七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 20話 パパ視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 20話 パパ視点

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」20話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 20話 パパ視点

 執務室の部屋に入ると、椅子にドカっと座り片手で頭を支えた。今屋敷中は大騒ぎだ。まだ歩けもしない赤ん坊の娘が消えたのだから。ジルは深いため息をつく。

 どうせ屋敷の騒ぎで知ることになるだろうから、夫のジル自らフローリアに知らせたが、可哀そうに取り乱して最後は倒れてしまった。だが、他の誰かに知らされるよりも、状況が変化するたび、ジルが伝えてあげたほうがフローリアにはいい。

(それにしても、いったいミリディアナはどうやって消えた?)

 娘専用の三人の侍女たちの話では、常に三人の誰かが目を離さないようにしていたが、この時だけはたまたま片付け等で三人が一斉に目を離しており、その時間が十秒ほど。普段であれば、そのくらいの時間であれば、許容範囲だ。特に叱るほどのことでもない。三人とも嘘をついているようでもなかったし、例えば誘拐など、そういったことに手を貸したとも思えない。

 執務机の上には、侍女三人の経歴の書かれた用紙が置いてあった。家令のセバスに頼んであったので、持ってきて置いてくれているのだろう。経歴書を見る限り、怪しい点はない。そもそも、娘の侍女を任せるのだから、少しでも怪しいものは最初から排除している。これは侍女たちから完全に疑いを外す作業にすぎない。

 侍女たちでないとすれば、そして侍女たちの話を信じるなら、ミリディアナは本当に十秒そこらで消えたということになる。

(壁に手をついて遊んでいたと言っていたな)

「……壁か」

 まったくない、とは言い切れない。

「ネロ」
「申し訳ありません。ネロは現在別の案件で動いております」

 この屋敷の主人であるジル以外いない執務室に、突如現れた男が言った。

「そうだった……」

 他でもない、ジル自身が命じていたのだった。公爵家では影と呼ばれる諜報や暗殺などの裏方を担う部隊がいる。その筆頭がネロだ。古株で屋敷のことなら、だいたい何でも知っている。

「呼び戻しますか?」
「……お前、壁の中には詳しいか?」
「我々が行き来する場所、その他、私も隠し部屋等知っている部分はありますが、細部となりますとネロほどは詳しくありません」
「……そうだろうな。では、お前は壁の中の分かる範囲で娘の捜索を。そしてすぐにネロを呼び戻してくれ」
「承知しました」

 男は来た時と同様、音もなく去っていく。

 今頃ミリディアナは泣いているだろうか。ケガをしていないだろうか。あんなに小さな体で、誰も知らないところにいるかと思うと胸が張り裂けそうだ。一刻も早く、見つけ出してあげなければ。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。