七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 36話 後半双子視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 36話 後半双子視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」36話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 36話 後半双子視点

 そこは星空の海の中だった。
 窓に手を付き、暗闇の中を進む中、遠くのほうで星が瞬くのはいつ見ても飽きない。

 私がいるのは宇宙船の中だった。宇宙港を出発して半日が経過し、この旅客用の船が次の目的地に到着するのは二週間後の予定だった。

 私の隣では、仕事の同僚であり恋人でもある彼女が、同じように外を眺めている。船の中にあるレストランで夕食をして、部屋への帰り道、わざと部屋を暗くして星を楽しめるようムード満点に演出された部屋へやってきたのだ。

「カルフィノス」

 後ろから話しかけられ、ギクリと肩が揺れた。
 振り向けば、見知らぬ男。しかし、やはり知った人。

「ウィタノス」

 嬉しそうに笑った男は、右腕を左下から右上へ斜めに振り上げた。

 隣にいた彼女の悲鳴が聞こえる。
 首を鋭利な刃物でざっくりと切られた私は、床に倒れ込んだ。
 ヒューと口から声にならない空気が出ていく。私の視線の先には、止めに入った人たちを嘲笑うかのように、ウィタノスが自身の喉を刃物で割いた。

 わらわらと周りに人が集まるが、もう私の心臓は止まっていた。

◆ 以下、双子視点

 部屋中にミリィの泣き声が響く。

 うなされていた妹を起こした双子は、火が付いたように泣き出した妹をあやすも、一向に泣き止まなくて途方に暮れていた。
 いつもは多少泣いてもすぐに再び眠りに付くのに、今日はどこか切羽詰まったような、そんな空気を感じる泣き方だった。

 ドアが勢いよく開き、シオンが入室してきた。部屋が隣なため、泣き声で目が覚めたのだろう。

「何、この泣き方」

 妹の異常な泣き方に、シオンは眉を潜めている。

「分からない。うなされていて起こしたんだけれど、その後泣き出して止まらないんだ」

 アルトが抱っこしていた妹をシオンに渡す。妹は興奮しているのか、体が熱くなっていた。

「ミリィ。どうした。……起きてるんだよな?」

 最後の一言は双子への質問だった。

「起きてるよ。なんか喉? とか切った? とか痛い? とか言ってたんだけど、よく分からない」

 騒ぎを聞きつけ、ジュードとエメルもやってきた。

「何? どうしたの?」
「ミリィ? 怖い夢見たの?」

 みな心配で妹の周りに集まる。

「ミリィ、喉切ったの? 痛いのか?」

 シオンが質問し、しばらくすると険しい顔をする。

「……喉切られたって言っているんだけど」
「は?」

 シオンは妹の顔を無理やり上を向かせ、喉を確認するが、もちろん何もない。喉は綺麗なままだ。
 いつのまにか両親まで部屋にやってきていた。

 結局、夢の中でまた怖い夢を見たのだろうという結論になり、妹がやっとのことで泣き止んで眠りにつくと、その場はお開きとなった。

 元の通り、妹を双子が左右から囲んで三人でベッドに横になる。妹の目は泣きはらし、目の周りに涙が付いていた。すっかり目は覚め、眠れそうにもないのは双子の片割れも同じようだ。

「……喉切ったりする夢って見るもの?」
「俺は見たことない」
「だよな? 転んで怪我する夢なら見たことあるけれど」
「それは俺もある」
「……喉切ったりって、どういう状況?」
「……自分で切ったり」
「それって自殺じゃん」
「……もしくは他の人に切られたり」
「それって殺されたってことじゃん」
「喉を切るって、普通事故ではありえないよね?」

 二人は顔を見合わせる。
 そうなのだ、『喉を切る』というのは、『手を切る』とは違い、事故でそうなったとは想像しにくいものだと思うのだ。偶然事故で喉を切ることは、ありえるものなのか?
 それとも双子の考えるように自殺か他殺か? どちらにしても、二歳の妹が見る夢にしては、自然とは言いにくい事案である。
 夢では普通にありえないことを見ることがある。それは理解している。とはいえ、喉を切るなどとそんな殺伐とした夢を幼い妹が見るなど不憫すぎる。

 その後二人は無言で考えていると、いつの間にか眠りに落ちているのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。