七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 14話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 14話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」14話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 14話

「どうしたんだ? 呼ばれてきてみれば、みんな集まって」
「そうだよ。まだ夕食には早いだろう? 今日は訓練がキツかったから、俺も兄上も食事までは休憩しようと話していたんだぞ」

 少し疲れ顔なディアルドとジュードは、弟たちに呼ばれて私の部屋までやってきた。ちょうど訓練の汚れを落としたばかりのようで、二人とも髪がまだ濡れている。

「まあまあ、そう言わずに。その疲れも、これを見れば絶対消えるよ」
「そうそう、密かに練習してきたんだから。な!」

 双子の言葉に、シオンとエメルはニヤっとして頷く。私はアルトに大人しく抱かれている。

「練習?」

 侍女たちも手を口にやり微笑ましく笑っているものだから、上の兄二人は顔を傾けた。

「ミリィに芸を仕込んだんだ! すっごい可愛いから!」
「芸? 本当か!? どうしよう、兄上! 俺は想像で悶えそう……!!」
「落ち着け! というか、妹に対し芸という言葉はないだろう! ……だがしかし!」

 兄二人はいそいそと床に座ると、期待の目を向ける。

「いいぞ、見せてみて!」

(兄よ……たった九か月の赤ん坊の芸よ? 期待しすぎると肩透かしだと思うのだけど)

 その期待の目が怖い。しかし練習以外のことができるわけでもないので、練習どおりに芸をするしかない。

「じゃあまずは、俺らから」
「ミリィ、こっち向いて。これなーんだ」

 バルトが私に赤色のキラキラしたものを見せる。

(え!? 練習の時と物が違う! それ何!?)

 練習の時は、いつも遊んでるおもちゃだったのだ。今バルトが差し出しているのは、宝石の加工前の石のようだ。赤いということはルビーだろうか?
 興味深々でハイハイしながらバルトに近づいていく私は、芸が破たんしかけているのに気づいていない。

「はい、そこで止まってー。ミリィ、これ欲しい?」

(欲しいー!)

 満面の笑みの私に、アルトはニヤっと笑った。

「じゃあ、欲しい人、手を挙げてー! はーい」

 アルトは「はーい」の時に手を上げる。すると私も真似をして手を上げた。しゃべっているわけではない、手を上げるだけである。

「え!? ほしい? これ欲しいの? じゃあ、もう一回手をあげてー。はーい」

 バルトも同じように声を出すと、私はまた「はーい」と手を上げた。

「よーし、じゃあご褒美にこれあげよう」

 バルトが私の手に宝石を渡す。すごく綺麗な血のように赤い宝石は、まだ加工されていないにも関わらず、すごく存在感がある。
 おもちゃから宝石に代わってはいたが、ただ手を上げるだけという芸は成功した。ただ宝石に夢中になっている私だけがそれに気づいていない。
 そして、そのただ手を上げるだけの芸に、ディアルドはクスクス笑い、ジュードは手を口にやって震えている。

「可愛い! もう一回やって!」
「可愛すぎる! 俺の妹は天使かな!?」

 その成功に、アルトとバルトはハイタッチだ。

「まあまあ、兄上、これで感動するのは早い。エメル」
「はい。ミリィ、こっちにおいで」

 エメルの声に、宝石から目を上げ、エメルのところまでハイハイする。

「今日僕と何やったか覚えてる? これ何だろう? そう、絵本だよ。今日は僕と二人で絵本読んだんだよねー?」
「……んねー」

 エメルが「ねー」のところで首をかしげると、私も「ねー」と言いながら首をかしげる。

「そうそう、散歩にも行ったよねー」
「……んねー」

 またも首をかしげながら「ねー」と言う私に、上の兄二人は悶絶気味だ。

「可愛いすぎる……! というかしゃべってないか!?」
「しゃべってますね!?」
「すごいでしょう! 兄さま!」

 エメルの得意げな顔に、兄二人は頷くばかりだ。「ねー」は話しているうちに入るのだろうか。

「まだあるよ。ミリィ、それ俺に頂戴」

 畳み掛けるようにシオンが私へ手の平を向けた。本当はまだもらったばかりの宝石を渡したくはないが、これが芸の一部だと知っているので、大人しくそれを渡す。

「ミリィ、今貰ったこれ、欲しい?」

 頷く私に、シオンは宝石を見せびらかすように指でつまむ。

「欲しいなら、頂戴は?」

 まだ話せない代わりに、私は両手の手の平を上に向け、片方の掌の上にもう片方の甲を重ね、「頂戴」と言うようにパチパチと両手を鳴らす。何度も両手を鳴らすことで、「頂戴」と何度も言っているように錯覚するのだ。

「はい、どうぞ」

 シオンはそれに了承するように、私の手に宝石を置いてやる。

「あうー」

 最後の一言が、礼をしているように兄たちに聞こえたであろうことは言うまでもない。とうとうディアルドまで震えてながら喜んでいるし、ジュードは床に突っ伏して悶えている。

 大したこともしていないのに、疲れた兄たちが癒されたのは間違いなく、赤ちゃんって実は最強なのでは? と私は思わずにはいられなかった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。