七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 73話 ジュード視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 73話 ジュード視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」73話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 73話 ジュード視点

 その日の昼食は、兄妹全員と母が一緒にとることとなった。父は仕事で外出していて不在だ。

 兄会議の影響で、兄たちは少し闇を抱えた気持ちを引きづっているから少し暗いものの、逆にミリィは少しすっきりしている表情だった。それを見るだけで俺の気分が回復する。母はいつもどおりふわっとしている。うん、そのままでいてください。

「ミリディアナちゃん、ママが新しく可愛いドレスを用意したのだけど、着てみないかしら?」
「今日ミリィ可愛い服着てるよ」
「それはエメルの服でしょう?」
「でも可愛いでしょう? それとも可愛くない?」
「か、可愛いわ! もちろん可愛いわ! でも」
「そうでしょう! ジュードの小さいころみたいで可愛いってママ言ってたものね!」
「そうね、ジュードみたいよ、とっても可愛いわ。だけど」
「エメルの部屋でね、また可愛い服見つけたの! 明日はそれ着てママに披露するね!」
「……ありがとう、ミリディアナちゃん」

 母がしゅんとしている。ダルディエ家には隠れた階級がある。母は不動の一位を付けているが、最近それに揺らぎが生じている。ことミリィの男装に関しては、ミリィはなかなか巧みに母を誘導している。そんなに男装が気に入っているのだろうか。俺があげたカツラも気に入っているようで、俺としては満足だが。

 母は俺とミリィが似ていると言うが、似ていないと思う。可愛さがまったく違う。俺にあの愛らしさはないし、可愛い仕草とか笑い方とか、まったく違うと思う。
 母はスカートやドレスを着せたがる。俺も最初はミリィの男装に反対だったが、今では何着ても問題ないと思う。ミリィは男の恰好でも可憐だし、着ぐるみ着ると悶えそうなくらい可愛いし、女の子の服はもちろん超絶似合っている。

 昼食を終えると、兄会議再開である。
 やられた! そう思いながら、ついディアルドを睨んでしまった。
 またミリィを膝に座らせようと思っていたのに、どこかでミリィを捕まえたのか、抱えて歩いてやってきたディアルドは、そのままミリィを膝に座らせて着席してしまった。

 駄目だ、今は目の前の会議に集中しなければ。

 いったん、もう一度整理するために、ミリィに夢の話や転生の話を思いつくままに話してもらった。夢の内容は外国語でシオンにも分からないことな上に、シオンが見た夢以外にも見ている転生前の夢があるとのことだったからだ。対策をするためにも、情報が必要だった。

 そして、ミリィの話を元に、エメルがまとめてくれた。

 ミリィを狙っているのは、ウィタノスという人物。
 ウィタノスはミリィをカルフィノスと呼んでいた。
 前世時点で、八九戦八二勝六敗一引分。想像するにウィタノスから八十二回殺され、六回殺しているのではないかということ。
 ウィタノスに殺された場合、すぐにウィタノスが後追い自殺をするため、次に転生すると同じ年齢である可能性が高い。
 ウィタノスを殺した場合、カルフィノスがいつ死ぬか分からないが、次に転生するとウィタノスが年上となる可能性が高い。
 転生するたびに、毎回性別は同じである。ウィタノスが女の時はカルフィノスも女、ウィタノスが男の時はカルフィノスも男。
 ウィタノスを殺した時の会話で、カルフィノスが前世を知っているようなところがあった。その時のカルフィノスは前世でウィタノスに殺されているようだった。それから推定するに、ウィタノスに殺された場合は、次に転生すると前世の記憶がある。
 相手がウィタノスかどうか判断するには、ミリィが顔を見るしかない。
 前世では、前々世の記憶がなかったことから、前々世はウィタノスを殺しているのではないか。

 今まで八九回もウィタノスに狙われていることに、鳥肌が立った。なんて執拗な。兄たちの殺意が部屋中にピリっと走ったのは言うまでもない。

 しかし今は冷静にならなければ。
 これらの情報を元に、現状を把握しようと思う。

 まずミリィの人生は、九十戦目である。
 前世で殺されているため、ウィタノスはミリィと同じ年の女である。
 ウィタノスは現在どこにいるかも分からない。同じ国にいるかさえ不明。
 ウィタノスは間違いなく今回もミリィを狙っているだろう。
 前世だけのことに限るならば、前世の出来事を覚えている。それは死に間際のことだけでなく、人生のほとんどを。
 前々世など、前世以外の出来事は、ウィタノスから殺されるか殺したかの場面しか覚えていない。

 現状で把握できることは、この程度だった。

 疑問はある。

 一引分とは、何を意味するのか。相打ちなのか。
 前世の記憶があるミリィが、なぜそれより前の転生で殺し殺されるところを夢で見るのか。前世のことなら、姉と弟がいたこと、学生だったときのこと、働いたことなど全て覚えている。なのに、前世より前の転生の夢では、嫌がらせのようにその人生が終わる時だけ見させられているかのようで、作為的なものを感じる。

 ただ、疑問が今解決できるわけではない。

 現状把握により、とりあえずの方向性を決めた。

 ミリィの外出には、かならず護衛を付ける。本当は外出してほしくないが、そんなこと言えばミリィが泣くかもしれないので、ぐっと我慢した。
 しばらくは同じ年の女の子がいる場のお茶会やパーティーなどは参加しない。
 悪夢は情報にもなり得るので、夢の上書きはしない。添い寝は現状維持で、兄たちで交互にする。
 いつでもミリィを守るために、俺たちが日々鍛錬しておくこと。

 ほとんど今までと変わらない。変更があるとすれば、ミリィに護衛を付けたことくらいか。

 ミリィは、現在ウィタノスも六歳であろうから、幼いためにまだ襲ってくることはないだろうと言うが、警戒するに越したことはない。

 またシオンや双子は、同じ年の女の子全て始末しようと言うが、そういうわけにもいかない。対処すべきはウィタノスだけだ。それ以外の子は、ミリィと同じただの可愛い女の子である。それらの子たちを、一緒くたにはできない。

 兄会議は閉会した。
 会議で決まったことは順守するとしても、それぞれ色んな思いを隠して。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。