七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 24話 後半ディアルド視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 24話 後半ディアルド視点

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」24話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 24話 後半ディアルド視点

「さ、ミリディアナちゃん、そろそろ寝ましょうね」

 私が地下から戻ってから、ママは私から離れようとしなかった。いつもは風呂から寝るまでは侍女たちの仕事である。そして私が寝る時間は家族の夕食時間と同じなため、普段なら寝るまでママが側にいることはないのだ。しかし、憔悴しきった顔でママに出迎えられた時には、心配させてごめんと内心謝り倒した。地下での大冒険が思いのほか楽しかったと感じた気持ちを反省する。

 地下からの帰還時点で、いつもより夕食時間が大幅に遅れていたため、ママに見守られながら、夕食、風呂をすませ、ほとんど駆け足で寝る時間である。疲れているであろう私を早く休ませたいということなのだろう。

 ベビーベッドに寝かせられると、ママが頭をなでてくれる。

「今日は疲れたでしょう。ゆっくりお休みなさい」

 私は目を瞑る。しばらくすると、ママや侍女たちが部屋から出ていく気配がする。

(まだよ……)

 これからが私の本当の時間だ。ただ確実に寝たと思ってもらえるまで、しばらくベッドでじっとしている。

(そろそろいいかな?)

 目を開けて見渡すが、誰もいない。うっすらとロウソクが灯っているため、地下より断然明るい。

(しゃー!! 今日はやりたいことがあるのよね!)

 ベビーベッドの中でしか動けないため、遊べるものは限られている。だが、今日は試したいことがあるのだ。ベビーベッドの柵は普段開け閉めしないものの、柵の一部が開閉できるようになっている。開閉するには、ベビーベッドの下の方にある閂のようなものを二つ、引っこ抜かなければならない。そこで、寝るときに侍女にベビーベッドに置いてもらったおもちゃが役に立つのではないかと思うのだ。

 閂の位置までは、柵の中にいる私からは手が届かない。そこで、丸い輪っかのおもちゃの登場である。これを閂に引っ掛ければ、少しずつ閂をずらすことができるんじゃないかと思うのだ。

(やっぱり柵の中だけじゃ、夜の間中退屈だもの。せめて部屋の中を動き回りたい)

 私は計画通り輪っかを使って閂を外す作業に移る。うまくひっかけられず苦戦しながら、また力もないため、かなり時間はかかったが、やっと一つ閂が取れる。

(やったー! 残り一つ!)

 そんな歓喜が失敗だった。思わず万歳して喜んだところ、輪っかのおもちゃが飛んで柵の隙間からベッドの外へ転がっていったのである。

(あああああ! やってしまったぁぁ)

 コロコロ転がり、暗闇でどこまで転がっていったのか分からなくなってしまった。柵に顔を引っ付けて未練がましくそれを見ていた時、部屋の扉が開いた。

 一瞬眩しくて目を細め、目を凝らすと、そこに立っていたのは兄たちとパパ。

(……え!? どうして)

「本当に起きてる! ミリィ、どうして寝てないんだ!?」

 見つかったらダメなやつが、見つかってしまった。まさか寝ているかどうか確認しにくるなんて。

◆ 以下、ディアルド視点

 時間は少し遡る。
 ミリィの無事を確認した後、ディアルドたち兄弟たちは夕食を取り、談話室でくつろいでいた。そこに父上が入室してくる。

「旦那様、お食事はどうなさいますか」
「……今日はいい。ワインと軽食を用意してくれ」
「かしこまりました」

 下僕に指示すると、父上はソファーに座った。

「母上はどうですか?」
「やっと落ち着いた。今日はミリディアナが寝るまで側にいるそうだ」
「それがいいですね。ミリィもそのほうが安心するでしょうし。そういえば、侍女の処分はどうなさるつもりですか?」
「処分はしない。あれは不可抗力だ、あんなところに穴があるとは、誰も思いもしない」

 ディアルドが頷いた時、シオンが眉をよせた。

「それでいいんですか? ミリィから目を離したのは間違いないんですよ。今回は穴に落ちて助かったけれど、打ちどころが悪かったらミリィは!」
「その通りだ。目を離したのはいけなかった。だからそのあたりの改善はさせるが、侍女を変えることはしない。ミリディアナも侍女に懐いているし、今変えるのはかわいそうだろう」

 シオンは黙ってしまったが、納得いってはいなさそうだ。それは双子も同じようで、感情が表情に表れている。

「他に穴がないかネロに確認させているし、今後はこういったことは起きない」
「そうそう、もうあの部屋は大丈夫。全体的に確認したから、あんなことはもうないよぉ」

 ネロが現れた。ネロはいつも神出鬼没だ。

「他にいくつあった」
「それがさぁ、あの穴だけだった。お嬢はたった一つの当たりを引いたってこと」
「えぇぇ、ミリィは強運なのかな? 不運なのかな?」
「たんこぶで済んだところを見ると、強運じゃない?」

 アルトとバルトが驚愕しながら言った。

「そのたんこぶもねぇ、穴から落ちたときにできたやつじゃないと思うよ。地下で確認したけど、あの穴の出口は、頭から落ちるような作りになってなくて、すべり止めもあったし、怪我せずに着地できてると思う。その後、暗闇の中ウロウロしていたみたいで、その時頭から壁につっこんだ時にでもできたやつだよ」
「え! ミリィ、ウロウロしちゃってたの!?」

 ジュードの驚愕の声に、ネロは頷く。

「しちゃってたんだよぉ。地下は割と罠が多く仕掛けられててね、その仕掛けをバンバンひっかけながら、どんどん進んでたよ。あの罠の数をひっかけてる割には、一度も当たらずけろっとしてるんだもん。もうビックリ! あはははは」

 ――笑えない。ネロ以外はみな青い顔して黙り込む。

「強運すぎるよねぇ。ああそうそう、みんなは真似しちゃダメだよ。裏側に行きたい時は、僕らの誰かを必ず連れていくこと。どこに罠があるか分からないからねぇ? ということで、いったん俺は地下に戻るよ。罠を仕掛けなおしてくる」
「……わかった」
「あ、そうだ、もう一つ言っておくことがあった。お嬢、ここのところ夜ずっと起きてるよ」
「なんのことだ?」
「言葉通りだよ。夜ずーと起きてる。朝方まで。その分、昼寝てるんじゃないかな。昼は寝てるかは確認できてないけど、どお?」

 ネロがいきなりディアルドを見た。ディアルドも昼は訓練場にいるため、ミリィの状況はあまり分からない。

「エメル、ミリィは昼どうしてる?」
「確かに寝ています。朝から夕方まで、食事時間以外はずっと。ときどき遊んでるときもあるけれど、前より良く寝るなって、ジュード兄さまとも話していたんです」
「そうなんです。最近、会いに行っても寝てることが多くて、寂しいなって、エメルと話していて……。――え? まさか、夜起きている代わりに昼寝て、調整しているっていいたいの?」
「俺はそうかなって思ってたよぉ。変わった赤子だよねぇ。しかも夜天井から覗いてるとさ、俺を的確に見つけて、いつも俺とにらみ合い。天井っていっても、穴なんて明るいうちでも見えないくらい小さなやつなのに、よく気づくなーって。あの鋭さは、やっぱり公爵の子だなって思うよ、あはは」

 相変わらず、笑っているのはネロだけである。

「……いや、笑いごとじゃなくない!? なんで夜寝ないの? いつから?」
「うーん、ここ二十日くらいかなぁ。夜は元気に柵の中で遊んでるよ。たぶん今も遊んでると思うけど……理由なんて赤子にあるのかね? たださぁ、俺は昼夜逆転は体に悪いって思って。赤子は夜きちんと寝たほうがいいと思うけど」

 ディアルドが立ってドアへ向かうと、後ろからジュード以下弟たちが後へ続く。確認しなければならない。ミリィが本当に起きているのかどうか。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。