七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 29話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 29話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」29話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 29話

 とうとう私ミリディアナは二歳になった。

 月日が過ぎるのは早いもので、よたよた歩きだったのが、今では走ったりもできる。時々転ぶが、内心、それは服のせいではと思っていた。なぜなら、服がひらひらで全体的にふわっとして、距離感がつかめずスカートが物にぶつかったり、歩きづらいんですよ。服自体はすごく可愛いのだけれど。

「ママ見てー」

 ママの飼いネコのココを抱え、よたよた歩いてママに見せる。ココは重くて、持って歩けるのは数歩が限界だ。

「あら、抱っこできたのね。ミリディアナちゃんは力持ちですね」

 すっかりココとも仲良しで、ココは私の部屋へ勝手に来るので遊んであげることも多い。いや、もしかしたら私が遊ばれている可能性もあるけれど。
 そろそろ重さが限界なのでココを床に起き、ココの体を撫でる。ココは嫌がらず目を細め、私にされるがままだ。

 見た目は赤ん坊から幼児へ変化しているため、体も強くなったと言いたいところだが、相変わらず熱が出たり体調悪くなることが多いのが悲しいところだ。さらに、最近食べられるものが増えてきたことで、お腹も壊しやすい体質なのだと知ることとなった。

 なかなか難解な身体であるため、両親や兄たち、使用人たちも心配性で、少し走るだけで止められてしまう。ちょっと大げさ過ぎるとは思うが、何が原因で体調が悪くなるのかはっきり分からないため、つまらないとは思いつつも、私も我慢しているところだ。

「ママー、にーたまのところね、えんきょうえてるねー」
「エメルのところで勉強するのね、行ってらっしゃい」

 さすがママ、娘翻訳機。
 エメルは今の時間は図書室に隣接されている勉強部屋で、家庭教師と勉強中である。

 廊下へ出ると、私の後ろでは侍女が一人ついてきていた。階段など家の中といえど、幼児には危ないところがたくさんあるため、まだこうやって家の中でもお供が付くのだ。

 図書館へ入り、勉強部屋のドアを開ける。

「にーたま、いっちょにえんきょうていいー?」
「いいですよ」

 家庭教師がエメルの横に私専用の椅子と紙とクレヨンを用意してくれる。この家庭教師、優しくていい人なんだよね。

「ミリィも勉強して偉いですね」
「えへー」

 エメルはいつも褒めてくれるのだ!
 勉強といっても絵を描くだけだけどね! まだ字は書けないけど、文字をエメルが時々教えてくれるから、字を書く練習だってしているのです。ミミズみたいな字だけど、まだまだ伸びしろいっぱいですから!

 といっても、実は字は読めるのですよ。これが謎現象なのですが。字が最初から読めるなんて、気持ち悪がられたり逆に天才と思われるのも嫌だから誰にも言っていないけれど、これって変だよね? たぶん生まれた時から言葉が理解できたことと同じような現象だとは思っている。

 前世の記憶があることと関係しているのかもしれない。
 ただ文字は読めるけれど、この世界の常識や情報を知らないので、読めるだけというだけなのだ。つまり、『アップル』という英語は『あっぷる』と読めるけれど、それをリンゴだと知っていなければ『あっぷる』って何? となるよね。そう万能ではないの。

(結局、勉強するしかないのよね)

 文字が読めた時は、もしかして勉強しなくていいの!? 人生イージーモード! とぬか喜びしたアホは私です。

 エメルの邪魔にならないように、大人しくじのじのしていたところ、家庭教師が絵を見て感心したように言った。

「お嬢様お上手です。それは鳥ですね」
「鳥? 馬車ですよね」
「……さんびだお」

 三尾です。『ちょっと大きい狼』です。なんでだ、三つ尻尾描いているのに。
 うーん、今のところ、私に絵心はなさそうだ。

 実は泣きそうになった三尾との対面後、何度か騎士団で三尾と会っている。まだ背中に乗せてもらうなんて怖くてできないが、毛並みは何度も触らせてもらえるようになったのだ! すごくふさっふさの毛並みで、手触りがいいのです。

 慣れてくると狼の切れ長の目が素敵で、顔に抱き着いても嫌がったり食べられたりもしないのが分かり、今の私は三尾が大好き!
 むしろ怖がっていた最初の頃のほうが、逆に三尾が私を見てしゅんとする感じで、今思い出すと嫌われたとショックを受けているようにも思える。たぶん子供が好きなんだな! すごく私を見てくるしね!

 ちなみに、騎士団には三尾は五匹いることが分かった。つがいが二匹と、その子供が三匹である。始めて対面した二匹は子供の方で、親はもう少し体が大きかった。どうも名前はないようで、私の中で勝手に「三尾パパ」「三尾ママ」「三尾長男」「三尾次男」「三尾三男」と名付けている。命名センスないって? それは前世の時からそうだから仕方ないの。

「分かりました、次はミリィを描いたのですね」
「……」

 さっき当て損ねたのを挽回するようにエメルが言う。
 なんでだ。耳もある、尻尾もある。これはどう見ても猫のココでしょ!
 大丈夫、まだ私には伸びしろがある。そう思い込むことにした。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。