七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 57話 ルイ視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 57話 ルイ視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」57話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 57話 ルイ視点

 仕事で忙しかったが、カルディエ領で夏を過ごしたカイルが戻ってきたと聞き、仕事の合間にルイは息子を呼び出した。

 普段から仕事が忙しいあまりに会うことが少なく、何か話があれば部下に伝言をお願いするくらいで、カイルと顔を合わせることはめったにない。
 会う時間を作らないのは、仕事を言い訳にしているものの他にも理由はある。そんな自分に嫌気がさしつつも、一人息子を案ずる気持ちは人並みにある。

 もともと感情の起伏が乏しいカイルは、妻の言う通り勉学や剣の訓練などに励み、何かわがままを言うこともない。淡々と、しなければならないことをやって、言われたこと以上の成果を上げている。
 カイルのまわりの大人たちは、そんな出来過ぎた息子を褒めるが、たまにカイルに会うと、会うたびに人間らしさがなくなっていくような、そんな気がしていた。

 最近は同じ年の貴族の令息たちと過ごすためか、前より口数が増えたとは思うが、それだけだ。

 父親である自分が何かできればいいのだが、忙しい上に、今さら父として何をすればいいのか見当も付かない。何かやれば逆に裏目に出てしまいそうで、もんもんと考えてるだけで時間が過ぎて行ってしまう。

 そんな時、思い出したのは旧友だった。
 旧友であり今でも親友であるカルディエ公爵は、強面で恐れられるくせに、北部騎士団の騎士から尊敬され、彼の子供たちからも慕われていると聞く。

 夏休暇にカルディエ公爵にカイルを預けてみようか、それはただの思いつきだった。
 たった一ヶ月でカイルがどうにかなるとも思えないが、公爵の子供たちと触れることで、少しでも人間らしくなってくれるといい。そんな他人任せのひらめきだったのだ。

 カルディエ公爵は簡単に了承してくれたため、カイルをあの地へ送った。そして忙しすぎて、そのこと自体を忘れかけていた頃、カイルが戻ってきたと連絡を受けた。

 戻ってきたカイルは、相変わらず無表情だった。
 やはり一か月程度では、カルディエ公爵であろうとも、カイルに何かしらの影響は与えなかったとみえる。

「して、カルディエはどうだった?」
「つつがなく過ごしました」
「そうか。楽しく過ごせたか」
「はい」
「……」

 会話終了。いつもながらに、親子の会話は短い。しかしいつになく今回は食い下がってみた。

「どんなことが楽しかったのだ」

 少し驚いたようにカイルがこちらを見る。いつもなら、ここで会話が終わるはずだからだろう。

「……妹が、できました」
「妹?」
「ミリィが……ミリディアナ嬢が、俺を兄にしてくれると」

 わずかにカイルの頬に赤みが増す。

「確か、ミリディアナ嬢は公爵の一番下の娘だったな」
「はい。……エメルが、よく妹は可愛いと言っていました。あまりよく分からなかったのですが、ミリディアナ嬢は本当に可愛いです」

 わずかにカイルの口角が上がる。珍しい。笑っている。

「……本当に楽しく過ごせたようだな」
「はい」
「ふむ……」

 こう思うのもなんだが、カイルに人を可愛いと思う感情があるとは思わなかった。

 考え込む私に、カイルは無表情に戻った顔を向ける。

「父上?」
「いや、分かった。お前が充実した夏休暇が過ごせたなら、それでいい」

 カイルは礼をすると、部屋を去っていく。

 カイルに変化をもたらした、ミリディアナ嬢に俄然興味が出る。
 親友に何かお礼をしなければと考えるルイだが、その表情はどこかいたずらを企むようなものだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。