七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 16話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 16話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」16話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 16話

「まんまー」
「あら、上手ね、ミリディアナちゃん」

 ソファーに捕まり、立ち上がった私にママが褒める。最近のよくある光景である。すっかり体調も良くなり、活発に動きまわる娘に、ママと侍女たちは暖かい目で見守っている。

 最近はハイハイと同時に、こうやって立ち上がる練習もしている。やっと支えられなくても捕まり立ちやつたい歩きなら一人でもできるようになってきた。早く一人で歩けるようになるのが、私の現在の目標だ。

 両親が帰ってきてから、私は一階の家族が集まる談話室に行くことが増えた。私の夕食は早い。五時頃には夕食が終わり、家族団らんのために談話室へ侍女が連れていく。するとママがいて、兄たちがバラバラに集まり、パパもやってくる。夕食から寝るまでのこの時間が好きだ。とはいえ、七時頃には眠くなるので、短い時間ではあるが。

 そして幾日か過ぎた頃、私はまた熱を出した。また原因は不明であるが、今度は一週間も熱が引かなかった。熱が引いた後も、みんなは心配そうな顔だ。

「少し歩けたね。今日は歩く練習はこれくらいにしようか」

 エメルは私の両手を持ち、少し歩けたところで心配そうに言った。

「ん? まだ今歩く練習始めたばかりだろう、もう少し練習してみたらどう?」
「……でも、無理させたら、また熱でませんか?」
「……大丈夫だよ。もう治ったんだから」

 ディアルドはエメルの頭に手を置いた。私に熱がある間、エメルが心配し過ぎて、いつも以上に妹の顔を見に来ていた。

「そうだといいのですが……。ぼく心配で。……ミリィの名前は、きちんとミリィを守ってくれるでしょうか?」
「エメル、知っていたのか」
「はい。ダルディエ家の子供は早世だから、昔、まじない師に言われたとおり、性別とは別の名も付けて災いから守るようにって。ルカルエムという名はミリィを守ってくれるでしょうか?」

 早世、そんな話に私はビックリする。私のフルネームは、ミリディアナ・ルカルエム・ル・ダルディエという。正式の名が長いな、とは思っていたが、そんな意味から付いた名だとは思っていなかった。

「早世と言われていたのは、もう何代も前の話だよ。父上や僕らも、異性の名前を付け続けているし、おじい様もその前もみんな長生きしたのだから。エメルも赤ちゃんの時は、時々熱を出していたけれど、今はすっかり元気だろう? ミリィも大きくなるにつれて、体が丈夫になっていくよ。そんなに心配しなくても大丈夫」

 エメルはまだ不安そうながらも頷く。なんか心配かける妹でごめん。そんな意味を込めて、エメルに抱き着くのだった。

 ハッと目が覚める。額に汗が流れ、手はブランケットを力いっぱい握りしめていた。また夢を見た。いつもの殺される夢だ。目にいっぱい涙が盛り上がるが、ぐっと泣くのを我慢する。さんざん熱で心配させてしまったのだ、これ以上心配させるわけにはいかない。

 眉にぐっと力をいれていると、次第に涙は引いていった。

(ふう、頑張った、私)

 自分で自分を褒めてみる。そうでもしないと、気が抜けて泣いてしまいそうだった。

 辺りは真っ暗なので、まだ夜中だろう。部屋のところどころにランプが点いているため、完全な暗闇というわけではない。目がすっかり覚めてしまったので、ベビーベッドから体を起こした。部屋には侍女もいないため、ランプの揺らめきがあるだけで音もなくシン……としている。

 私は暗闇自体は嫌いではなかった。椿だった時は夜中に電気も点けずに水を飲みにいったりしていたものだから、暗闇にボーっと浮き上がるように立つ椿を、心霊的なものだと勘違いした弟の蓮に、怖がって泣かれたこともある。

 ベビーベッドの柵につかまり立ちをしてみるが、柵が立っている私よりも高いため、柵を超えるのは無理そうだった。仕方なく、柵をつたい歩きしながら、五周ほどしたところで疲れて仰向けに寝転んだ。まだまだ夜は明けなさそうだ。

 眠ろうにも眠くなくて、しかも、また夢をみるのではないかという恐怖もある。

(そういえば、夢をみるのはいつも夜だな)

 ふと、そんなことを思う。私自身寝るのが好きなので、昼寝もよくするが、昼寝で悪夢を見たことはなかった。

(もしかして、昼寝て、夜寝ないで活動すれば、夢を見ないで済む?)

 考えれば考えるほど、とても名案に思えた。私は赤ん坊なので、昼寝が多少長くともおかしくはないだろう。これは実験してみる価値はあるのでは?

 そう思い立ったら、実践あるのみ。今から少しずつ夜型人間になろう! 私は朝まで一人遊びしながら起きていることにした。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。