七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 40話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 40話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」40話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 40話

 今日は薄茶色の熊の着ぐるみを着て、ディアルドに馬に乗せてもらい北部騎士団へやってきた。
 ダルディエ領は国の北にあって寒く、今日も雪が降り積もっていた。私はというと、風邪をひいては大変と、着ぐるみの下に重ね着をさせられているため、着ぐるみのシルエットがぷくぷくとまん丸である。

 これだけ重ね着しているのだから、外で見学させてもらいたかった。しかし、それはダメだと言われ、騎士団のある城の二階の、大きいガラスの前に私は陣取っていた。このガラス、天井から床までガラス張りなのだが、開閉できない仕組みなので、私が窓にへばりついても危なくないから、ということらしい。大きい窓から日の光が届いて暖かい。

 私の後ろにはちょっと大きな狼、つまり三尾が二匹座っていた。三尾パパと三尾ママである。私が騎士団へやってくると、やたらと私をじっと見てくるのではじめは怖かったが、慣れてみると意外と面倒見のいい狼なのだ。毛並みが綺麗でモフモフで、三つある尻尾がこれまた手触りがいい。やけに私を構ってくれるので、子供が好きなんだと結論づけた。

 子供好きといえば、騎士もそうだ。男ばかりで屈強な人も多く、子供なんて苦手そうに見えるのに、私が来ていると知ると必ず顔を見に来る騎士がいるし、窓の外から手を振ってくれる騎士もしるし、着ぐるみ来てる私をデレデレと見ている人もいる。騎士はなかなか家庭的な人が多いのかもしれない。

 三尾の体を背もたれにして、窓の外を見学する。
 現在シオンが一回り大きい人と剣の練習試合中である。私がこれまで見た感じだと、兄たちの中で一番戦闘センスがあるのはシオンかもしれないと思ている。剣さばきも鋭いが、格闘術もすごくて、体格の大きい相手でも地面に沈めている姿をよく見るのだ。もちろん私の素人感覚なので、実際は誰が一番強いのかは分からないが。

 シオンに限らず、兄たちは訓練しているので、みんななかなか戦闘が強い。エメルだけは勉強に比重を置いているので、あまり騎士団へ来ているのを見たことがない。それはパパと話し合った結果のようなので、それはそれでいいらしい。みんなそれぞれ得意不得意があるので、得意なことを伸ばせばいいと思っている。

 私も将来的には騎士団で剣術を学びたいが、許可が出る可能性は低いだろう。なんせ、走る事さえ止められるのだから。相変わらず熱が出たりお腹壊したり、思い通りにいかない身体である。

 最近も悪夢を見ているが、忌々しいとは思いつつも、その夢を思い出して分析すると、見えてくるものがある。

 まずは前世。
 ウィタノスは私を撃つ前に言っていたこと。
 それは「これで八九戦八二勝六敗一引分」だということだ。

 「これで」というのは、『前世で』ということだろう。
 前世で殺されることを含めて、「八九戦」してウィタノスが「八二勝」したということだ。
 前世でもそれより前でも殺されていることを考えると、八二回私は殺されていることになるのではないだろうか。

 そういう意味で考えるなら、「六敗」というのは、私が勝ったということである。つまり……

(私がウィタノスを殺した?)

 ぞっとする感覚が背中を走り、ぶるっと震える。
 目を瞑っていた三尾が反応し、私を見た。

(六敗については、今考えるのを止そう)

 現在のところ、私がウィタノスを殺す夢は見ていない。だから「六敗」の意味を今考える必要はないはずだ。それに分からないのは「一引分」という言葉である。引き分けを示す意味は何なのか、考えても答えはでない。

 今考えるべきは、八二回殺されているということだ。これが間違いないと仮定すると、待ち受けるものは、せっかく生まれ変わった現世でも殺されるかもしれないということである。

 前世でも、それより前でも、私を殺したウィタノスは自殺してすぐに後を追ってきた。そして夢の中では、ウィタノスはいつも私と同じ位の年齢だったということである。

 私の考えが正しいならば、私は殺され生まれ変わり、すぐ後に死んだウィタノスが同じく生まれ変わり、ウィタノスが転生する時の年齢が私と同じである可能性が高いということだ。
 今も、この世界のどこかで三歳のウィタノスが、いつ私を殺そうかと計画立てているかと思うと、泣きそうだった。

 せっかく転生したのに、また殺されるなんて、まっぴらである。
 どうにかして対抗する力を得たい。そのために兄たちのように剣術を磨くことも考えているが、私の体は病弱であるし、両親に許可を得られない気がする。

 いつ殺されるか分からないことに気づいた今、ただこうやって騎士団の見学をしている中、何もできない自分に焦る気持ちだけが募るのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。