七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 72話 ディアルド視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 72話 ディアルド視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」72話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 72話 ディアルド視点

 冬休暇に入ったら早く帰ってきてほしいと双子から連絡があったのは、まだ休暇までは二十日以上の日数が必要だった頃だった。帝都にあるダルディエ別邸の執事から双子からの伝言が届けられたのである。

 小さいころから悪夢を見続ける妹をどうにかしてやりたくて、それでも解決策がない俺たちは、苦渋の決断で添い寝を始めたのだ。俺たちにできるのは、それくらいしか選択肢がなかったから。
 添い寝は苦しみから解放してあげられるわけではない。それでも少しでも苦しみを短くできるならと思った策なのだが、時々、妹は悪夢から起こしても辛さが無くならないのか泣き続けることがある。
 どうやら、現在がそれと同じ状況なのか、妹の元気がないと双子が助けを求めてきたのだ。

 できることなら、すぐにでも帰りたい。しかし俺たちの学年で休み間際に行われる予定の試験は、受ける必要があった。

 ジュードなら試験もないはずだから帰ってもらおうか、いやすでに妹のためならと帰り支度くらいしているかもしれない。そう思って、テイラー学園の寮のジュードの部屋を訪ねようとしたところ、寮の入り口で荷物を持って去ろうとしているシオンに遭遇した。

「どこいくんだ」
「帰る」
「まさか領に?」
「うん」

 せめて俺に相談くらいしてくれ。そう言いそうになって、ぐっと我慢した。シオンはいつも勝手に一人で行動する。まして妹のために行動しようとしているのが分かっていて、止められるものではない。

「分かった。だけど、ちょっと来てくれ」
「早く帰りたいんだけど」
「分かっているが、何をしようとしているかくらい話していってくれ。ミリィのことは、話し合うって決めただろう」
「……ちっ」

 ダルディエ家の人間が舌打ちしないでほしい。シオンに言っても無駄なので、言わないが。
 最初の目的通り、寮のジュードの部屋を訪ねるが返事がない。外出中なら、いったん俺の部屋にシオンを連れていくかと思案した時ジュードが戻ってきた。

「兄上? シオンも」
「いまちょっといいか」

 この感じだと、まだ双子からの手紙を読んでいなさそうだ。
 ジュードの部屋に入ると、手紙についてかいつまんで話した。すると、ジュードが案の定帰省すると言い出した。

「いや、ジュードはまだ帰らなくていい。シオンが帰るから」
「なぜです?」
「理由はシオンが話してくれる。何するつもりなのか話してみて」

 シオンは耳の天恵を持っている。ここのところずっとアカリエル公爵の元へ訓練のために通っているのも知っている。昔はただ忌み嫌う天恵を、訓練しようという気になったのは、妹が生まれて、悪夢にうなされるようになってからだ。何するか分からないところのあるシオンだが、妹に関しては何しても悪いようにはしないだろう。そこは心配していない。

 シオンの話によると、人の夢に接触できるようになったらしい。人の夢を一緒に見ることができて、しかも夢の内容をシオンが想像する別のものに変更することもできるようになっているという。
 計画としては、こうだ。いつ悪夢を見るか分からないので、しばらく一緒にミリィと添い寝をする。それからミリィがうなされる夢を見て、何に怖がっているのかを確認する。少なくとも三回ほどは悪夢を確認する。その頃には、俺とジュードが帰省するだろうから、みんなの意見を確認して、悪夢を違う夢に書き換えるのか相談する。

 そういった作戦だった。
 いいように思えた。夢を上塗りするなんて、シオンにしかできない。ジュードはブツブツと「ずるい」とか「俺も膝にのせたい」とか小さい声で何か言っているが、悪夢を解決する方法が他に思いつかないため、最後には了承していた。

 シオンは急いで帰っていった。別邸にいったん寄るのだろうが、今頃先ぶれ連絡をもらった執事が帰省支度をしてくれているだろうから、すぐにカルディエ領へ出発できるだろう。
 シオンもまだ講義は残っているはずだが、シオンのことだ、露程も気にしてはいないのだろう。俺はそういうところが気になってしまう部類なため、そういうところはシオンが羨ましい。

 シオンの作戦が上手くいくかは分からない。それでもやってみるしかない。

 そしてテイラー学園が冬休みに入ったと同時に、俺とジュードは帰省した。数日遅れでエメルも帰省し、兄妹全員がカルディエ領に集まった。

 夢の確認のためにシオンがずっと妹の添い寝をしていて、妹不足のジュードが添い寝を代わってくれとシオンに言っていたが、この時ばかりは俺がジュードをしずめた。いつ悪夢を見るか分からないのに、今ジュードに添い寝を変わっては意味がない。

 それからしばらくして、兄たちだけを集めた兄会議にて、妹が三回うなされていた日の夢を話してくれた。想像通り、人が生き死にする夢だったらしい。しかし、どんな会話が行われていたのかが分からない。シオン曰く、国外語で分からなかったとのことだった。

 一応妹に怖い夢はこれで合っているのか確認し、どうするか決めよう、そういった結論で妹を兄会議に呼び出したのだ。

 ところがだ、妹の話を聞き、みな頭を抱えた。
 この国では、死んだあとのことなど誰も気にしない。そういった話をする人はいない。今が大事なのであり、死んだあとは土になるだけで天国へは何も持っていけないのだから。だから転生とか輪廻とか、そういった話は一般的な内容でないため混乱したが、そこは無理やりにでも飲み込んだ。問題はそこではない。妹はその『転生』をするたびに命を狙われていて、今も誰かがどこかで妹を狙っているという。

 夢の中身を上塗りするとか、そういった度合いの話ではなくなってしまった。
 いったん冷静になるためにも、兄会議は中断した。続きは昼食をはさんで午後にしよう。妹はいったん休憩しておいでと部屋から出した。しかし兄たちは誰も席を立とうとしない。

 シオンは目論見が外れてしまい、しかも妹を狙うものをどうにかして始末しよう、という顔をしていた。双子は「六歳女の子限定! 甘い砂糖菓子一年分がもらえる!」という広告を町単位で載せて六歳の女の子を集めよう、と言っている。集めてどうする気なのか。シオンと同じことをやろうとしているのではないだろうか。

 エメルは表面上は冷静に見えるが、妹のことになると時々冷静さを欠くことがある。
 ジュードは何やらブツブツ言っている。さっきまで妹に優しく話していたのは誰だったんだ。よくみたら傍にあるペンが真っ二つになっている。うん、冷静じゃなかった。

 やはり続きは昼食後に設定してよかったと思う。それぞれ冷静になる必要がありそうだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。