七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 47話 前半エメル視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 47話 前半エメル視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」47話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 47話 前半エメル視点

 ダルディエ公爵家の六男であるエメルは、実は少し前に父からある打診をされていて悩んでいた。その打診の内容には興味があった。やってみたいと思った。けれど。

(ミリィと離れることになる)

 その打診を受けるならば、エメルは帝都へ行かなければならない。とうことは、大事な妹と離れ離れになることを示す。
 父はその打診を受けるか受けないかは、エメルに任せるとのことだった。だから受けないとしても怒られることはないし、がっかりさせることもないだろう。
 ただ、エメル自身がやってみたいと思ってしまった。だから悩んでいる。

 妹ミリディアナが生まれてから四年。エメルはミリィが本当に大事だった。仕草の一つ一つが愛らしくて、話す声が心地よくて、エメルより小さくて守らなくてはならないもの。

 兄妹の中ではミリィと一緒にいる時間が一番長いのはエメルだった。体が弱いミリィは、いつも勉強しているエメルにくっついて、一生懸命勉強している。

 エメルはまだ小さいからとミリィとの添い寝はジュードと三人だった。しかしジュードがテイラー学園へ行ってからは、エメルはミリィと二人で寝るのも許されるようになった。ミリィは寝姿も可愛くて、そんな愛しい妹にくっついて寝るのは至福の時だった。

 エメルが打診を受けてしまえば、そういったこと全てを手放さなければならなくなる。もちろん長期休暇に入ればダルディエ領へ戻ってこれるし、妹が帝都へ来ることもあるだろうから、今後会えないわけではないのだが。

 現在エメルの隣で、まず四才が読むような内容ではない本を、ミリィが真剣に読んでいた。こんな表情を見れるのだって、兄弟の中では自分くらいのものだ。それを手放すのか?

 いつになく苦悩に顔を歪ませるエメルだった。

◆ 以下、ミリィ(主人公)視点

 私が談話室の扉を開けると、パパとママがソファーに隣同士で座り、甘い雰囲気を醸し出していた。
 私はまったく遠慮せず両親に近づく。

「ミリディアナちゃん」

(はいはい、イチャついているところ、すみませんねぇ)

「パパ、もうちょっとずれて?」

 パパは苦笑して横に体をずらすと、パパとママの間にあいた空間に私は体を滑り込ませた。
 パパとママが一緒にいるときは、二人の間が私の定位置だと決めている。兄妹でこんなことをするのは私くらいであるし、両親も注意しないということは問題ないはずだ。

「ママ、明日ねー、騎士団へ行くのよ、ね、パパ」
「そうだな」
「よかったわね。暖かい恰好で行かなくてはダメですよ」
「うん! 明日行ったらね、一角の背中に乗せてもらえるの!」
「一角ですか? 確か馬の先祖返りでしたわよね?」
「そうだ」

 一角を始めて見たのは一か月ほど前。シオンと双子と他の騎士たちと一緒に、騎士団で見せてもらったのだ。騎士団の離れで育てられている一角は、普段騎士でも見ることはほとんどないらしい。
 というのも、一角を扱えるのは、騎士団でも上層部の一部だからとのことだった。

 一角とは馬の先祖返りのことらしく、最初一角を見た時は、ユニコーン!? と驚いた。伝説の生き物がいるとは! と、じーと一角を見るが、何かが違う。私のユニコーンのイメージは、真っ白の馬だけれど獰猛で気高いものだった。しかし騎士団の一角は、真っ黒の馬に真っ黒の角が一本生え、普通の馬より一回りくらい大きい。私が近づいても見てくるだけで暴れることもなく、大人しいのだ。

 そして一角は先祖返りの一種らしい。つまり、昔は角の生えた馬がたくさんいたということか。ちなみに、三尾も狼の先祖返りだという。

「ママは一角見たことある?」
「一度見たことがありますよ。でも大丈夫なのかしら、危なくないの? ジル」
「普通は一角側が初見のものを近づけさせないものなのだが、ミリディアナは最初からなぜか触らせてもらえるくらいだったからな。私が一緒に乗るから、安全は保証しよう」

 そう和やかに話していた時、エメルが部屋へ入室してきた。

「父上、少し話させていただいてもいいですか」
「どうした?」

 エメルはちらっと私を見るが、すぐに目をそらす。

「あの件をお受けしようと思います」

 決意の満ちた目で、エメルはパパにそう告げた。

 エメルとパパの話によると、エメルと同じ年の子が集められる勉学関係の集まりに参加することにしたらしい。これからずっとエメルだけ帝都のダルディエ別邸で生活することになるという。

 次の日、パパに一角に乗せてもらったり、いままでと変わらずエメルと勉強する日々を送っていたが、私の気持ちはずっと動揺していた。

 テイラー学園に通うために、ディアルドとジュードがいなくなり、それだけでも寂しいと思っていた。いつかはシオンや双子やエメルだっていなくなることは覚悟していたが、エメルがこんなにも早くいなくなるとは思っていなかったのだ。

 表向きは何ともないというように生活していたが、エメルが帝都へ去る日、馬車の前でエメルから離れず泣いて困らせるという失態を犯した。

 私が行かないでとすがりつくものだから、エメルまで泣かせてしまった。結局パパに抱えられ、泣きながらエメルを見送るはめになった。

(あまり泣くものじゃないな)

 エメルが去った後まわりをふと見ると、ママは泣いているし、使用人たちももらい泣きしていた。
 結局興奮しすぎていたのか、私はその夜、高熱をだした。
 やはり泣くものではない。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。