七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 18話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 18話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」18話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 18話

「あっぱー」

 朝食後、侍女に抱かれて邸宅内を散歩中、玄関ホールでパパに遭遇。娘の声に振り向いたパパは、鋭い瞳を和らげた。そんな仕草がラブです! テンション上がりっぱなしのまま、侍女の胸からパパへ飛び込んだ。

「おっと……うちの娘は元気のようだな」
「あっぱー」

 パパって言っているつもりなんです。パパの頬に自身の頬をくっつける。これはパパ大好き娘の特権だ。ここぞとばかりにぎゅうぎゅうにくっ付く私に、側にいた家令のセバスが微笑ましい表情を浮かべる。

「これはこれは。お嬢様はますます愛くるしくおなりで」
「そうだろう。最近さらにフローリアに似てきた。息子は可愛いが、娘はまた違う可愛さがある」

 フローリアとはママの名前だ。ママにするように、パパは私の手の甲に軽くキスをする。

(ギャー! なんという色っぽさ!)

 内心悶えてしまう。自身は赤ん坊なのに、大人の女性になった気分だ。ニコニコ笑う娘に追い打ちをかけるようにおでこにもキスを贈り、そのまま侍女へ渡そうとしたので、パパの服をぎゅっとつかむ。侍女が慌ててパパから引き離そうとするが、渾身の力で離すまいとする。

「お嬢様ー! 手を放しませー」
「うー……あっぱーるゆるのー(パパといるのー)」
「……今生の別れのような形相だな」

 パパは苦笑し、娘を再び抱き上げた。

「仕方ない。少しだけ私の仕事を見ていくか?」
「うゆ」
「いい返事だ。では行こう。少しの間預かるから、君は戻ってなさい。必要な時は呼ぶ」

 パパは侍女に指示を出し、歩き出した。パパはダルディエ家の家族の部屋がある南館とは別、西館へ向かっているようだ。南館と西館は玄関ホールを間に、直角に位置している。西館二階への階段を上り、部屋へ入った。

 そこは執務室のようだった。かなり広い部屋にソファーとテーブルセット、奥に執務用の机が置かれている。

「ここは私の仕事部屋だ。ミリディアナには何も面白みはないと思うが」

 パパは執務机の前の椅子に座ると、私を膝の上に座らせた。パパと机にイイ感じに挟まれて、体が安定する。
 机の上には書類がいくつか置かれていて、パパは一つずつ確認していく。その真剣な表情もかっこいいです。パパのこんな表情や仕事ぶりを見れるなんて、執務室、なんてすばらしい部屋なのだろう!

 執務室は静かな部屋だと思っていたが、そんなことはなかった。セバスや他にも部下と思われる人間が頻繁に行き来している。普段はその部屋にいない公爵の娘が強面公爵の膝に座っているのを発見した初見の方々は、一瞬固まり、徐々に破顔し、公爵の仕事発言に慌てて思考を仕事モードへ戻し、と忙しそうである。

 そんな光景を眺めているうちに、気付いたら寝てしまっていた。次に起きた時には、パパは目の前におらず、私自身も自分の部屋に戻ってきていた。

(しまった! せっかくの至福の時間に寝てしまった!)

 夜中寝らずに朝方少しうたた寝しただけなのだから、眠くなるのは当たり前だ。というより、今日の夜のために寝ておかなければならないのに、この時ばかりはめっぽう悔しがるのだった。

 その後、昼食を取りすぐ昼寝して、夕食まで寝続けたためか、夜は心配するほど眠くならなかった。ベッドの柵の中だけと行動範囲は狭いが、歩く練習したり、霊的なものなのか何なのか分からないものとガンつけあったりしながら、夜が明ける。

 事件が起きたのは、その日の昼過ぎだった。朝食後にすぐに寝て、昼食を食べて食後の運動中、壁を支えに立ったりしゃがんだりしている時、壁の一部が動いた。

(あれ? ここ、奥へ押せる?)

 その壁はナイフで切られたように四角に切られた跡があり、どうみても人工的に作られたように見える。両手で押すと蓋のように斜め上に壁が奥へ引っ込み、押した勢いで私は空いた壁に頭から突っ込むことになった。

(あ、やばいやつだ、コレ)

 走り出した勢いは止まれるはずがない。壁の穴に吸い込まれるように落ちていく。そう、落ちているのだ。同じ二階の壁の向こう側でもなく、一階もしくはさらに下へ落ちていくのである。

 間の悪いことに、部屋にいた三人の侍女は、食事の後片付けをしたり、昼寝の準備をしたり、おもちゃを片付けたりと、その一瞬だけ誰も私を見ていなかった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。