七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 27話 前半ディアルド視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 27話 前半ディアルド視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」26話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 26話 前半ディアルド視点

 ディアルドの朝は早い。本来であればメイドが起こしに来て起きるのだろうが、いつも夜明けとともに目が覚めるため、目が覚めたらそのまま起きるのが常態化している。
 少し眠気眼のまま横を見る。

 妹が寝ているはずなのだが、いない。

 一気に目が覚めて、がばっと起き上がった。

(どこいった!?)

 ベッドを見渡すと、ミリィはベッドの下の端に小さく丸まって寝ていた。

「……何でそんな端っこに」

 毎度思うが、すごい寝相である。前回は右に寝ていたはずが、朝起きたら左に妹が寝ていて、どうやってそちらに移動したのか謎すぎる現象だった。
 今日はうつ伏せになっているものだから、息できているのか心配になり近づいた。

(……うん、息している)

 ほっとしていると、ミリィがもぞもぞと動く。うにゃむにゃ言いながら、仰向けになり、うっすらと目を開けた。仕草が可愛くて、つい頬が緩んでしまう。

「おはよう、ミリィ。もう起きる?」
「……にぃた」

 両腕をこちらに向けるので、ディアルドは妹を抱き上げた。腕の中でもぞもぞと手を顔に当て、欠伸をしている。しかしそのまま二度寝をする様子もなく、目はパッチリ開いていた。

 ミリィは寝起きが良い方だとディアルドは思っているが、双子の話を聞くとそうでもないようにも思える。双子はいつも同じベッドで寝ているが、あの二人はかなり寝起きが悪い。起こされてもなかなか起きない。その双子と妹が添い寝で一緒に寝ている時は、妹も双子が起きるまで起きないらしい。

 つまり一緒に寝る兄弟に合わせているようにも思える。もしくは人一倍気配に敏感なのだろうか。一緒に寝ている兄弟の寝起きに反応して目が覚めるのか。

(まあ、どちらでもいいか)

 妹を抱いたままベッドを抜けると、部屋の外へ出た。そのままミリィの部屋へ移動すると、部屋の中では妹の侍女が待ち構えていた。

「おはようございます、お嬢様。ディアルド様」
「おはよう。ミリィ、じゃあまたあとでね」

 妹を侍女に渡すと、その頬にキスを贈り、部屋を出た。

 今日の予定は、確か騎士団へは行かずに父上の仕事の手伝いだったな、と思い出す。手伝いといっても、今はまだ横で仕事を見つつ覚えていく段階だった。ということは、今日は体を動かす機会がなさそうだから、今の内に体を動かしておきたい。

 ディアルドは自室で薄手の簡単な服に着替えると、外へ走りに向かった。

◆ 以下、ミリィ(主人公)視点

 さらに季節は過ぎ、もうすぐ秋という頃。
 私は温室にいた。少し離れたところに待ち構えているママめがけて、両手を前に出して一人でゆっくりと歩いて向かっている。近くでは侍女たちが期待と緊張の目で私を見守っていた。

 温室の中は広く、色んな花や果物の木など、植物が見目よく配置され、庭師の腕の良さがうかがえる。その中でお茶も楽しめるようテーブルや椅子もあり、ちょっとしたお茶会も開けそうだ。

 私がママへ自力で歩いて到達すると、侍女たちから歓声があがる。

「ミリディアナちゃん! よく歩けましたね! 素晴らしいわ!」
「お嬢様! すごいです! 歩きがお上手です!」

 ママも侍女たちも褒め上手である。悪い気はしない。
 ママに抱き上げられ、えへえへと笑っていると、パパがやってきた。しかもその姿は騎士姿! 今の私のイチオシ姿である。

「フローリア」

 パパとママはキスを交わす。

(両親のキスなんて、普通気まずい気持ちになると思っていたけれど、全然そんな気にならないし、むしろすごく絵になるから見ていたいと思うのは何故)

 ママに抱っこされたままなため、近場でガン見である。映画のワンシーンのようだと思っていると、キスを止めたパパの目が私に向いた。

「ミリディアナ、おいで」
「ぱあぱ!」

 両手を出されれば、パパファンとしては行かねばなるまい。
 喜々として向かってくる娘に対し、パパはおでこにキスをくれる。

 ちなみにだ、今の私の言葉のボキャブラリーは、「ママ、パパ、にーたま(お兄様のつもり)、イヤ、うん」だけである。言葉って難しいのだ。思ったように発せない。他にも話すことはできるが、言葉になっていないというか、言いたいことのとおり話せなくて、自分が嫌になるので話さないようにしている。

「今日は騎士団へ向かうのですね」
「そうなんだ、今からね。だから君に挨拶にきた」

 私を抱えたまま、パパはママの手を取ると、その甲にキスをする。

(どうして、こう、絵になるの)

 言っておくが、この光景は日常茶飯事である。いつまでも甘々空気の両親だ。

「気を付けて行ってらして」
「ああ」

 また両親はキスを交わし、パパは私をママへ渡そうとする。しかし私はパパの服を握ったまま離すまいとしていた。

「まあ、ミリディアナちゃん、パパはお仕事に行くので、離しましょうね」
「いや!」

 私だって、もう少しパパと戯れたい。愛でられたい。だからちょっとだけわがままを言ってみる。

「……嫌ですって、ジル。どうしましょう」
「……どうしようかな。うーん。一緒に来るか?」

(え、嘘でしょ。行っていいの?)

 ちょっとだけ駄々こねて、さよならする予定だったのに、こうもあっさり連れて行ってくれそうとなると、これはもう、このまま勢いにのるしかないのでは!? パパと一緒にいるチャンスでしょう!

「どうする? 一緒に行くか?」
「うん!」
「まあ、いいお返事ですこと」

 くすくす笑うママをみて、このくらいのわがままなら、許容範囲なのか。今後のために、どのくらいならば許されるのか、ちょっとずつ実験しなければ、と悪い考えを顔には出さず嬉しそうに笑う。

 かくして、急きょ私はパパについて騎士団へ行くこととなった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。