クォロ公爵に任せっきりにしてしまっている。

「どうにかなりませんか」
「やだなあ、それについては私はザクラシアから頼まれてないよ。知っているでしょ」

 神ザクラシア、本来なら、ここにいるべき神は、何百年もここにはやってこない。神ゼイナフは神ザクラシアの双子の兄で、ただ頼まれて引き継いでいる神なのだ。

「他には何もないっていうなら、私は帰ろうか。せっかく懐かしい子を見つけたからね。みんなと酒を飲む時のいい話題ができたよ」
「懐かしい子ですか」
「私の兄弟でね。遊戯に出てしばらく経つけど、どこにいるのかと思っていたら、ここにいるみたいだ」
「兄弟……というと、神ということに」
「そうだよ。もし会うことがあれば、そろそろ酒でも飲もうと言っておいてくれる?」

 じゃあね、と言うと、神ゼイナフは消えた。

 謎の言葉を残し去っていくのは、いつものことだ。これを悩みだすと混乱するだけなので、ここで思考は停止する。それがここで生きやすくするための技なのだ。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。