七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 77話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 77話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」77話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 77話

(お風呂に入りたい)

 男の言う通り三日三晩馬車に乗り続け、先ほど急に目隠しをされた。それから感覚的には一時間くらい経過した頃だろうか、人に抱えられ馬車から降ろされた。そして抱えられたまま移動し、今いる部屋はどこかの豪邸の一室である。

 本当に三日三晩走り続けるとは思わなかった。何度が馬を変えたものの、寝るのも食べるのもずっと馬車の中。兄たちがいないので夜寝るのが怖くて、赤ちゃんの頃のように久々に昼寝で対応した。馬車の外へ出られるのは、トイレの時だけである。

 そして、馬車が揺れない原因が判明した。なんと馬車だと思っていたものは、馬ソリだったのである。サンタクロースが乗っているやつの、トナカイではなく馬バージョン。屋根はあるけれど。雪国って、こういうものに乗るんだなあ、と面白かった。

 そんなこんなで昼も夜も走り続けること三日、やっと着いたこの豪邸は誰の家だろう。
 手に拘束具があるとはいえ、私が暴れも騒ぎもしないからか、逃げる警戒もしていないのか、私以外に誰も部屋にいない。

 部屋の家具は金を使っているものが多く、すごくキラキラとしている。結構な金持ちのようだ。

 ドアが開き、私を連れてきた男と、三十歳より少し若そうで偉そうな男が連れ立って入ってきた。

「……なんと、これは神髪ではないか?」
「そうなんですよ。まさか神瞳と神髪を両方持つ坊ちゃんがいるとは、俺も思っていませんでした」
「よくやった! これは少し計画を変えねばなるまい。ふむ、しかし思ったより小さいな? 十代ではないだろう」
「それが神瞳の子が何人かいるようで。街の住人の話では末っ子が双子らしくて、たぶんこの坊ちゃんが、その片割れでしょう」
「まあいい、神瞳と神髪、両方揃っているから褒美ははずもう」
「ありがとうございやす!」

 この偉そうな男が雇い主だったようだ。使用人に報酬を指示すると、私をさらった男は部屋から嬉しそうに去っていった。部屋には私と雇い主の二人。

(どうみても、ウィタノスじゃないなあ)

 年齢も性別も一致しない。何より、顔を見てもウィタノスでないことが理解できる。
 とりあえず、ほっとした。

(それにしても、すごい見ているなあ)

 上から下まで、じっくりと私を観察している。

「……これはいい買い物をした」

 間違いなく頭の中で、私を上手く使う計算でもしているのだろう。

「……メナルティに似ているな」

 ママもティアママも同じことを言っていた。私はママの妹メナルティに似ていると。雇い主は一瞬だけ懐かしそうな表情を浮かべ、すぐに偉そうな表情に戻る。

「私はクォロ公爵と呼ばれている」
「……」
「……まさか言葉が分からないのか」

 あ、まだ独り言だと思っていた。それに馬車の中では一言もしゃべらなかったので、しゃべらないことが普通になってきてしまっていた。
 ここでは言葉が理解できないフリをするより、話をして情報を得た方がよいだろう。

「分かるよ」
「……ほう。ザクラシア語が分かるのか。さすが血筋というべきか」

 血筋は関係ない。しかしそれを言ったりはしないが。
 今意識すべきは私は男だということ。このクォロ公爵とやらに性別がバレてはいけない。

「俺はルカルエム。クォロ公爵、俺はなぜここに連れてこられた?」
「それはまだ教えることはできない。しかし生活は保障しよう。しばらくはこの後案内する部屋を出ることは許さないが、これから教える勉強を頑張れば、いずれ贅沢な暮らし三昧だ」
「勉強?」
「ああ」

 クォロ公爵は腰を折り、私の横まで顔を寄せた。

「ルカルエム、君にはいずれ、この国の頂点に立ってもらうつもりだ」

 クォロ公爵はニヤっと笑うと、腰を戻した。
 そしてドアへ歩みを進めるが、こちらを向きもせず口を開いた。

「ああ、そうそう。この屋敷の庭には獰猛な犬を飼っていてね。逃げようと思うのはやめておいたほうがいい」

 そしてクォロ公爵は部屋を出て行った。
 これ以上説明する気はないらしい。

 それからやってきた使用人に案内され、私は一時住まう部屋へ移動するのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。