七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 69話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 69話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」69話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 69話

 騎士団からパパと共に帰宅すると、ちょうど屋敷の前に馬車が止まっている。お客さんかな? と馬車を横目に見ながら屋敷に入ると、そこにはシオンがいた。

「シオン!」

 ちょうど帰省してきたばかりのようで、まだ外套をまとっていたシオンに抱き着いた。

「ミリィ。元気にしてたか?」
「してたよお」
「……そうか」

 私を見て何かを考える仕草をしながら、私を抱き上げる。
 なんだろう、すごく見られているが。

「なぜ、ここにいる? 学園はどうした」

 パパが怖い顔をさらに険しくして、シオンを問い詰める。

「休暇前で講義はもうほとんど終わっているので。切り上げてきました」
「ディアルドとジュードは」
「まだ講義を受けたいみたいですね」
「お前も、そうじゃないと困るんだが」

 しれっと悪びれる様子もないシオンに、パパは深いため息をついた。

「まあいい。フローリアにも声をかけるんだぞ」
「分かりました」

 パパは着替えるために去っていく。
 堂々とサボるシオンってば、強い。堂々としてれば、怒られないものなのだな。いや、パパが甘いのだろうか。

(アルトとバルトは?)
(今日は騎士団にまだいるの。もうちょっとしたら、帰ってくると思うよ)
(ミリィも騎士団に行っていたんだな)
(三尾と遊んでたの)

「……あれ?」
「どうした?」

(今、しゃべってないのに、シオンの声聞こえた気がする)
(そうだよ)

「……え!?」

 驚く私に、イタズラが成功したかのような笑いを浮かべたシオンは、これ以上話さずに部屋を移動した。すぐ近くに使用人がいるからだ。

 外套を脱いだシオンは、お茶とお菓子を持ってこさせると人払いをする。

(髪、伸びたな)

 私の今の髪の長さは、肩より上に揃えたボブといったところだ。

(この髪型でも男装が似合うでしょ? ママがジュードみたいって言うの。男の子に見えるよね)
(女にしか見えない)

 ぷくっと頬を膨らませると、シオンは口角を上げる。

(ま、ジュード兄上も女にしか見えないからな。男装して男だって言い張れば、相対するやつは、女に見える男なんだと、勘違いしてくれるんじゃないか)

 まあ、私もそれを狙っているのだが、シオンには思惑がバレているようだ。

(それよりも! シオンの声が聞こえるのはどうして?)

 シオンの耳の能力は、私の心で話した声は聞こえるが、シオンの心で話した声は聞こえない、そういう一方的なものだったはずなのだ。

(訓練したんだよ。アカリエル公爵のところで)
(訓練すると会話ができるようになるの? シオンすごいのね!)

 そういえば、以前アカリエル公爵家を訪ねた時、シオンがなぜかいた時があった。

(もしかして、前にアカリエル公爵家に泊ってたのは、訓練のため?)
(そうだよ)
(どうして、アカリエル公爵家なの? うちじゃだめなの?)
(アカリエル公爵家は、天恵を多く輩出している家系なんだ。その関係で、能力の高め方や応用のやり方をよく知っている家なんだ)

 天恵の専門家ということだろうか。
 天恵とひとくくりにしているが、シオンの耳の能力をはじめ、目の能力、怪力など、天恵の種類は多い。

(会話って、くっついてたらできるの?)
(いいところに目を付けるな)

 シオンはニヤっと笑う。
 現在私はお茶をしているシオンの横に座っているため、服同士ではあるが接触があるから会話ができるのかと思ったのだ。

(離れてもできるよ)
(え! 本当?! すごい! やってみて!)
(じゃあ、一本もらうな)
(え?)

 腰から短剣を抜いたシオンは、私の髪を一本切った。そして、席を立ち、前のソファーへ移動する。

(聞こえるか?)
(……聞こえるー!)

 拍手を送る私に、ぼそっと「喜ぶのはミリィくらいだよ」とシオンが呟いたが、それは私には聞こえない。

(これも訓練? 髪があれば、誰とでも会話できるの?)
(そうだよ)
(すごーい!)

 シオンは私の横に戻ってくる。

(じゃあ、ミリィといつでも会話できるように、その髪取っておいてね! 髪の毛腐らないのよ!)
(……一応言っておくが)

 シオンによると、髪の毛持っていると、いつでもどこでも会話できるが、それは意識していれば、ということらしい。髪を持っているだけで聞こえてしまうならば、ただでさえ人の心と接触しやすいため、髪を持ち歩かないなどで対応する予定だったらしい。けれど意識しない時に声が聞こえることがないよう訓練した結果、今ではいろんな人の髪を持っているが、自然に聞こえてくることはないという。
 ただ意識すれば、会話はせず、こちらの話している声だけ、または心の声を盗み聞きすることも可能らしい。盗聴のようなものですね。
 だが私の髪を持っているからといって、私の心の声や話している声を盗み聞きする気はないというシオンに、心が痛くなった。

 シオンが心配していることは分かる。
 普段から接触する相手の思っていることが聞こえるため、使用人たちに近づかないシオンだが、使用人たちもシオンを気持ち悪がっているのを知っている。天恵のことは、一般的に吹聴することではないので、テイラー学園でも内緒にしているはずだが、疑われることはあるかもしれない。そういった時に一般の人なら気持ち悪く思うものだろう。
 それを理解しているからこそ、私にこんなことを言ってくるのだ。

(いつか大人になった時、女の人と女の内緒話する時は恥ずかしいから聞かないでほしいけど、それ以外なら聞いててもいいよ! シオンに聞かれたら駄目な話なんて、ないもの!)
(……今だけだ、そんなこと言うのは)

 シオンは息をのみそっぽ向くが、怒っているわけではないようだ。

(ずっと、そう思うと思うわ)

 シオンの左腕に絡みつき、手を握るのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。