七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 8話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 8話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」8話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 8話

「今日のミリィは大人しいね。いつも膝にのせてガタガタさせると喜ぶのに」
「侍女の話では夜泣きしたらしいよ。泣き疲れかな」
「夜泣き? 珍しいな」

 私は手のかからない子だと言われていた。ほとんど夜泣きはしないし、夜泣きだけでなく、普通に泣くことさえほとんどない。
 それは、椿としての記憶と自我を持つからで、中身が大人な自分が泣くなんて恥ずかしい、実際は赤ん坊だからといって、泣いて大人を困らせるなんて大人げない、そう思っているからだが、昨日の夢はさすがに心にくるものがあり、泣かずにはいられなかった。

 いくら部屋の外で待機しているとはいえ、真夜中に侍女に相手させてしまったという後味の悪さと、悪夢の余韻が私を落ち込ませて大人しくさせていた。

「怖い夢でも見たのかな?」
「赤ん坊って夢みるの?」
「さあ?」

 アルトとバルトは反応の薄い私で遊ぶのを諦めたのか、妹をうつ伏せ状態で床におろす。

「お腹空いてるんじゃないの?」
「そうかもね。お腹減ると元気なくなるよ」
「さきほど授乳したばかりですから、まだお腹は空いていないと思いますが」

 うつ伏せ状態の私を侍女は抱っこすると、私の唇をちょんちょんと触る。

「やっぱりお腹はまだ空いていないみたいです。お腹空いていると、ここをちょんちょんとしたら、口をパクパクされますから」
「ふーん」

 アルトが妹の口をちょんちょんとつつく。

「ほんとだ、パクパクしないや」
「そういえば、そろそろ離乳食にするって、本当?」
「はい、明日から一日に一回、授乳の合間に離乳食をはさむと聞いております」

(え、離乳食? もうそんな時期なんだ)

「へー! 俺も食べさせる!」
「俺も!」
「そうですねぇ、最初は奥様が差し上げると思いますが、お嬢様が離乳食に慣れてきたら、お二人が差し上げてもいいかもしれませんね」

 そんな会話が繰り広げられた次の日、超絶美人なママが侍女の膝の上に座る私に優しい笑顔を向ける。

「さあミリディアナちゃん、初めてのご飯ですよ、あーんしてごらん?」

 ママのまわりには、興味津々の兄たちとパパ、そして侍女たち。

(そんなに見られると緊張するんですけど)

 ママが持つ丸い食器には、何やら白く水っぽいものが入っている。牛乳だろうか。それにしては半透明で純粋な牛乳とはいえなさそうだ。
 スプーンをちょんと私の唇につける。スプーンから零れ落ちた白いものが少しだけ口の中に入る。舌でそれを舐めてみると、なんだか優しい味がする。

(……おかゆかな? かなり水っぽいけど)

「どうかしら? おいしい?」

 さらにスプーンを近づけてくるので、少しずつそれを口の中に入れる。半分くらいは口の外にこぼしてしまったけれど。口の中に何かを入れるのって、難しい。
 それでも食べた私に、安心したような表情をママが向けた。

「かわいい。初めてのご飯」
「一生懸命食べてるのが、愛らしい」

 兄たちの表情はデレデレだ。ジュードは涙目で震えているし、エメルは一瞬でも見逃しまいと、瞬きすらしない。

(こっちが心配するからその反応ヤメて……)

 初めての離乳食は、逆に兄を心配するという結果に終わった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。