七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 11話 侍女視点

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 11話 侍女視点

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」11話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 11話 侍女視点

 私はダルディエ公爵家のお嬢様付きの侍女です。商家の生まれの三女で十七歳、弟妹がたくさんいるので、嫁入り準備としての持参金は自分で稼ぐのが家訓です。私はお給金のいい公爵家で働けるので、とても幸運でした。しかも、弟妹の世話をよくしていたこともあり、とっても愛らしいお嬢様の担当を任せていただけて、毎日が楽しいです。

 ミリディアナお嬢様は七か月になられました。先日生まれたばかりだと思っていたのに、最近では支えなくても一人でお座りができることがあり、またハイハイも少しですができるようになってきたのです。その成長には目を見張るものがあります。

 私の弟妹は良く泣く子が多いのですが、お嬢様はほとんど泣きません。眠くて愚図ることもあまりなく、夜泣きもかなり少ないです。最近は以前に比べたら夜泣きも増えたように感じますが、それでも弟妹に比べたら、「ない」に等しいくらい少ないと言えます。夜泣きは奥様が帝都へ行かれて、寂しいからかもしれません。お嬢様を寂しくしないよう、私たち侍女がしっかり遊んで差し上げようと思います。

 公爵家にはお嬢様の兄にあたる坊ちゃま方が六人いらっしゃいます。みなさま、お嬢様の愛らしさにメロメロのようで、その可愛がり方も多種多様です。

 あ、丁度、一番上の坊ちゃまのディアルド様がいらっしゃいました。ディアルド様は十一歳になられますが、とてもまだ十一歳とは思えないほど大人びていらっしゃいます。

「ミリィ、おいで」

 ディアルド様に気づいたお嬢様が、満面の笑みでずりばいで向かっています。ディアルド様はお嬢様がやってくると、抱え上げて高い高いをされています。お嬢様は小さいお口に手を突っ込み、キャッキャと大興奮です。ひとしきり高い高いを堪能し満足したお嬢様を私に預けたところで、ディアルド様と入れ違いになるように三番目の坊ちゃまであるシオン様がいらっしゃいました。

 シオン様は今年七歳になられますが、少し雰囲気の怖い印象があります。使用人仲間の話によると、身体に触ると叱られるようで、みなシオン様に触れないようにしたり、多くを話すことも機嫌が悪くなるらしいとのことで、できるだけ最低限の会話だけになるよう気を遣うのだとか。

 私はシオン様とお嬢様の部屋で同席することが多いのですが、今のところお嬢様の話題以外で会話をすることがないため、シオン様の性格が分かりません。ただ、お嬢様に接するシオン様は、とても独特といいますか、ただ皆が言うようにそこまで怖い雰囲気はありません。

「どうした、ミリィ。今日は言う気になったか? 『いけめん』って言ってみて」

 シオン様は、他のご兄弟がいないときは、お嬢様を抱っこして、『いけめん』を言うように言われております。お嬢様はいつも不思議そうな顔をしておられます。ところで『いけめん』とは何なのでしょう? 何かのおまじないでしょうか。

 シオン様が去ったので、お嬢様を連れてお庭を散歩します。お嬢様にどちらに行きたいか聞くと、いつも小さい手を行きたい方向へ向けられます。時々、お嬢様は私の言葉を本当に理解しているのではと、錯覚することがありますが、そんなはずないですよね。

 最近少し暖かくなってきたとはいえ、まだまだ寒いため、お嬢様が風邪ひかないよう、お散歩は短い間だけです。部屋へ戻ると、お嬢様は昼のお食事をされ、その後お昼寝です。

 お昼寝が終わったころに、二番目の坊ちゃまであるジュード様がいらっしゃいました。ジュード様は今年十歳になられ、よく美少女に間違われますが、れっきとした男性です。お嬢様を出窓のソファーへ連れていき、お嬢様を向かい合うように膝の上に抱っこして座らせています。

「ミリィ、今日もとってもかわいい」

 ジュード様は、お嬢様の顔じゅうにキスの嵐で、お嬢様はニコニコとそれを受けられています。

「くりんと巻いたまつ毛も、落っこちそうなぷくぷくのほっぺも、小さい口もなんて可愛すぎるんだ。この小さな手なんて、食べてしまいたいくらい愛らしい」

 ジュード様はお嬢様の手の甲にキスを贈っています。なんでしょう、この愛しい恋人に贈るような言葉の数々。これはすでにこの部屋での名物で、侍女たちは最初こそドギマギとしていましたが、最近はこれが通常会話と心得て冷静になれております。

 さらに恋人を口説くような言葉の数々が飛び交っておりましたが、ジュード様も次の用事があるのか去っていかれました。

 次にいらっしゃったのは、四番目五番目の坊ちゃま方である双子のアルト様とバルト様です。今年六歳になられます。こちらのお二方は要注意人物で、加減を忘れがちでいらっしゃいますので、お嬢様に対して度を超したことをされないよう見張るように、とのジュード様からの通達があります。そのため、何かあればすぐに対応できるよう、私たち侍女はお嬢様までの距離を近くして待ち構えております。

「今日はいいものを手にいれたんだ、見てミリィ」
「俺たちが赤ちゃんの時に使ってたおもちゃを見つけたんだ」

 そのおもちゃは、さまざまな形の木枠と積み木で、木枠の型と積み木が対になっており、同じ形の積み木を木枠にはめて遊ぶ道具のようです。お嬢様は興味津々で見ておられます。

「欲しいなら、あげるよ。ミリィ、欲しい?」

 お嬢様はそのおもちゃを触ろうと、アルト様に近づきます。すると、もうちょっとでお嬢様がおもちゃを触れる、という直前に、アルト様はそのおもちゃをお嬢様から遠ざけます。
 始まってしまいました。アルト様バルト様の『お嬢様で遊ぶ』遊びです。おもちゃに触れそうで触れない、そんなお嬢様を見て楽しんでいる双子様。

これこそ、所謂『いじわる』なのではないかと思うのですが、これは双子様のいつもの行動であり、なによりお嬢様が楽しそうにしているので、いつも止めようか止めまいか葛藤するのですが、お嬢様が疲れた頃に止められるのを見るに、一応加減されているのだろうと思います。

 それからおもちゃで一通り遊んであげられ、双子様は去って行かれました。今日も峠は越しました。

 その後、やってこられたのは、一番下の坊ちゃまであるエメル様です。エメル様は今年四歳とまだ小さいながら、兄弟一の神童と名高いお方です。今日は珍しくお嬢様のところへ来られる回数が少ないですが、いつも二時間に一度はお嬢様の顔を見に来られます。

「ミリィ、今日は本を持ってきたんだ。一緒に見よう」

 エメル様の指示でお嬢様をソファーに座らせます。もちろんお嬢様が不安定に倒れたりしないよう、クッションで調整します。隣にエメル様が座られ、本を開きました。

「これは父上にもらった本なんだよ。僕らの住む国であるグラルスティール帝国のことが書いてあるんだ。これは地図だね、地図のこのあたりがダルディエ領、つまり我がダルディエ公爵家の領地だ。今いるこの邸宅もここにある」

 エメル様、そのお話はお嬢様にはまだ早すぎやしませんか? しかしお嬢様を見るに、嫌がっている様子もないですし、しばらく様子を見ていることにします。

「ダルディエ領は帝国の最北端にあって、ザクラシア王国との国境があるんだ。そこの守備を任されているのが、父上が団長をしている北部騎士団なんだよ。いつも兄さま達が訓練に行っているのは、騎士団の訓練場なんだ。ぼくもいつかは騎士団の訓練に行くと思うのだけど、まだ未熟だから、邸宅内で基礎訓練までなんだ」

 少し気落ちした様子のエメル様は、それでも奮起した顔をお嬢様に向けられます。

「まだ本物の剣も握らせてもらえないんだけれど、ぼくはミリィの兄さまだから、強くなってミリィを守ってあげるからね」

 ニコっと笑うお嬢様をエメル様は抱きしめている。はい、二人共とても可愛いです。癒されます。侍女たちも心がほんわかしながら、エメル様が話続けるのを見守り続けます。

 エメル様が去っていくと、お嬢様はお風呂の時間です。お風呂に入れたお嬢様は食事をし、すぐにお休み時間となります。
 そんなこんなで、一日があっという間です。お嬢様の成長を、これからも見守り続けられるとうれしいです。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
今回は侍女視点のお話でした。
次回に続きます。