七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 6話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 6話

このページでは小説を掲載しています。
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」6話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 6話

(ま、眩しいー!)

 今日は待ちに待った、初めての外出解禁の日だった。ママの許可が出たので、兄たちがお庭につれ出してくれることになっていた。
 さぁ行こう! という時になって、シオン、アルト、バルトが妹は自分が抱っこする! と言い争いをしていたが、ジュードの額に青筋が立った時、ディアルドがひょいっと私を抱っこした。

「ここは長男である俺の役目だよね」

(さすがです、ディアルドお兄様。ジュードお兄様が爆発一歩前でした)

 ジュードの怒号を想像してドキドキしていたが、実は違った意味でもドキドキしていた。シオンに抱っこされるのではないか? ということである。あの「イケメン」事件からシオンに触れる時は、不要なことを考えないよう無心を心掛けてきた。それがなかなかしんどい。

 シオンに関しては、あの時、私の心を読んだのだと断定している。アルトがあの時、「心の声」と言っていたことや、そもそも日本語で「イケメン」という言葉が、この国の言葉として、その単語自体がないようだった、ということもある。だからこそ、あの時私の心の声を読んでいなければ知り得ない言葉をシオンが発したのは、もうシオンが「心の声を読む能力がある」のだとしかいいようがない。

 では、心の声を読めるのは、シオンだけなのか? 実は私は実験を試みた。とりあえず、抱っこされたりさわってきたりする人に、一人ひとり「イケメン」と心の中で言ってみたのだ。だが誰も何の反応もなかった。ということは、心の声が読めるのはシオンだけであるということになる。

 いやあ、何というか、心の声が読めるなんて、そんな普通じゃないこと、え!? となりましたとも。でも、私自身も普通ではないことに気づいた。

 前世の記憶のある赤ん坊なんて、普通じゃないでしょ。気持ち悪いでしょ。

 そう思ったら、そんな人とは違うことを理由にして私自身が嫌われたくないし、もちろんシオンに嫌われたくないし、何といってもシオンの顔が好きだし、とにかく「イケメン」なんて空耳でした作戦で、うっかり心でしゃべったりしないように気を付けているところなのです。

 さて、ディアルドに抱っこされながら、いざ、庭へ!
 そして今まさに私は太陽の光が眩しすぎて、ゆっくりと瞳を閉じた。引きこもりには太陽の光は眩しすぎます。

「ほらミリィ、初めての散歩だよ。バラが綺麗に咲いているね、見てごらん。……ミリィ? あれ? どうして目を閉じてるんだ?」
「あれ、本当だ、どうした、ミリィ」
「怖くないよ、ミリィ。目を開けてごらん」

 とにかく眩しすぎて目が開けられない。ディアルドの肩に顔をつけて、イヤイヤ! と顔を振る。

「うーん、どうしたんだろう」
「……あ、もしかして、眩しいのではないですか?」
「なるほど! 日光も初めてだから、ミリィには刺激が強いのかもしれないね。じゃあ、日陰に行こうか」

 兄弟たちは日陰に移動したらしい。若干光が弱まったような、あまり変わらないような。

「ミリィ、日陰に移動したから、目を開けてみてごらん?」

 私はそっと目を開けていく。眩しい。だけど先ほどよりは目を開けていられる。目が寝起きの後のようなしょぼしょぼする感覚があるが、あとは慣れだろう。
 すこしずつ目が慣れるまでじっとしていたが、だんだん慣れてきて辺りの情報が入ってくる。

 鮮やかな木々の緑、綺麗に咲いているバラ。優雅に踊るように舞う蝶々。

(わぁ、素敵……)

 とても絵になる美しい庭だ。

「あぅー」
「その声は気に入ったってことかな? この薔薇園はミリィのものだからね、好きに遊んでいいよ。でも今日はせっかくだから、もう少し先の方へ行ってみようか」

 兄弟は庭の奥の方へ進んでいく。薔薇園を過ぎると、また違った花が咲いていたり、噴水があったり、川があったりする。

「あっちに生垣迷路があるけれど、そこにはミリィ一人で入らないように。なんせアルトとバルトが迷子になったところだからね」
「兄上! それは小さなころの話でしょう!」
「そうです! もう迷子になんてなりませんから!」

 真っ赤になって反論する弟たちに、上三人の兄たちは笑う。

「小さなころって、迷子になったのは一年半くらい前の話だろう。つい最近じゃないか」
「泣きべそかいてましたよね。あの頃はまだ素直で可愛かったな」
「兄上!」

 からかったり、からかわれたり、仲良し兄弟である。
 庭園をずんずんと歩いていく兄弟だが、ディアルドがとあるところで立ち止まった。

「今日はこの辺までにしておこうか。ミリィも疲れてしまうし」
「そうですね。帰りは俺が抱っこしますよ」
「はいはい、変わってあげよう」

 ディアルドは苦笑しながらジュードに私を渡す。

「ちょうどここから館の一部が見えますね。ミリィ、見てごらん。あれが僕らの家だよ」

 遠くに見える大きい建物。それが家。

(……家!? あれが!?)

 館の一部というが、見えている部分だけでもかなり大きく広いだろうということがわかる。私の部屋の広さから、ある程度広い家だという想像はしていたが、想像をはるかに超える大邸宅のようだ。

 太陽に、庭園に、大邸宅。そろそろ今日の私の情報量はパンク寸前である。なんだか眠くなってきた。少し逃避気味にジュードの肩に頭をあずけ、ウトウトしだす私であった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。