七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 32話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 32話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」32話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 32話

 帝都に到着して二日が経過し、私の熱も微熱程度まで下がった。そうなると急に元気が出るのが子供というものだ。高熱の時はぐったりして両親や兄に心配かけていたのは知っているが、ちょっと元気が出るとベッドでずっと寝ているのは暇すぎて動きたい。

(最近、大人の感情が薄れつつあるのよね)

 前世で大人であった頃は我慢できていたことが、できなくなりつつある。駄目だと思うことが、子供だしいいよね? と両親や兄に甘えることが増えたのは確かだ。それではいけないと思いつつも、自分を自制しないでもわがままを許してくれる両親や兄を頼っていい年齢であるうちは、甘えておこうという感情が大きくなっている。

 そして今日もわがままを言ってみるのだ。

「おちょといく」

 起き上がって走り回ろうとする私を、膝に抱えて自由を制限するママは、困った顔をしていた。

「お外は行けませんよ。まだ熱があるのですから」
「ママもうねつない」
「ミリディアナちゃん……、そうだわ、ママが本を読んであげましょう、ね?」
「ほんいや」
「まあ、困ったわねえ」

 この押し問答をしばらくしていると、シオンが部屋にやってきた。熱が出ていても、夜はこのシオンが添い寝をしてくれている。私の熱がもしかしてうつったりしないかと思っていたが、私の熱は、いつもどおりうつるタイプの熱ではなかったようだ。シオンは元気である。

「どうしたの?」

 ママの腕の拘束から抜け出そうと、腕を上げて縄抜けのつもりで床に脚を付けようとしていた私を、抱き上げなおしたシオンはママの隣に座る。ママではなく、今度はシオンに拘束されてしまった。

「ミリディアナちゃんがお外に行きたいと言うのだけれど、まだ微熱があるし、お外に出すのは危ないわ。走ってしまうかもしれないし」

 シオンは少し考える素振りを見せる。

「じゃあ、俺が抱っこして屋敷内を散歩するのはどうですか」
「さんぽしゅる!」
「抱っこして運動させなければいいですよね」
「そうね……頼んでいいかしら、シオン」
「いいですよ」

 妥協案が出ました。私としては、帝都の屋敷は初めてなので、屋敷案内でも楽しみです。

 シオンは私を抱え、さっそく部屋を出る。
 帝都に到着した時に屋敷の建物自体はチラっとしか見れなかったが、部屋を案内してもらう限り、かなり大きいのを感じる。

 私の部屋は領にある部屋より小さめではあるが、ベッドルーム、衣裳部屋、メインの部屋、バスルームと四部屋ある。領の本宅と同じように、私が生まれた時に改装したらしい。
 両親の部屋や兄たちの部屋もそれぞれあって、パパの執務室、図書室、食事室、客室、パーティーを開く部屋、何に使うのか分からないような部屋など、多数の部屋数があった。

 どうやら六階建てであるこの屋敷の、使用人専用の部屋以外を案内してもらった私は、シオンに
提案してみた。

「しおー、おちょといく?」
「外はダメだ」
「ちょっとだけだお」
「ダメだ」

 シオンは手ごわい。可愛くおねだりしているのに、なびかない。

(抱っこでいいから、ちょっと外に行きたいのー)

 最近は、シオンに対して心の中で会話している。その方が発音よくちゃんと話せるからだ。もちろん子供が話して違和感のない内容に留めているが。

 ただ、心の中での会話は私側だけだ。シオンが心の中で話していても、私には聴こえないからである。つまり、私は心の中で話して、シオンが声に出して返すということである。
 おかげで、侍女などにシオンが独り言を言っているように見られてしまうことがあるが、シオンは気にしていないようなので私も気にしないようにしている。

(お願いシオンー)

「外はダメだ」

 うん、手ごわい。心の中での会話でもダメでした。
 ぷくっと頬を膨らませて分かりやすく拗ねた私の頬を、シオンは指先で潰す。口から空気の抜けるぷぷぷと音が鳴る。

「今日はダメだけど、明日もう少し元気になったら、母上が外に行っていいと言うかもな?」
(ほんと?)
「そのためにも、もう部屋に帰って大人しくしてろ」
「あい」

 シオンの言葉で、明日の楽しみができた。
 機嫌の良くなった私を連れ、シオンは部屋に戻るのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。