七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 9話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 9話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」9話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 9話

「お嬢様ー! お上手ですよー!」

 侍女に褒められているのは、他でもない、ずりばい中の私だ。うつ伏せで手足を動かしてもなかなか前に進まなかったが、最近、やっとほふく前進のような、ずりばいができるようになってきたのだ。私が進む先では、シオンと双子の兄がキラキラと輝く石を持って誘っている。

「ほら、こっちだミリィ!」
「もうちょっとだぞ、がんばれ!」
「ヨダレがすごいなぁ」

 若干一名、応援とは違う声が聞こえた気がするが、無視である。ヨダレは赤ちゃんに付き物でしょう! 勝手に出ていくのだもの、私だって止めれるものなら止めたい。
 バルトが持っているのはたぶん鉱石だろう、ところどころに菫色の水晶のようなものが露出していてとても綺麗だ。宝石にすごく興味があるわけではないが、あのキラキラを間近で見たくて仕方がない。赤ちゃん生活にだって、真新しい潤いが欲しいのだ!

 息が荒くなってはぁはぁ言いながらも、満面の笑みで兄たちのところへ到着する。

「よーし、よくやった!」
「きゃいー」
「大興奮だなー。ご褒美にこれをあげよう」
「舐めるなよ、っと言ったそばから……。いいか、これは見るものだ、舐めるものじゃない」

(おっと。つい本能が……。時々心まで赤ちゃんになった気がする時がある謎)

 両手で鉱石を持ち、ちょっと角度を変えるだけで菫色の水晶がキラっとするのがとにかく綺麗だ。たぶんアメジストではなかろうか。舐めて石の感触を確認したい気持ちをぐっとガマンしていると、兄たちのクスクス笑いが聞こえる。

「ヨダレが……」
「今日も大放出」

(ほっといてくれ!)

 兄たちのからかいに無視を決め込む妹であった。

 その日の午後は、なんと、ディアルドとエメルが部屋の外に連れ出してくれた。庭へは何度か連れ出してくれていたが、自室以外の館内は初めてである。

 ディアルドに抱っこされながら、長い廊下を進んでいた。ところどころに花や彫刻といった調度品が飾られ、建物自体は長い歴史があるように見受けられるが、趣があって私が好きな雰囲気だ。清潔感もあって良く掃除されているのがわかる。

「ここは南館の二階だね。ミリィの部屋と奥に母上と父上の部屋がそれぞれある。三階が俺たち、兄様たちの部屋だ」
「兄さま、ぼくたちの部屋もミリィに見せたいです」
「そうだね、では三階に行こうか」

 階段のある場所はホールのようになっており、一階から天井までの全体が見える。階段はアーチ状になっており、ホールがすごく広く感じるが、それは気のせいではなく間違いなく広い。階段から察するに、四階まである建物のようだが、それにしてはまだ天井が高いような気がする。五階くらいまではありそうだが。

「ミリィ、階段は四階までだけど、五階もあるんだよ。五階は侍女や侍従たち、使用人の部屋があって、階段は隠れたところにあるんだ。ね、兄さま」
「そうだね、よく知ってるな、エメルは」

 私の心を読んだかのようにエメルが教えてくれる。
 三階に到着すると、どの部屋が誰の部屋だと丁寧に案内してくれ、ディアルドとエメルの部屋は中まで案内してくれた。私の部屋は広い衣裳部屋があるから兄たちの部屋よりは広いが、兄たちの部屋も十分広い。日本の一般的な家庭のリビングより広いのは間違いない。それでも南館の部屋はまだ余っているようだ。

「次は一階に行ってみようか」

 一階は家族の共用スペースのようだった。食事部屋、兄弟の勉強部屋、図書室、遊戯室を案内してもらい、最後は家族団らんの部屋へ到着した。

「ここはいつも家族で集まる部屋だね。ミリィも外出許可が出たし、そろそろここで過ごすことも増えると思うよ」
「見て、ミリィ。これは去年家族を描いてもらった絵画だよ。そうだミリィも生まれたので、また描いてもらったほうがいいと思いませんか、兄さま」
「それはいいね」

 壁の一面には絵画がたくさん飾ってあった。ここはまだ写真というものがない時代なのだろう、その代わりというように、ほとんどが家族写真ような絵画ばかりが飾られている。また他の壁一面には、一人ひとり男性が描かれている。

「こっちは代々の公爵だね。一番右端は父上だ」

 パパが一番かっこいい! とはいえ、どの男性もかなりダンディである。どうやらイケメンなのは血筋のようだ。とそこで、ある言葉が引っかかった。

(公爵って言った? ということは、うちは貴族ということ?)

「あぅえあ」

 絵画を指さした。何かもっと家族の情報が知りたい。

「うん? 父上の横はおじい様だよ。もう亡くなっているけれど」

(違う、そうじゃない!)

 なかなか聞きたいことが聞けない、そんな悶々とした日々がまだ続きそうだと嘆息するのであった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。