七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編8話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編8話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」続編8話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編8話

 ザクラシア王国式典当日。厳かな式典が行われ、昨日のシオンとは全然違うシオンに、なんだか涙が出そうだった。シオンだっていつまでも私の兄なだけではない。大人になり、ちゃんと成長しているのだ。

 式典の後は立食もある夜会が行われた。私とカイルは、各国の王侯貴族と言葉をかわした後、少し休憩にと立食会場へやってくる。ザクラシア王国にきてから何度か食事をしているが、少し塩辛い。前に誘拐された時もそうだったので、塩分抑えめをお願いしているのだが、やっぱり塩辛い。だから、つい塩の関係なさそうな果物やケーキばかりを取ってしまう。

「昨日はありがとう」

 いつのまにか目の前にザクラフィーがいた。テーブルからケーキを取っている。

「お礼?」
「……あの後、シオンが話をしてくれて。少しシオンが優しかったの。ちゃんとアピールをしてくれたようね」

 シオンったら。さっそくザクラフィーと仲良くしようとしているようだ。少し嬉しくなりながら微笑んだ。

「シオンをよろしくね。寂しくしないで」
「任せておいて!」

 胸を張るザクラフィーが可愛い。

「そういえば、ザクラフィーは遊戯中なのよね? シオンの即位の時からこちらに降りてきたのでしょう? どうして赤ちゃんではないの?」
「なんで赤ちゃんである必要があるのよ。カルフィノスくらいよ、そんな戯けたことをするの」
「戯けた……」
「ああ、ウィタノスのことだから、カルフィノスの遊戯に乗っかってるんでしょう。ばっかねー、カルフィノスに付き合って赤ん坊からやってるってことでしょう。今度仕返しにからかってやろうかしら」

 仕返しとは。本当にモニカったら、ザクラフィーに何をしたのか。
 それにしても、赤ん坊からやる必要のない遊戯もあるのか。私としては、赤ん坊で生まれたから、兄たちと長く時間を一緒に過ごすことができている。ザクラフィーはバカにするが、私はこれでよかったと思う。

「それって、ザクラシアのお酒? 甘い?」

 ザクラフィーが口にしていたお酒は、薄いピンク色である。

「ええ、甘くて飲みやすいわ」

 それは飲んでみたいかも。綺麗な色で可愛い。お酒に弱い私でも味見くらいならいいだろう。お酒を味見しようとすると、ザクラフィーが口を開いた。

「飲まない方がいいんじゃない?」
「え?」
「人間だったら、そういうものでしょう。違ったかしら?」

 そういうものとは。カイルを見ると、カイルも同じお酒を味見していた。ザクラフィーだって飲んでいる。美味しそうだし、私だって飲んでみたい。
 ザクラフィーは首を傾げる。

「この世界ではそういう風には言わないのかしらね? でも、一応忠告したわよ」

 意味が分からない。ザクラフィーは違うテーブルにある食べ物を見て、そちらに移って行ってしまった。

「何だったのかしら?」

 ま、大丈夫でしょう。お酒を口にする。いや、しようとしたら、今度はカイルが私の手をやんわりと止めた。

「止めておこうか」
「え? でも」
「なにか気になるから。ね、止めておこう」

 えー、美味しそうなのに。なんだか納得いかないが、じーと見るカイルに負けて、飲むのを止めた。それから部屋に戻った後のカイルが何だか変である。また、じーと私を見ている。

「何?」
「うーん、何だろう」

 それは私が聞いているのだが。

「……最近、体調が悪いとかない?」
「ううん? ザクラシアに来るために、カナンが万全の態勢をとってくれていたし、すこぶる健康だと思う」
「そうだよね……」

 カイルは考え込んでいる。何もおかしいことはないはずなのに。お腹も痛くないし、熱もない。

 それから、式典の次の日、もう一度シオンに会った後、私たちは帰路に着いた。来た道を戻り、国境を越え、ダルディエ邸で二泊するのだ。
 ダルディエ邸に着いた途端、カイルはなぜか医師を呼んだ。

「どうして? ミリィ体調悪くない」
「うん、でも心配だし」

 ザクラシアの王宮からずっとこの調子である。何が心配なんだ。聞いてもずっと見ているだけで、肝心なことを言ってくれない。しかし、医師に診てもらい、何ともなければカイルも安心するだろうと、医師に診てもらうと、なんとカイルの心配の理由がはっきりした。

「妊娠!?」

 まさか妊娠しているとは。医師にそう言われ驚く。私は何ともないけれど。本当に妊娠しているのだろうか。

「もう少ししたら、つわりもあると思いますよ」

 と言われた。私が妊娠。なんだかピンとこない。
 けれど、カイルが嬉しそうなので、じわじわと実感がわいてくる。お腹にカイルとの子がいるということだ。嬉しい。

「どうしてわかったの?」
「だってザクラフィーがお酒を飲むなと言っていたでしょう」
「……それだけで?」
「それくらいしか思いつかなかったんだ。けれど、そう思ったらそれしか頭を回らなくなって。でもまだ分からないしね。ここに着いたら、すぐに確認してもらおうと思って。はあー、でも嬉しいな」
「ミリィも嬉しいー!」

 カイルは優しく私を抱きしめた。喜びが伝わってくる。

 急に医師を呼んだためパパとママに心配されていたので、事情を説明すると、二人共大喜びだった。しかしここからが大変だった。帝都に帰らなくてはならないが、馬車だと身体に負担をかけると、両親とカイルが真剣に悩んでいる。それでも馬車しかないため、馬車の間はゆっくりと進めて、川下りに入ると普通に進み、また馬車に乗るとゆっくりと進み、といつもの倍以上かけて無事帝都へ戻ってくることができた。

 帰路はなんともなかったのに、帝都に戻ってからつわりが始まってしまった。食べれば吐き、空腹でも気持ちが悪くなり、カナンが試行錯誤をしながら私のつわりでも食べられる食事を作ってくれていた。けれど、やはり気持ち悪くなり、体重がどんどんと減っていくので、「これじゃあミリィが消えてしまう」とカイルにもかなり心配をかけてしまった。

 けれど、ある時からつわりがなくなり、それからは順調に妊娠生活が進んだ。

 私のための医師がたくさん集められた。皇室からだけでなく、心配した両親や兄たちがそれぞれ送ってくれたのだ。そしてたぶんカイルの脳裏には嫌な思いが描かれていたのだろう。カイルを産んだ本当の母は、カイルを産んでまもなく亡くなってしまっているからだ。

 大きくなったお腹では、動くのも大変で、必ず誰かに付いてもらっていた。

 そして、とうとう陣痛が始まるのである。痛みの間隔や陣痛が続く時間が変化していくが、これがどれだけ続くのか。結局、一日近く陣痛と闘い、ようやく子供が産まれた時には、くたくただった。

「おめでとうございます! 皇子のご誕生です!」

 初めて抱いた我が子は、元気に大泣きしていた。それを見て、私も涙が出た。元気に生まれてくれただけで、本当に嬉しい。

 部屋の外に控えていたカイルが呼ばれ、その手に赤ん坊を抱くと、カイルも涙ぐんでいた。

「……ありがとう、ミリィ」

 感謝を伝えるカイルは、私に口づけをする。カイルが赤ん坊を抱く様子に、嬉しくなる。ああ、私たちも親になったのだと、私たちをパパとママにしてくれた我が子に感謝する気持ちでいっぱいだ。

 両親や兄たち、皇帝夫妻も次々とやってきた。みんなが喜んでくれて嬉しい。けれど私は産後少し体調を崩してしまったので、みんなに心配をかけてしまった。

 そして私が子供を産んで二か月。

「うーん、良い匂い! 赤ちゃんって、どうしてこんなに良い匂いなのかしら」

 カイルが抱いている、まだ小さい息子の頭に鼻を近づける。息子はきょとんと私を見ていた。カイルが笑っている。

「ミリィはずっと嗅いでるなぁ。まあ確かに良い匂いだけれど」
「きっと今の内しか嗅げない匂いなのよ。カイルもたくさん嗅いでおかなきゃ!」

 私はすっかり元気になり、我が子はすくすくと元気に育ってくれている。子供の名前はルディ。黒髪神瞳でカイルに似ている。毎日見ても飽きないくらい可愛いルディは、将来どんな子になるのだろうか。想像するだけで楽しいのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。