七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 30話 ジュード視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 30話 ジュード視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」30話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 30話 ジュード視点

 夕方、夕食前のわずかの時間、談話室ではダルディエ家の兄妹たちが集合し、団らんの一時を過ごす。
 今日は集まりが良く、兄妹全員が早々に集まっていた。それぞれソファーや椅子に座り、穏やかに今日あったことなどを報告する。

 その報告には妹ミリディアナのことに関するものもあり、それを議題に『兄会議』たるものを実施することもしばしば。

「ちょっとミリィに関して気になることがある」

 これは議題だということを知らせるために、手を上げてジュードは告げた。
 話題のミリィは、ジュードが膝の上にのせていた。その妹は母の猫ココを抱きしめている。

 ココの体は猫にしては大きめで、体の小さいミリィと今の体格は同じ位だ。そんなココを「かーいーねー」と言いながらスリスリしている姿こそが可愛くて悶絶しそうだ。

「まずは見ていてくれ」

 ジュードはミリィを後ろから覗き込んだ。

「ミリィ」

 妹はジュードへ顔を向ける。

「俺は誰でしょう?」
「……にーたま」
「うん、そうだね」

 ディアルドをはじめ、他の兄弟たちの顔に「何が始まった?」と言いたげな表情が浮かんでいる。それを目で「待ってくれ」と制し、続ける。

「じゃあ、この人は誰?」

 ディアルドを指して問う。

「にーたま」
「じゃあ……」

 次はシオン、アルト、バルト、エメルと指していき、それを聞いた兄弟たちは叫んだ。

「全員、『兄さま』じゃないか!」
「そうなんだよ!」

 何がいいたいのかって?

 ミリィの言う「にーたま」が「兄さま」なのは分かる。まだ舌足らずなため、発音がはっきりしないのは別に問題じゃない。むしろ可愛くて俺は好きだ。

 それは置いておいて。

 問題は全員「兄さま」であり、「ジュード兄さま」でも「ディアルド兄さま」でもないことである。

「もしや、俺たちの名前を知らないということ?」
「その可能性を心配している」

 ミリィからすれば、全員「兄さま」だ。間違ってはいない。俺たちもそれぞれが「にーたま」と呼ばれることに誰も違和感などなかった。それはそうだ、間違っていないのだから。

 とはいえだ。兄としては、名前を知っていてほしいという願いがある。いずれは名前を読んでほしい。

「気づかなかった……」
「俺も」
「ところでミリィは自分の名前は知っているのかな」

 兄たちが顔を見合わせる。
 俺はミリィの鼻を指でちょんちょんとした。

「この人は誰?」
「……ミリィたん」
「うん、知っているみたいだ」

 「ミリィたん」が「ミリィちゃん」と言っているつもりなのも理解する。省略しない氏名についてはいずれ覚えるとして、今はこれでいい。あとは。

「じゃあやっぱり俺らの名前だよね」
「アルト兄さまって、ミリィ言ってみて」
「俺はバルト兄さま」
「シオン兄さま」

 それぞれが前のめりになってミリィに言うが、言われた本人はこちらを無視してココに意識を向けている。

「ダメだ」

 どうやら名前を呼ばせる作戦は失敗である。

「そもそもだけど、今のミリィにはディアルド兄さまやジュード兄さまなんて、言いづらいんじゃないか?」

 ディアルド兄上の言葉はもっともだと思った。
 その後、まだ舌足らずで発音がはっきりしないことも考慮して、まずは名前を憶えてもらうことを重視し、「ジュード兄さま」ではなく「ジュード」などの名前呼びを練習させることに決定した。

 兄会議に結論が出たころ、使用人が食事だと呼びにやってきた。
 最近はミリィも一緒に夕食を取ることを始めたため、妹を抱きかかえ移動するために立ち上がった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。