七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編2話

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編2話

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七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~」続編2話
 

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない~転生令嬢日記~ 続編2話

 カイルと結婚し皇太子妃となってから早一ヶ月。

 皇太子妃としての生活は、まずはカイルと同伴で夜会や舞踏会などに出て慣れるのが主な仕事だった。結婚してすぐは社交界シーズンに入ったばかりで、ほとんど毎日何かしらに参加している。とはいえ、ずっと会場にいる必要はなく、場合によっては顔だけ出して終わりのものもある。というのも、一日に複数の夜会に参加することもあるからだ。他には、皇妃主催のお茶会に参加したり、いずれは私主催のお茶会も開催しないといけないので、勉強することはたくさんあるのだ。

 結婚してすぐに、私には側近として専任秘書のような女性が一人付いた。元々文官の女性で、私より三つ年上のシシィ・ル・ボックスという方だ。ボックス子爵令嬢なのだが、女性としては珍しく、若いころから文官として活躍している女性である。優秀らしく、カイルが選んでおいてくれたのだ。眼鏡をして、髪をきっちりとまとめた「できる女」という感じの女性である。とりあえずは、しばらくシシィが一人で私に関係するすべてのことを担当してくれることになっている。全てというのは、侍女がやらないこと全てである。とはいえ、侍女のカナンなんかは侍女の枠を超えたこともしているので、シシィの仕事は私が思っているよりは少ないかもしれないが、まずは最初は覚えることが多くて大変だと思う。最初なので、今はずっと私に付いて回り、交友関係なども知っていってもらっているところである。

 そういえば、ついこの間、モニカとルーカスの結婚式にカイルと皇太子夫妻として出席した。モニカはトウエイワイド帝国の実家で溺愛されていたと聞いていたが、遠い所を兄たち全員が参加するというすごい光景だった。しかも全員号泣。当然エグゼも号泣。モニカのウェディングドレス姿は、本当に綺麗だった。モニカは身長が高いのだが、ルーカスはさらに高身長なので、並んだ姿がすごく絵になるのである。ラウ領で行われた盛大な式はとても素晴らしかった。

 私が私の執務室で書類を読んでいる時、カナンがお茶とお茶菓子を持ってやってくる。

「妃殿下、少し休憩なさいませんか?」
「ありがとう、カナン。そうしようかしら。シシィ、今のカイルのスケジュールは?」
「今は執務室にいらっしゃるはずです」
「ではカイルたちも誘いましょう」

 私の執務室には隠れるように扉が付いている。廊下への扉ではなく、カイルの執務室へ繋がっている扉である。カイルと私の執務室の間には隠し通路と部屋があり、いつもそこでお茶をしたりするのだ。この皇太子宮と皇太子妃宮には、隠し部屋やら隠し通路やらがいくつかある。先日改装した際に作ったらしい。カイルの執務室を開けると、そっとカイルを見た。この扉を開けても、カイルが座る机以外の場所からは、誰かがそこにいるようには見えないよう工夫されている。

「ミリィ、いいよ、入ってきて」

 私に気づいたカイルが、作業する手は止めずに私を呼ぶ。

「お茶にしましょう。ソロソだけ? エメルは?」
「エメルは外出中です。もう少ししたら戻ってきますよ」
「では先にお茶にしましょう」
「いいですね! 休憩したかったんですよ」

 ソロソがいそいそと隣の隠し部屋へ向かう。

「あいつは、なぜ俺より先に行くんだ?」

 眉間にしわを寄せながら、書類にサインしているカイルに近寄る。

「気を使ったのかも。少しだけカイルと二人っきりになれるように」

 といっても隣の部屋の扉は開いているので、完全な二人ではないが。こちらを向いたカイルの口にキスをする。

「あれがそういう気を使うとは思えないけれどね」

 カイルは立ち上がると腰をかがめて、カイルから口にキスをくれる。

「いつまでイチャついてるんです? お茶にしますよー」

 カイルは口を離すと、不機嫌そうに口を開いた。

「ほら、何も考えていない」
「ふふふ」

 カイルと隣の部屋に向かう。隣の部屋では、カナンがお茶の準備をしてくれていた。カイルと私、エメルとソロソとシシィの分である。うちは側近たちとも一緒にお茶をして休憩することにしている。

「戻りました」

 エメルがカイルの執務室から顔を出した。

「お帰りなさい、エメル。お茶にしましょう」
「ええ、すぐに行きます」

 いったん執務室に戻ったエメルはすぐに戻ってきた。それからみんなでお茶である。いつもこうやってほんわかな時間を過ごすのも楽しみの一つである。

 その日の夜はカイルと夜会に出席し、早めに帰ってきた。明日は久しぶりに夜会などの夜に出席する業務がないので、今日は少しゆっくりできる。カナンにお風呂に入れてもらいながら、やっとリラックスタイムである。それにしても。

(ああ、恥ずかしいな……)

 裸になるたびに思う。ここにはカナン以外の侍女もいる。たぶんみんな気づいているけれど、誰も何も言わない。けれど。

 私の体中にあるカイルに付けられた印が恥ずかしすぎるのである。世の中の貴婦人たちは、侍女に体を洗って貰うたびにこんな恥ずかしい思いをしているのかと思うと、私一人の恥ずかしさではないと思うようにしているのだが、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 一度カイルに恥ずかしいから印は付けないでくれと言ってみた。すると、心配そうな顔を向けて言うのである。

「ミリィは俺のだもの。俺のだと印はつけておかないと。それにミリィは可愛いからね、侍女がミリィの可愛さに手を出そうとしないためにも、やっぱり印は有効だと思うんだ」
「侍女は女性よ!?」
「女性が女性に手を出さないなんて、誰が言ったの?」
「えー……」
「ミリィが昔自分で言ったんだよ。俺に男性同士の恋愛も応援するとかなんとか。ミリィはそういうことにも寛大だからね。つまりは女性同士でも恋愛は許せるということでしょう。そういう主人を持つと、侍女だってミリィをそういう目で見るかもしれないよ。だから、付け入る隙がないくらい、俺のものだって示しておかないと」

 何も言えない。確かに男同士の恋愛応援なんて、言ったような記憶がある。なんだろう、過去の私を殴りたい。自分で墓穴を掘るとはこういうことである。おかげで印に関しては何も言えなくなり、このように侍女の前で恥ずかしい思いをするということになってしまっている。ただ、首だけは印をしないでもらうようお願いしているが。首まで印が残ると、夜会などで着れるドレスがことごとく駄目になってしまうのである。

 お風呂から上がり、髪を整えてもらう。お尻までの長さの髪の毛をカナンはいつも丁寧に整えてくれる。本当は肩下くらいまでの長さに切りたいのだが、カナンにすごい勢いで却下されてしまった。相変わらず私の髪に命を懸けているカナンである。整えられた長い髪を緩く編み込んでもらい、寝室に向かう。まだカイルはおらず、私はナナと戯れていた。ナナは私が執務室に要る時以外は、私とカイルのプライベートの部屋でくつろいでいる。甘えたようにぐるぐると音を出すナナを撫でていると、カイルがやってきた。風呂から上がり、バスローブ姿で私の横に座る。

「さっきカナンがワインを置いて行ったけれど、飲む?」
「んー、いらないかな。ミリィがいるし、ミリィは飲まないでしょう」
「ミリィは飲まないっていうか、あまり飲めないっていうか。甘いやつなら少し飲める」
「ミリィは無理して飲まなくていいよ」
「カイルは飲んでもいいのよ。いつもお兄さまたちといる時は飲んだりしていたよね? しかも酔っているところなんて見たことがないわ」
「まあ、あれは付き合いというかね。飲めるし俺は強いみたいだけれど、ミリィとせっかく二人っきりなのに、お酒なんて飲まなくてもね」
「二人っきりだと飲まないの?」

 カイルは私の口にキスをする。

「キスしてミリィが酔ったら困るからね」
「少しなら大丈夫だと思うのだけれど」
「それに、これから集中することがあるし」
「集中?」

 カイルは私を抱き上げると、立ち上がってナナを寝室の外へ出す。そしてベッドに向かうと、私を下した。集中ってこれか!? まだ慣れない行いが今から待っていることを察して、顔が熱くなってくる。

「明日は少しゆっくりできるしね。昨日遠慮した分、今日はたっぷり可愛がってあげる」
「嘘!? 昨日、あれで遠慮していたの!?」
「これでも、ミリィに負担かけすぎないよう調整しているつもりなんだけれど」

 そんなばかな。昨日も与えられる熱に翻弄されまくったのに。私を愛しそうな眼差しで眺められると、もう何も言えなくなる。今日もきっとカイルから、めいいっぱい愛されるのだろう。カイルから与えられる温もりが、今日も愛おしいと愛を再確認するのだった。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
次回に続きます。