七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 番外編3話 最終話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 番外編3話 最終話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」番外編3話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 番外編3話 最終話

※ミリィが8歳あたりの話です。
本編106話あたりのどこかに組み込もうかと思っていた話。

 私が八歳のとある日。
 現在、私はディアルドとダルディエ領の東にある港へやってきていた。ここは以前、私がザクラシア王国に誘拐された際、誘拐犯が使ったと思われる港である。しかし私は眠らされていて、まったく覚えていないため、特に怖いといった感情もない。

 この港にやってきたのは、私がディアルドに頼んだからだ。ディアルドがパパと港を含むこのあたり一帯の話をしていて、ディアルドがここへ向かうと聞いたので、ダメ元で連れて行ってと言ったら一緒に連れてきてくれたのだ。だからディアルドにとっては、半分は仕事である。ディアルドとパパが話す内容を少し聞いていたので、ディアルドが何を目的にしているのかは知っている。だから、私は邪魔しないようにしつつ、楽しむのだ。

「わぁ! 人がいっぱいいるね!」

 馬車の中から窓の外を見る。港は人が溢れかえっていて、すごく賑やかである。グラルスティールの国民とは思えない他国の人もいて活気がある。

「まずは食事にしようか。露店で有名な道があるから、今からそこへ行こう」
「うん!」

 露店と聞き、ほとんどそういったところには行ったことがないので、わくわくする。馬車が停まると馬車から降りる。

「ここは人が多いからね。ミリィは俺と手を繋いで行こう」
「うん」

 私とディアルド、そして護衛を連れて歩き出す。その道は一帯が露店が多く出店していた。小さな露店が多く、ざっと見たところ、海産物を扱うお店が多い。ちょうど昼直前で、馬車が通れないほど人がごった返している。これは気を付けないと、ディアルドと繋いでいる手が離れそうだと思っていると、ディアルドが振り返った。そして私を抱き上げる。

「思った以上に人がいるね。これだとミリィが露店が見えない」
「抱っこしてもらったから見えるよ。あっちから良い匂いがする! バターかなぁ」
「ああ、あっちで貝を焼いているみたいだね。今日は海鮮を調理する場所は確保しているから、ミリィは食べたいものがあったら言うんだよ」
「うん」

 それから露店を回る。大きい海老や色んな貝、魚などを購入していく。そして購入した物を持って、ある店に入る。そこは露店などで購入してきたものをその場で調理してくれたりするお店らしい。貴族用のお店のようで、露店からここに来ると、露店の喧騒が嘘のように静かで上品である。ディアルドはあらかじめ予約をしていたようで、さっそく料理人が目の前で調理を開始する。目の前で調理してもらって食べるなんて始めてで、興味津々で調理をするところを見てしまう。貴族の邸宅は、一般的に、調理されたものをコース料理のように一品ずつ運ばれてくるのが普通なので、こういう調理の演出は楽しい。

「この海老美味しい!」
「こっちの貝も絶品だな」

 この雰囲気もあるのかもしれないが、どれもこれも海鮮料理が美味しかった。食事が終わると、また露店を回る。さきほどは海産物を扱うお店ばかりだったが、今度は国外の小物や宝石、布などを扱っている露店が多い。しかも国内では見かけないようなデザインばかりの、少し変わった露店が集まる一帯だった。やはり人が多く、またディアルドに抱かれながら移動する。

「ミリィ、何か欲しいものがあったら言うんだよ。買ってあげるからね」
「うん」

 どれもこれも珍しく、見ているだけでも楽しい。ディアルドが小粒の綺麗なビジューがたくさん売っている店の前を通る。そこで私は真珠を見つけた。

「ディアルド、真珠が売ってる! ミリィ、あの黒の真珠が欲しい」

 白や薄いピンク、黒や薄い黄色に近い金色などの真珠の粒がばら売りされている。まだ加工前のもので、穴も開いていない。

「黒? 白のほうが綺麗じゃないかな」
「ミリィの髪は神髪でしょう。黒のアクセサリーも可愛いと思うの。それに大人っぽくなるかなって!」
「髪のアクセサリーにするんだね。いいよ。他の色も欲しい?」
「ううん、黒だけでいいわ」

 ディアルドに黒真珠を百粒ほど買ってもらい、また移動する。加工はこれからだから、どんな形のアクセサリーにしようかなと考える。ディアルドはというと、移動しながら視線は露店ではないところを、それとなく見ているのが分かる。まさに今回の目的の仕事をしているところだろう。私は邪魔しないように、私は私で露店を楽しむ。

 その日はもう少し露店を回り、港の傍にある今日あらかじめ予約してある宿に入る。部屋にはディアルドの部下も数名内密に入室していた。

「国外の人が思っていた以上に多いな。不法に雇い入れている可能性がある。国外の人を中心に、人の流れを探ってくれ」
「かしこまりました」

 ディアルドがこの港へやってきたのは、臣下の不正を暴くためである。ダルディエ領の領地は広い。部分的に領地の一部を臣下に任せている土地があるのだが、その報告にあやしい点があるのだという。

 この港を含む土地一帯は、クレイル男爵の一族が世襲的にダルディエ公爵家から管理を任されている。貿易の拠点になっており、人や物の行き来が激しい。だからクレイル男爵の懐が潤っているのは間違いない。けれど、報告や税収などが巧みに操作されているとディアルドは気づいたらしい。前々から調査はしていたらしいのだが、今回ディアルド自身の目で町を見るためにやってきたのだ。しかし、こちらが怪しんでいるとクレイル男爵に感付かれるのもマズイため、表向きは妹の私を楽しませるための旅行となっている。だから私は気にせず楽しんでいればいいよ、とディアルドに言われている。

 次の日、またディアルドと露店を少し回った。そして次は港の町の中心部へ移動する。このあたりは露店ではなく、ちゃんとした建物のお店が並んでいる。高級なお店も多く、そのお店を回る。やはりダルディエ領にある街とは取り扱っているものが違い、見ているだけで面白い。その日は町の中心部の高級宿に入った。

 その宿でも、ディアルドの部下が出入りして、頻繁にディアルドとやりとりをしている。それに影までいた。影がいるなら、どこかに忍び込みでもするのかな、と思いながら足をぶらぶらさせていると、ディアルドが部下と影に言った。

「たぶん明日あたり、クレイル男爵が俺に接触してくるだろう。今日俺たちを見ている男がいたからね。男爵の関係者だろう。俺に足元をウロウロされては、痛い腹を探られて不快だろうな」

 男爵の接触予想だが、これは想定通りらしい。むしろそれを狙っているのだ。あやしい点や元々調査していた内容から、不正の大方は予想していて、あとは証拠さえ押さえればいいらしい。しかしその証拠を押さえるのが大変だと思うのだが、そこで出てくるのが影である。明日、ディアルドの言うようにクレイル男爵が接触してくるなら、そのどこかで影を仕込む気のようだ。ディアルドが実際に町を見ることで、不法就労者の存在にも気づいたようであるし、証拠さえ押さえれば、色々と芋づる式に不正が見つかりそうである。

 その次の日の昼。ディアルドとレストランで昼食をしていると、私たちに近づく人物がいた。

「これはディアルドさまではありませんか」
「……クレイル男爵。お久しぶりですね」

 想定通り接触してきたクレイル男爵は四十歳ほどの男で、後ろに若い女性を連れている。

「このような場所でお会いするとは。公爵閣下は息災でおられますか」
「はい、つつがなく。男爵も昼食のためにここへ?」
「はい。ここは食事が美味しいと有名ですからね。……ディアルドさまは何故この町に?」
「妹と旅行ですよ。このあたりは海鮮が美味しいですし、国外から珍しい物が入ってきますから、妹が楽しめると思いまして」
「なるほど。ああそうだ、紹介します。我が娘のセレナです」

 クレイル男爵の後ろにいた女性が前へ出てお辞儀をする。ディアルドと同じくらいの年齢と思われ、ぽてっとした唇が魅力的な綺麗な女性だった。ディアルドは会釈しただけで、目線はすぐにクレイル男爵へ戻す。

「ディアルドさま、もしよろしければ、本日の夜、我が家の晩餐へいらっしゃいませんか。このレストランも美味しいですが、我が家の料理人も腕が自慢でしてね。ぜひ食していただきたい」
「申し訳ないが、今回は妹がいますので。妹を一人にするわけにはいきませんから」

 クレイル男爵は私を一瞥すると、にこやかに笑う。

「でしたら、妹嬢もご一緒にいかがですか。我が家の料理人は子供が好む味を作るのも心得ていましてね。妹嬢も楽しむことができるでしょう」
「……」

 ディアルドは私を見た。ディアルドはこういう想定もしていたはずだ。私を絶対に連れて行きたくないなら、速攻断っているはずなのだから。だから私は笑って言う。

「ミリィも男爵の家に行ってみたい!」
「……妹もこう言っていますし、招待に応じます」
「それは良かった! では夜を楽しみにしていますぞ」

 クレイル男爵は娘を伴って去っていく。さあ、これで準備は整った。

 その日の夜、ディアルドと共にクレイル男爵の屋敷へ向かっていた。護衛も二人伴っている。ディアルドは礼服なのに、珍しく剣も持っている。空はところどころ雷が鳴りだし、今にも雨が降ってきそうである。

 クレイル男爵の屋敷に到着すると、晩餐の前にいくつかの部屋を案内される。絵画や高そうな壺などを自慢げに紹介されたあと、やっと晩餐である。晩餐のテーブルには、男爵と男爵夫人、昼間にも見た娘、そしてディアルドと私しかいなかった。息子もいるらしいが、現在テイラー学園に通っていて不在らしい。

 クレイル男爵が自慢する通り、食事は美味しかった。私はディアルドの皿とは違う食事内容だったけれど、たぶん子供向けに作られているのだろう。良い料理人がいるなー、と思いながら舌鼓する。男爵はずっと話をしており、ディアルドは話を聞いて相槌を打つのがほとんどだ。クレイル男爵とこの家の人たちは気づいていないが、私たちと一緒に我が家の影がこの家に入っている。現在、不正の証拠を探っているところだろう。裏帳簿などを見つけられるといいのだが、男爵もそう簡単に見つかる場所には置いていないはずだ。だから影の時間稼ぎのために、大して面白みのない男爵の話を、ディアルドは根気強く聞いている。

 それから男爵の話は娘自慢になり、ディアルドの目の前に座っている娘が上目遣いでディアルドを見ている。男爵は娘とディアルドをくっつけさせたいのだろう。アピールがあからさま過ぎる。確かに娘は自慢したくなるほど綺麗な人だった。色気もあるし、こういう女性が好きな男性はたくさんいるだろう。でもディアルドには合っていないなと思いながら、ちらっとディアルドを見ると、ディアルドも娘には興味なさそうな、いつもの表情だった。それから男爵がまだ話をしていると、執事と思われる人物が男爵に近より、男爵に小声で話す。

「ディアルドさま、どうやら外は大雨のようです。雷も鳴っていますし、このまま泊まっていかれたほうがよろしいと思いますが、いかがでしょう」

 おっと、それは想定外だ。窓を見るディアルドの顔に、そう書いてあった。少し考える顔をしたディアルドは、男爵を見た。

「では、お言葉に甘えて、お願い致します」

 かくして、急きょ私とディアルドはクレイル男爵の屋敷に泊まることとなった。
 私たちが案内された部屋は隣合わせの部屋で、ディアルドと私の部屋は別で用意された。私に用意された部屋にディアルドが入る。

「とりあえず、お風呂に入れてもらおうか。俺も部屋で入ってくるから。その後にミリィを迎えに来るからね」
「うん」

 私は男爵の使用人に風呂に入れてもらい、髪を手入れしてもらう。そして使用人が去り、雷の鳴る外を窓から眺めていると、ディアルドが入室してきた。

「おまたせ、ミリィ。……ちょっと服が大きいね」

 急きょ泊まることになったため、私の寝間着は男爵の家にあったものを借りている。たぶん子供用ではあるのだろうが、私には少し大きかった。寝間着のワンピースのスカートが床につき、また袖から手が見えていない。ディアルドは私の寝間着の袖部分を折り曲げると、私を抱えてディアルドが用意されている部屋へ移動する。

 それからソファーに座って少しディアルドと話をしていると、影が現れた。

「泊まることになったのですね」
「予定にはなかったが、かえってよかったかもしれないな。まだ何も見つかっていないのだろう?」
「申し訳ありません」
「いいよ。すぐに見つかるとは思っていない。でも朝までには一つくらいは見つけてきてほしい」
「……努力します」

 影は消えていった。
 ディアルドは用意されていたワインをそそぎ、一口飲むとそのままグラスに飲んだものを吐いた。

「ディアルド?」

 ディアルドはすぐに別に用意されている水を注ぎ、それを一口飲んで味を確かめる。その後すぐにその水で口をゆすいでる。まさか。

「ディアルド! 毒なの!?」
「……いや、毒ではないよ」
「で、でも!」
「大丈夫。ほとんど飲んでないから。……はぁ、もう、やってくれるな、男爵」

 ほとんど飲んでいなくとも、毒なら危ないのでは!? オロオロとディアルドの様子を見るが、ディアルドはまったく慌ててもいない。本当に毒ではないのだろうか。
 ディアルドは私を安心させるように笑うと言った。

「もう寝ようか。あまり遅くなると、ミリィが寝不足になる」
「う、うん」

 ディアルドが剣をベッドの横に立てかける。そしてディアルドと一緒にベッドに入る。ディアルドは私の頬にキスをすると、私を抱きしめた。

「お休み、ミリィ」
「お休み、ディアルド」

 すぐに寝入るのだった。

 そして夜中。ディアルドの起きる気配で目が覚める。まだ部屋は薄暗く、部屋の遠くにロウソクの光が小さく灯っているだけだ。まだ起きるのは早いのではないかと、寝ぼけ眼でディアルドを見た時、小さな悲鳴が傍で聞こえた。見ると、ベッドの傍には男爵の娘セレナが色っぽい寝間着のような薄着の姿で立っていた。セレナの首には、ディアルドが剣を向けている。セレナは首元に向けられた剣を恐怖の顔で見ている。

「……こんな夜更けに、暗殺ですか」
「ち、違います! ディアルドさまが寂しいのではないかと思ってお伺いしただけですわ!」
「余計なお世話です。見ての通り、妹がいるので寂しくはないですよ」

 ディアルドの言葉に、やっと私の存在に気づいたのだろう、セレナはぎょっとした視線を私に向けている。

「い、妹!? 聞いていませんわ!」
「なぜ、俺が妹と寝ると、あなたに言わなくてはならないのです?」

 ディアルドがベッドから出る。剣はまだセレナの首に向けられたままなので、ディアルドが前へ進むごとにセレナも後ずさりする。私もベッドから出てディアルドの後ろにつく。

「夜中に人が寝ているところを訪ねるなんて、非常識にもほどがあると思いますが」
「そんなことをおっしゃりながら、実はわたくしが訪問するのを嬉しいと思っておられるでしょう?」
「……はい?」
「晩餐でわたくしに何度も熱い視線を投げかけておられたわ!」
「……会話をする時に、会話する相手を見るのはマナーでしょう。あなたを見たのは、会話するためだけであって、それ以上の意味は一欠片もない。俺はあなたに興味はありませんよ」
「そんなはずないわ! ディアルドさまは、わたくしが欲しいと思いませんの? 夜会や舞踏会で、わたくしを褒めて下さる男性はたくさんいますわ!」
「あまり誉め言葉をそのまま受け取らないほうが良いですよ。ただのマナーの場合もありますから」
「お、お世辞を言われているとおっしゃりたいの!?」
「さぁ。それは分かりませんが。男爵は娘の教育を間違えているようですね。ああ、それとも、俺の部屋を訪ねるのは男爵の指示ですか?」

 少しずつ移動していたディアルドは、ワインが用意されている横に立つ。そしてワインのボトルを掴んで移動させた。

「まさかワインが媚薬入りとは。これは男爵流の礼儀なのですか?」

(媚薬!?)

 さきほど毒入りかと思ったワインが、まさか媚薬入りだったとは。だからディアルドは毒の場合ほど慌てていなかったのか。セレナはディアルドの言葉に赤くなっている。

「毒ではないので、この媚薬に関しては事を大きくはしませんが、あなたがまだここに居座るというなら容赦しません」

 ディアルドは剣先をセレナにさらに近づけた。

「俺を暗殺に来たのではないのなら、退出願えますか。もし暗殺だというなら、このまま剣を振りますが」

 セレナは慌てて走って部屋から去っていく。ディアルドはため息をつくと、剣を鞘に納めた。

「ディアルドはセレナが部屋に来るだろうと思っていたの? だからいつもベッドの傍に剣なんて置かないのに用意していたの?」
「あんなワインが置いてあればね。セレナが来るかどうかは半信半疑だったけれど、用心はしないとと思って」

 ディアルドは私を抱き上げると、ソファーに座って私を膝に乗せた。

「すっかりミリィの目が覚めちゃったね。あの親子の罪は重いな……」

 私の目が覚めることより、媚薬を盛られていたことや、勝手に部屋に侵入されたことの方が罪が重いのでは。

「ディアルドって、よく媚薬を盛られるの?」
「……あー、教育に悪い……」

 ディアルドは頭が痛そうに手で押さえている。媚薬なんて、私に聞かせたくない言葉なのだろう。

「……そんなに盛られないよ」

 そんなに? ちょっとは盛られるのか。よく一口含んだだけで媚薬と分かったなと思ったのだ。まあ、用心のために影のネロに毒や薬などの指導をされているのかもしれないが。
 ディアルドは今度は眉を寄せて溜息をつく。

「……男爵は少し焦っているのだろうね。娘を差し向けるくらいだから。晩餐でも俺がここに来た理由を探っているところがあったし、不正がバレても、娘が俺を抱き込んでいれば、言いくるめられるとでも思っているのだろう」

 ディアルドを言いくるめるなんて、無理だろうに。まあ、ディアルドは十九歳で、色仕掛けで御しやすい年齢といえばそうかもしれないが。

「さ、また寝よう。まだ朝までは遠いからね」
「眠くないよ」
「眠らないと駄目だよ。ここでいいから、目を瞑って」

 ディアルドはソファーに座ったまま私を抱きしめると、背中を撫でだした。本当に目が覚めてしまって寝られないのにな、と思ったのは一瞬だった。あっという間にウトウトしだし、いつの間にか寝ていた。ディアルドが私の額にキスをする感覚だけが、遠くでしたような気がした。

 私がディアルドに抱かれて寝ている間、影が何度かディアルドの元に来ていたらしい。朝起きると、男爵の屋敷の出入口では、ディアルドの部下が大勢やってきていた。影が男爵宅で不正の証拠を見つけたという。そして影はディアルドからまた指示を受け、この町の近くに待機していた部下に男爵宅へ来るよう通達。朝一でやってきたのだ。

 男爵もその家族も一時捕えられた。不法就労者を多く雇い入れて給料や税金を誤魔化したり、横領したりと、次々と不正の事実が明らかになっている。この地域はクレイル男爵の家系が先祖から世襲制で管理していたが、今後は管理する臣下を変えることになるだろう。

 うちのディアルドったら、かっこいいなぁと思う。仕事をしつつ、妹の面倒も見て楽しませてくれる。

「見て、ディアルド! あの時買ってもらった、真珠のアクセサリー!」
「ミリィ、可愛い! すごく似合っているよ。なんだか大人っぽいね」

 黒真珠を加工して作ったアクセサリーは、髪と一緒に編み込んでもらった。虹色に輝く髪に合う。ディアルドはすかさず褒めてくれる。嬉しくなりながら、今日も兄と楽しく過ごすのだった。

【番外編 おしまい】


「七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」は今回が番外編の最終話です。
このお話のホントの本当の最終話です。
これまでお読みいただき、ありがとうございました!

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
この番外編が最終話です。
最後までありがとうございました。