七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 62話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 62話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」62話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 62話

 帝都からダルディエ領へ戻って数日経った頃、私は図書室で次に読む本を物色していた。
 レシピ本や、恋愛小説もいいが、ちょっと違うものが読みたいと思っていると、一冊だけ少し前に出ている本があった。

 背表紙には何も書いておらず、興味がわいてその本を手にする。
 表紙をめくると、そこには『グラルスティール帝国と近隣諸国の王家の歴史』とある。

 グラルスティール帝国とは、私が住んでいる国である。
 歴史書は読んだことがないと思い、少し読んでみることにした。

 まずはパラパラと初めから終わりまでめくってみると、途中に絵が挿入されているのに気づく。
 もう一度パラパラとめくり、途中で気になった絵のページで止めた。

「『ザクラシアの王家とその血筋は濃いほど、神の恩寵を受けるとされる。その証として瞳や髪は神々しく輝き……』……なんだか、見たことがあるような」

 そのページには、目と髪が強調され冠を頭にのせた男性が描かれている。
 ザクラシア王国は、グラルスティール帝国の北にある国で、まさにダルディエ領に国境がある。いまはザクラシア王国とは友好な関係を築いていると聞いている。

「瞳や髪は神々しく輝く……、まさかね?」

 私の髪は虹色に輝くし、緑色の瞳もキラキラと輝くが、これは違うはずだ。私の髪や瞳をママから受け継いだのは見た目からも間違いないが、ママはそうではないはずだ。ママはたぶんグラルスティール帝国出身だと思う。姉であるティアママもこの国にいるのだから。

「……違うよね?」

 さらに読み進めるが、瞳や髪のことがこれ以上書かれているところがなかった。神の恩恵がどうとか、そういったことばかり書かれている。
 この本は近隣諸国の一部としてザクラシア王家のことが軽く触れられているだけで、詳しく書かれていないのだ。

 本棚の歴史書のところには、他にザクラシア王国に関するものは、背表紙でざっと確認する限りはなさそうだった。

「本人に聞いてみる?」

 ママはザクラシア王家の人ですか、と。
 笑われておしまいかもしれないが、このモヤモヤを解消するためにも、私はママのところへ向かった。
 ところが。

「そうですよ。ママはザクラシア王女なのです」

 軽く微笑んで肯定されてしまいました。

(マジか)

「ミリディアナちゃんには、まだ言ってなかったかしら?」
「ママが王女さまなんて、知らなかったの……。じゃあティアママも?」
「そうですよ。でも王女はたくさんいましたからね、何人だったかしら、十二人? 違うわ、十五人だったかしら? 私が結婚した後も何人か生まれたと聞いているから、正確な人数が分からないのだけれど。お父様には側室も多かったですし」

 なるほど、ザクラシア王家は多妻制なのか。そんなに人数いると、会ったことのない兄妹もいそうなものである。

「前にうちに来られたシャイロさまは?」
「シャイロは王子ですよ。今はザクラシアで聖職者をしています。私とティアルナお姉さまとシャイロは、同じ母から生まれた兄妹なのです」

 確かに、みんな同じ系統の顔していた。

「じゃあね、この本のここに書いてある『血筋は濃いほど、神の恩寵を受ける』とか、『その証として瞳や髪は神々しく輝き』とかって、どういうこと?」
「そうですね、これはちょっと難しい話なのですが……」

 ママの話によると、こういうことだった。

 ママのようにキラキラと輝く緑色の瞳は、ザクラシア王国の言葉で『神瞳』という。そしてママのように虹のように多色で輝くプラチナシルバーの髪を『神髪』という。

 まず『神瞳』や『神髪』を持つのは、ザクラシア王国の中でも王家の血筋のみである。それはザクラシア王国の建国による神話が絡んでくる話なので割愛されたが、『神瞳』や『神髪』を持つものが王の血筋の中でも尊いものだと国民なら全員知っていることらしい。

 なぜこういう話になるのかというと、王家の血筋といえど『神瞳』や『神髪』を必ず持って生まれるわけではないからだった。ママの弟であるシャイロは『神髪』は持つものの、紫の瞳であるし、建国から時間が経ち過ぎた今となっては、逆に『神瞳』や『神髪』を持って生まれる方が少ないのだという。では『神瞳』や『神髪』の両方を持っているママやティアママは、さぞ尊い存在なのだろうというと、そうでもない。

 なぜなら、ザクラシア王国では、男尊女卑が激しく、『神瞳』や『神髪』持っていても女でしょ、そう言われてしまう存在らしい。

 だから、王家の血筋で一番尊いのは、男で、かつ『神瞳』や『神髪』を持っていること、ということになる。

(なにそれ。そんなに男尊女卑が強い国、一生行かなくていいや)

 私がそう思うのも無理はないと思う。
 でも、ママが変なことを言い出した。

「もしミリディアナちゃんがザクラシア王国へ行くことになっても、恩恵は受けられるから大丈夫よ」
「恩恵?」

 これまた宗教的な話で難しいのだが、こういうことらしい。

 ザクラシア王国に生まれた国民は、生まれてからすぐに神からの祝福を受ける。王家の人間も同じように祝福を受けるが、ちょっと特別扱いらしいのだ。王族だけが入れる教会で祝福を受けると特別待遇の恩恵が受けられるらしい。

 その一、『特別待遇の祝福を受けた王族』の子は、何らかの理由で祝福を受けずとも、恩恵が受け継がれる。
 その二、恩恵を受け継いでいる王族の血筋が、何らかの理由で祝福を受けていなければ、自身の子は恩恵は受け継がれない。

(つまり特別待遇の祝福を受けたママの子である私は恩恵が受け継がれているけれど、私自身は祝福を受けていないから、将来私の子は恩恵は受け継がれないということね)

「その恩恵って何ですか?」
「そうですね、ザクラシアは一年の大半が雪で覆われていて寒いのですが、恩恵を受けると、温かいのですよ」
「……?」
「難しいわよね。そうですね、例えば……」

 ザクラシア王国は本当に寒い。ダルディエ領も寒いが、重ね着をすれば、外で雪合戦だってできるし、散歩もできる。ではダルディエ領で重ね着して遊べる恰好でザクラシア王国へ行くと、それだけでは凍えてしまうらしいのだ。ところが、祝福を受けていれば恩恵が受けられる。そうすると、ダルディエ領にいる時より薄手の恰好でも温かいらしいのだ。

 ちなみに、王家以外の人たちは、祝福を受けさえすれば恩恵が受けられる。特別待遇の王家との違いは、その恩恵が子に受け継がれるか継がれないかの違いらしい。

(その恩恵って、魔法の類ではないのよね?)

 私はこの世界に魔法はないという認識を持っている。だが、祝福を受けるだけで受けられる恩恵というものが、なにか人外の存在を感じる。

(あ、神って言ってたな、そういえば。とうことは神の力?)

 そうだとしても、胡散臭い。神にそういった不思議な力を与えることができるのか。
 前世では神社巡りは好きだったが、神の力とか、そういったものには興味がなかったのだ。

「ザクラシアに住んでいるものからすれば、身体が暖かいこと以外にも恩恵が関係するところは多いのですが、ミリディアナちゃんがいつか旅行で行く程度なら、温かいことくらいしか影響はないかもしれないですね」
「他にも恩恵が関係することがあるの?」
「ありますよ。ザクラシアは北国ですが、農業が盛んです。採れる作物は豊富で、北国にありながら農業国家と言われているのには、恩恵が関係しています。他にも細かい部分を上げるならきりがないくらい、恩恵が関係している国なのです」

 なるほど。とりあえず、これ以上はザクラシア国民ではないし、知らなくてもよさそうな情報である。ママに礼を言い、お茶にしようと提案した。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。