七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 19話 後半エメル視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 19話 後半エメル視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」19話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 19話 後半エメル視点

(ここはどこ?)

 じーっと目を凝らすと、うすぼんやりと何かの影が見える。限りなく真っ暗闇には違いないが、それでも物の形がうっすらとでも見えるということは、ここにはどこからか光が漏れてきているということだ。

 私が壁から落ちて数秒。あの穴から下に真っ逆さまに落ちていくのかと思いきや、途中で斜めへと方向が変わり、遊具滑り台の要領でこの地に落ちてきた。滑ってきた時は、地面に着いて何かすべり止めのような作用があったようで、腹ばいのままくるくると床と平行に体が回って体が止まった頃には若干目を回していたが、今では落ち着いて辺りを見回す余裕も出てきた。

(とにかく頭から地面に落ちなくてよかった。脳天かち割ってたら、赤ん坊であの世行きだったわ……)

 下に落ちたということは、邸宅の地下部分になるのだろうが、ここは地下何階あたりになるのだろうか? 今いるところは、少し天井が高く、ホールにいるように音が響く。もしかしたら大きな声を出せば地上にいる誰かに気づいてもらえる可能性はあるが、それは確実な方法ではないし、声を出し過ぎて体力消耗するのは得策ではないように思える。

(娘が急に消えたんだもの、だれか探しに来てくれるでしょう。それまでじっと待っとくのがいいんじゃない?)

 こんな状況なのに、以外と恐怖を抱いていないな、そんな自分に笑えてくるが、両親や兄たちに対する絶対の信頼感がそうするのかもしれない。どうせこんなちびっ子では、何もできない。だったら大人しくしているほうがマシだ。

(ということで、寝てしまおう。今の内に寝ておかないと、夜眠くなっちゃう)

 地下で暗闇とはいえ、まだ昼だ。悪夢は見まい。うつ伏せのまま顔の下に手を引いて枕替わりにし、私はスヤスヤと寝入るのだった。

◆ 以下、エメル視点

「どういうことだ? ミリィが消えたって」

 ミリディアナが消えた。侍女たちは家令に報告し、それをたまたま聞いていたシオンが侍女につめよった。双子も目を吊り上げて侍女を睨みつけている。エメルはそれを顔面蒼白になりながら見ていた。

「そ、それが、私たちも分からないんです。少し前までお嬢様は壁に手をついて遊んでらしたのに、次に見た時には忽然と姿を消されていて!」
「次に見た時? そんなに長い間ミリィから目を離していたのか!」
「そんなに長くありません! 十を数える間くらいで」
「そんな数秒でミリィが消えるわけないだろ! 赤ん坊だぞ」

 シオンは怒り心頭で、話すたびに侍女を手で押しやり、とうとう壁まで追い詰める。

「シオン様、落ち着いてください」

 セバスが間に入るように声をかけるが、今度は双子が侍女を指でさして怒る。

「セバス! この女が嘘をついているんだ! どうせ仕事をさぼってミリィから長い時間目を離していたんだろ!」
「ち、違っ」

 侍女は青い顔を左右にふった。

「何事だ。何を騒いでいる」

 騒ぎを聞きつけた父上がやってくる。セバスから事情を聞いた父上は、顔を険しくして、状況確認のためにミリィの部屋へ向かった。しかし妹はどこにもいない。

「……全使用人の現在の作業を全て止め、屋敷内でミリディアナの捜索を。護衛たちは屋外の捜索を担当するように。セバス、指揮はお前に任せる」
「かしこまりました」
「それとフローリアはこのことは?」
「まだご存じありません」
「では私が伝えに行く。シオン、アルト、バルト、お前たちは屋敷内の捜索を。エメル、お前は必ず誰かと一緒に捜索しなさい。決して一人にはなるな」

 自分は捜索から外されるのでは、そんな想像をしていたが、妹を心配する気持ちを父上はご存じだったらしい。エメルは力強く頷いた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。