七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 12話 後半シオン視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 12話 後半シオン視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」12話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 12話 後半シオン視点

「ミリィ、兄さまのところへおいで」

 ジュードがしゃがんで呼んでいる。生まれたばかりの小鹿のように足と腕が若干不安定に震えるものの、確実にハイハイの形でゆっくりとジュードの元へ向かっていく。すぐにでも妹の元へ自らが行きたそうなジュードは、ぐっと我慢した表情で待ち構えている。最後の一歩、ジュードの胸に倒れ込むように突っ込むと、ジュードはぎゅっと抱きしめてくれた。

「よくできたね、ミリィ! さすが俺の可愛い妹!」
「ほんと、よくやったね! 上手だったよ」

 嬉しそうに笑う妹をぎゅうぎゅうに抱きしめるジュードの横から、ディアルドが妹の頭をなでる。

(えへへへへ。すごく練習したかいがあるわ。褒められるのって、うれしい!)

 兄たちや侍女たちは、私が何をしても喜んでくれるし嬉しがってくれるから、ハイハイの練習だって楽しみながらできるというものだ。

「父上や母上が帰ってくるころには、すっかりハイハイマスターになれていそうですね」
「ははは、間違いないね。じゃあ、そろそろ俺にミリィを」

 渡しなさい。ニコっと笑うディアルドからそんな声が聞こえそうだが、ジュードは妹を今以上にぎゅっと抱きしめると、ディアルドから妹を少し離す。

「まだダメです」
「まだダメ、じゃないだろう。そろそろ練習場に行かないと。その前に俺にも抱っこさせて」
「まだ俺も少ししか抱っこしてません。もう少し……」
「お前はどうせ、練習抜け出してミリィを触りに戻ってきているだろう! 俺はそんなことできないから今のうちに抱っこさせてくれ」
「兄上は真面目すぎるんですよ! ミリィのためなら、少しくらい抜け出す勇気を……」
「ミリィのためではなく、自分のためだろう! いいから、ミリィをこちらに」

(ああ、始まった)

 最近の毎朝のルーティンである。朝から騎士団の練習場へ向かう兄二人は、朝早くにやってきては、こうして妹抱っこの取り合いなのだ。いつも言い争いをしながら、最終的に八割をジュード、二割をディアルドが限りある時間で抱っこし、練習場へ向かっていく。

 今朝も想定通りの時間割りで抱っこ時間が終了し、二人の兄は練習場へ向かっていった。すっかりシスコンの兄たちだが、あれだけ可愛がられると私自身も悪い気はしない、いやむしろまんまとブラコン気味になってきている気さえしているところだ。

◆ 以下、シオン視点

 邸宅南館一階の遊戯室でアルトとバルトと遊んでいたシオンは、そろそろ寝ようと自室へ向かう途中、階段の二階へ到着した時に泣き声を聞く。

「……ミリィ?」

 二階の妹の部屋の方向から聞こえる。妹はいつも夜八時には寝ているため、十時の今は熟睡中のはずである。妹の部屋へ近づき扉を開くと、その泣き声は大きくなった。
 妹は侍女に抱かれながらも、かなり大泣きしている。

「夜泣きなの?」
「シオン様! ……そのようです。今日はなかなか落ち着かないようで、ずっと泣いていて」

 侍女は妹を揺らしながら、背中を手でトントンとしているが、泣き止む気配がない。

「かして」
「あっシオン様」

 侍女から妹を奪う。侍女のように背中をトントンするが、やはり泣き止まない。その時、声が聞こえた。

(――こわいっいや! こわい!)

 それは恐怖の叫びのようだった。間違いなく妹の声だ。
 一瞬戸惑ったが、すぐに大声を妹に発した。

「ミリィ! 起きろ! 起きろ!」

 急に大声を出したものだから、妹はビクッとなり、大きく目を開ける。やっと目が覚めたようだが、また堰を切ったように泣き出した。しかし、先ほどの恐怖のような声色とは違う、少し安心したような泣き声にホッとする。

「もう大丈夫だ。安心して寝ろ」

 背中をトントンしていると、声色がだんだん小さくなり、妹から寝息が聞こえだす。そのまましばらく立って抱いていたが、ベビーベッドへ妹を寝かす。

(こわい、とは『怖い』のことか?)

 こんな小さな体に振りかかる恐怖とはなんなのだ? シオンは眉を寄せながら、妹の頭をなでつつ、しばらくその場で思案していた。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。